7月7日、世界7大陸で盛大に開催された、地球温暖化防止を啓発する音楽ライブイベント「LIVE EARTH」。その日本限定オフィシャルグッズに、究極のオーガニック和綿Tシャツが採用されました。数はわずか90枚。そのうち数枚のTシャツには参加アーティストたちのサインが書き込まれ、チャリティーオークションも始まりました。
“究極のオーガニック和綿Tシャツ”とはいったいどんなものなのでしょうか。その誕生の奇跡を追いました。
オーガニックな和綿でTシャツを
そんな、無謀とも思えるプロジェクトが始まったのは5年前の2002年。今はもう幻と化してしまった和綿の栽培を、栃木の片田舎で始めるところから始めます。それも、有機栽培で、です。
このことがどれだけ大変なことか、まずは私たちが何気なく身につけている綿製品の話から始めましょう。
昨今のナチュラル志向でますます人気の綿ですが、日本はそのほぼすべてをアメリカ、中国、インドなどからの輸入に頼っています。かつては日本でも盛んに綿栽培が行われ、風土に適した固有種は200種ほどもあったといいます。しかし、近代化にともない輸入された洋綿は、安価な上に繊維が長く、機械紡績に適していたため、瞬く間に和綿を圧倒していきました。
そんな洋綿の栽培実態も、実は一般にはあまり知られてはいません。収穫の際、機械で大量につみ取ろうとすると不要な葉などが混入するのですが、それを防ぐために、あらかじめ枯れ葉剤などで葉を枯らしてしまうのです。生育段階でも多量の農薬が使われます。こうした栽培方法は、土壌や水質を汚染し、現地で栽培に携わる人々の命までも脅かし続けています。
そんな綿栽培・市場の現状で、和綿を、しかもオーガニックで栽培して製品にするなどということは、まさに無謀としかいいようのない試みでした。
“しあわせのコットンボール”プロジェクト
キッカケは、2001年。坂本龍一さんの呼びかけで立ち上げられた、環境保護・保全活動を行う団体『artist's power』に関するイベントで、二人の男性が出会ったことからでした。久米繊維の久米博康さん、そして、NPO法人エコロジーオンラインの上岡裕さんです。
二人は、そのイベントで用意されたオフィシャル・オーガニックTシャツについて意見を交わすうち、「オーガニックな和綿でTシャツを作ってみよう」と意気投合。栃木県藤岡市で30年以上にわたり有機農業を続けている町田武士さんの指導のもと、和綿を育て始めました。
栽培はすべてボランティアのチカラを借りています。和綿種の保存に取り組んでいる千葉の鴨川和綿農園から譲り受けた「茨城」という品種の種40粒を、大切に蒔き、雑草をとり、うす黄色のかわいらしい花を愛でながら、ふくらみ始めた実がはじける時を今か今かと待ちました。顔を出したのは、ふんわり白い綿。それを一つひとつ丁寧に手でつみ取り、綿繰り機で種をとっては、翌年また畑に蒔くという作業の繰り返し。こうして、5年の月日をかけて、20kgという製品化できるギリギリのところまで綿を増やしていったのです。
和綿栽培の途中で気づいたことがありました。それは、綿に触れる人みんなの顔から自然と笑顔がこぼれているということ。そして、いつしかこのプロジェクトは、「しあわせのコットンボール」と呼ばれるようになっていました。
日本初! オーガニック和綿Tシャツついに完成
やっと製品化できるまでになった和綿。しかし現在では、20kgという少量の綿を取り扱える工場はほとんどなく、繊維業界でも、既に姿を消してしまった和綿を扱うのは前代未聞です。加えて、オーガニックで育てた和綿は他の綿製品と混ぜないよう、別のラインを設けなければなりませんでした。
立ちはだかる数々の難題に、繊維業界のほとんどの人が「完成は不可能」と考えました。しかし久米さんは根気強く日本中の工場をあたり続け、ようやく、このプロジェクトにぜひ参加したいという稀少な工場から無償の協力を得ることができたのです。こうして、それぞれのロマンをのせた究極のオーガニック和綿Tシャツづくりのリレーが幕を切りました。
オーガニック和綿Tシャツづくりに協力いただいた企業
- [紡績] 大正紡績・www.taishoboseki.co.jp/
- [編み立て] カネキチ工業・www.kanekichi-turi.com/
- [油抜き・綿布仕立て] アバンディ・www.avantijapan.co.jp/
- [裁断/プリント/仕上げ] 久米繊維・kume.jp/
オーガニック和綿Tシャツは、独特の風合いを損なわないために、漂白をせず、専用のロットで紡績し、昔の機械を使って編み立てました。洗浄・乾燥にも、蜜蝋やオレンジオイルなど植物由来のものを使用。栽培段階ではもちろん製造の段階でもオーガニックにこだわり、化学的なものを極力使わずにつくりあげてあります。
触れた瞬間、ふんわり優しい手触りと、温かみのある色合い……他では絶対に味わえない、最高の着心地のTシャツがここに誕生したのです。
LIVE EARTHオフィシャルTシャツへ
Tシャツがまさに完成を迎えようとしているころ、LIVE EARTHの日本開催が決まり、日本限定のオフィシャルグッズとして、このオーガニック和綿Tシャツが採用されました。Tシャツの前面には「LIVE EARTH」のロゴ、裏面には、小さく「やまずめぐる」の文字。“止むことなく巡る”循環でかけがえのない地球を守りたい、との想いが込められています。
5年の歳月をかけてつくった日本のオーガニック和綿Tシャツが、世界に向けて熱いメッセージを送った7日のLIVE当日、ステージで地球温暖化防止を訴えて熱唱したアーティストたちが、その興奮もさめやらぬうちにTシャツにサインを書き込みました。
このサイン入りオーガニック和綿Tシャツは、7月17日から始まったYahoo!でのチャリティーオークションで順次販売されます。売り上げは環境保護に取り組むNPOに寄付され、“やまずめぐる”の精神で地球環境保護に貢献していきます。
LIVE EARTH、日本限定のオフィシャルグッズ
オーガニック和綿Tシャツ
こうしてひとまず幕を閉じたオーガニック和綿Tシャツ・プロジェクト。しかし、和綿の栽培は、止むことなく今も栃木の片田舎で続いています。今年の夏もまた、秋の収穫を前に、草刈りに忙しく汗かく日々がやってきます。








