ゆりかごからゆりかごへ ~ゴミを出さないモノづくりの考え方~

C2C製品認証ゴールド基準を取得したアヴェダ7製品
C2C製品認証ゴールド基準を取得したアヴェダ7製品

 先月、都内で化粧品メーカー・アヴェダ主催のセミナー&シンポジウムが開催された。テーマは、欧州で先行するグローバル環境認証「Cradle to Cradle(クレードル トゥー クレードル)」について。このCradle to Cradle(以下、C2C)という耳慣れない言葉、日本語に訳すと「ゆりかごからゆりかごへ」となる。これまでのモノづくりは、資源から製品を作り出しては必ず「ゴミ」となっていた。つまり、ゆりかごから墓場までを前提としていた。一方、C2Cにはゴミという概念は存在しない。原材料から作られたモノを再び原材料に戻そうという新しいモノづくりの考え方だ。

 C2Cでは原材料を循環させる方法が2種類ある。土に還す「生物的循環」と回収・分解・再組み立てを行う「技術的循環」だ。生物的循環は、使用済みのコットン製品などをたい肥として再び自然に戻すサイクルのこと。技術的循環は、メーカーが不要となった製品を回収し、分解した部品は、再び製品として再利用する。現在は、車や電化製品のほとんどを消費者自身が所有しており、故障や買い替えに伴いゴミとなっている。しかしC2Cの考え方においては、製品の所有者はメーカーであって、消費者は一定期間、「車に乗る」「テレビを見る」といったサービスだけを購入する。メーカーは部品を再利用することを前提に設計を行うため、ゴミを出すことはない。C2C提唱者のマイケル・ブラウンガート教授は、こうした考えをエコ・リーシングと呼び、「サービスだけを販売するのであれば、製品自体のコストは重要ではない。有害物質を含むような安価な素材を選ぶ必要はなくなり、ベストな材料だけを使うことができる」と説明する。

マイケル・ブラウンガート教授
マイケル・ブラウンガート教授

 このC2C認証、すでに世界では広まりつつある。フィリップス、米郵政公社(USPS)、ナイキ、ボルボといった企業では一部の製品で製品認証を取得。セミナーを主催するアヴェダでは昨年、全世界で3社のみが取得しているC2Cの企業認証と、 代表的な7製品について最高レベルの製品認証ゴールド基準を取得した。1978年に創設した同社は、「真の美しさは行動を伴う」を合言葉に、先住民族や農家からの持続可能な成分調達、再生可能なパッケージの採用、100%風力発電による製品の製造などを行ってきた。30年以上にもわたり、環境とビジネスの両立を目指してきたアヴェダにとって、C2C認証の取得は当然の流れだったというわけだ。

 

「これまでは環境負荷を下げるために一喜一憂してきたが、いくら環境破壊を抑制したところでプラスの影響にはならない。ところがC2C製品においては、すべてが栄養となり、すべてが再利用される。環境に対して罪悪感を持つ必要がない」と語るブラウンガード教授。自然界にゴミは存在しない。自然のサイクルを真似て、ゴミを出さないことこそがグッドデザインと考えるC2Cは、これまでの消費社会のあり方に革命をもたらすかもしれない。

 

取材・文:加藤 聡

サイト

AVEDA Japan

URL: http://www.aveda.co.jp/

 

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