07/10/09

ナヌーたちの生きる勇気をみてほしい。「北極のナヌー」監督・アダム・ラヴェッチ、サラ・ロバートソン夫妻インタビュー

映画「北極のナヌー」公開にあたり、監督のアダム・ラヴェッチ、サラ・ロバートソン夫妻が9月末来日、都内某所においてインタビューに応じてくださった。
お二人は15年のパートナー歴、アダムさんは海洋研究家でもありまた水中カメラマンとしても長年のキャリアを持つ。サラさんも自然や動物などを撮り続けてきたカメラマンである。10年前はまだ北極を撮った映像は少なく、探求する価値があるという思いでスタート。はじめのうちは慣れないことも多く試行錯誤を繰り返したという。

photo.jpg

アダム(以下A)「はじめての北極はそれは大変でした。いい絵がとれるまでには最初時間がかかりましたよ。自然環境も厳しく、野生動物がそばにいるわけですからいつも危険と隣り合わせ。そんな中で絶えず準備していないといいシーンを取り逃がしてしまう。でもこれはずっと緊張していることなので、すごく疲れるんですね。長時間かけて鍛えた心理体制でした」
サラ(以下S)「わたしの場合も最初はいかに冷静さを保てるかが課題でした。あるときセイウチがたくさんのっている氷上をボートから撮っていたんですね。そうしたら突然視界のはじにシロクマが現れて。シロクマはセイウチを狙ってたんですけど、私たちの方がパニックになってしまった。びっくりしてわーわー言ってたらシロクマもセイウチもその声にびっくりしてみんな逃げてしまいましたよ。せっかくの映像を取り損ねてしまった。パニックになってはいけない、初めの教訓です」

危険な経験も一度や二度ではない。

「例えば水中で呼吸するためのレギュレーターが凍ってしまったり。恐かったのは、小さな氷の穴から海に潜っていくんですが、下で泳いでいるとき流氷が動いてしまって、ぼくが上に上がった次の瞬間、ひゅっと穴が閉じてしまったんですよ。もう少しあがるのが遅かったら危なかった」
「ある夜シロクマの子供たちが私たちのテントに近づいてきて、じゃれているうちにロープにからまってしまったんです。母クマは怒っているし、もう生きた心地がしなかったですよ。幸い子グマが抜け出せたみたいで大事にはいたりませんでしたけど」

sub2.jpg

巣穴にいる生まれたばかりの赤ちゃんシロクマのシーン、母クマがいるのに危険はなかったのか。

「冬眠中のシロクマはけっこうもうろうとしているんですよ。だからリモートカメラがあれば割と簡単に撮れるんです。むかしはイヌイットの子供たちが巣穴に入り、赤ちゃんの数をかぞえてくるのが仕事だったみたいです。彼らは狩猟民族ですから、のちのちハンティングするために前もってシロクマの数を数えておくんですね」

動物たちを撮る中で、例えば死んでいくシロクマを撮影するときなど見ていて辛い場面もあったかと思う。感情のコントロールは?

「ファインダーを通して見ている時はもう撮影モードになるんです。これは今までトレーニングを積んで培ってきたものです。今にも死にそうな動物を見ているときは本当に辛い、なんとかしてあげたいという気持ちもあります。苦しさが伝わってくる、その感情をともに持とうとしながら撮影していきます」


sub3.jpg

初めは北極の自然や動物を撮ろうと赴いたわけだが、いつごろから迫り来る温暖化に気がついたのだろう。

「セイウチの撮影をしていたときです。シロクマがセイウチを捕りにきたんです。ふつうシロクマはセイウチをハンティングはしないんですね。それだけ食べ物に困ってきたということだったんですよ。この5年間ぐらいは本当に氷が溶けている期間が長くなりました」

この映画を通して人々に何を一番伝えたいと考えているか。

「北極というふだんでも厳しい環境の中で生きてきた動物たちが地球温暖化のため、さらに過酷な状況に追いやられていることを伝えたい。動物たちは幼い頃から生きる術を親から習ってきた、その知恵が効かなくなるような環境変化をいまつきつけられているのです。そんな厳しい中でもなんとか生きていこうとする不屈の精神、適合力はそのまま私たち人間への教えでもあると思ってます。わたしたちも直面するであろう温暖化の危機、そこに立ち向かっていく勇気をシロクマたちから学べればと願っています」

北極で生きる動物たちの記録をこれからも撮っていきたい。そのため非営利基金も自分たちで設立した。まだまだ北極での格闘は続くようだ。
二人のファインダーを通して見る、今の北極や動物たちの真実を是非多くの人に観て欲しい。
「北極のナヌー」はまもなく10月6日(土)よりCINEMA GAGA!他全国ロードショー。

poster.jpg

(取材:鞍作 トリ