08/8/07

森を育む家づくり

6相手のメリットを考え、打てば響く関係を構築

いま、住田町とけせんプレカット事業協同組合、そしてスモリ工業は、委託関係を超えた深い信頼関係を築いている。それはお互いに相手のメリットになることを追究しあった結果だ。

たとえばけせんプレカット事業協同組合では、スモリ工法だと高気密・高断熱ゆえに乾燥しやすいことから、構造材の含水率を15%以下、造作材などの室内に使われる羽柄材は7%以下にまでしている。適材適所の考え方で、乾燥しても狂わない材を提供しているのだ。

仕上げ後は壁に隠れてしまう間柱の加工でも、驚くような心配りがされていた。それは間柱用の材に“死に節”がある場合、節を取り除いた後に間伐材を埋め込んで“生き節“にする作業だ。

「営業さんが一生懸命とってきてくれた住宅じゃなないですか。間柱だって見えないからではなく、ちゃんとしないといけないんです」と泉田専務。


スモリ工業も、住田町とけせんプレカット事業協同組合を、さまざまな面から応援してきた。その筆頭が、“技術のいらない工法”だ。須森社長は、現場ではのこぎりさえも使用禁止にしている。

「のこぎりを使うのは職人なんです。職人さんを育てる徒弟制度をやっている人もいますが、いまの若い人は続きません。だからスモリの家は、若者でも建てられるように、部品をパーツ化して組み立てるだけにしたんです。組立ならば機敏で力がある若者の方が向いています。技術がいらない工法も開発して、部品の組み立ても全部、けせんプレカットでやるシステムをつくりあげたんです。そうしたら、けせんプレカットに若者がどんどん入ってくるようになりました」。

たしかにけせんプレカット事業協同組合で働く人の平均年齢は20代なかばぐらいと若い。町から働きに来た人がほとんどだという。スモリ工法が住田町に若者を呼び寄せたと言っても過言ではない。

山にお金を返すことにも心血を注いでいる。その方法として、構造材の建てこみも住田町に依頼する方法を考案した。できあがった部品を、若者が自分で運んできて自分で建てる。そうすれば職人に払う賃金も若者と一緒に山に帰るという考え方だ。この方法には一日で構造まで建てられるというメリットもある。良い乾燥状態を保ったまま建てられる上に、建築コストの低減にも効果があるという。


このように須森社長は、山のことを考えて数々のアイデアを考え出してきた。その源泉は「山の職人さんから物語が始まる」という考えに基づいている。

「住田町は山がいい、きれいだと言う前に、ここまで育ててくれた人を8割評価してほしいんです。その結果として、山がいいねと言って欲しい。山の職人さんの尊さを伝えて、お施主さんとつなぐのが、私らの役目だと思うんです。だから、この家はいいねと言われるよりも、これは誰がつくったのと言われるほうが、私はすごく嬉しいんです」。

こうした思いが高じ、須森社長は山で働く職人さんたちに、折を見て感謝の気持ちを込めた奨励金を渡している。使途は特に定めていない。山で生計を支える人のためになればと思いながら手渡している。寄付行為ができる財団の設立も検討しているという。

間柱
石膏ボードやサイディングボードなどの壁材を固定するために、柱と柱の間に立てられる細い柱のこと。

死に節・生き節
節の繊維と周囲の材と連絡が切れているものが死に節で、連絡しているものを生き節という。死に節を押すと抜けてしまう。

(取材:岩間 敏彦  イラスト :小池 隆夫