地球温暖化で海洋の塩分濃度が大きく変化している

 地球温暖化によって大きく変化した水循環によって海洋の一部で塩分濃度が増し、また、一部では淡水化が進んでいることがわかってきた。オーストラリアの研究者チームによって、世界中の海洋に浮かぶ「アルゴフロート」と呼ばれる3,000個以上の観測ブイのデータを分析して発表された。

 この研究によると、過去60年にわたって温暖化によって起きた海水表面と深海の変化に明らかなつながりがあるという。海洋の塩分濃度は地球表面における水の蒸発と降雨の状態によって左右される。多くの蒸発が起きる場所の海水は塩辛さを増し、多くの雨が降る場所は塩分は薄くなる。塩分が高くなるほど海水の密度は高くなるため深海に沈み込む。つまり海水の塩分の変化を観測することが大きな水の循環をとらえることにつながっていく。

 

 その観測を可能にしたのが世界に3,200個以上存在するアルゴフロートという観測ブイだ。この観測機器は、水深2,000mから海面までの間を自動的に浮き沈みして 水温・塩分等を測定するもので、世界20カ国以上が参加する共同プロジェクトの「アルゴ計画」のもと共同で管理されている。

 

 今回の研究で明らかになったのは熱帯域と高緯度地域の水の塩分濃度が下がり、亜熱帯のエリアの塩分濃度が高まっていることだ。気候変動によって極端になると言われる大雨や砂漠化の現象が海洋上でもすでに起きていることを表している。

 

 この変化は海洋表面だけに止まらない。海洋大循環と呼ばれる海水の移動によって塩分濃度の変化が深海にも影響を与え、海洋全体の塩分濃度に変化をもたらしているという。

 

 海洋上には人が住めず、気候変動の観測をすることは難しかった。アルゴ計画が始まってまだ10年。気候変動と海水の循環の関係を精査した研究が少ないなかでの今回の研究発表ということで、その意義は大きい。

 

文:上岡 裕

サイト

Discovery News

URL: http://ow.ly/3xLZf 

アルゴ計画

URL: http://ow.ly/3xLZy

 

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