【解説】 東京都でスタートした「キャップ・アンド・トレード」とは?

 東京都は4月から、都内の大規模事業者を対象に、CO2の排出総量削減を義務付けて、事業所間の排出量取引を認める「キャップ・アンド・トレード」制度をスタートさせた。世界でもまだ事例の少ない同制度の概要と東京都のルールについて、Q&A方式で解説していこう。

Q. キャップ・アンド・トレードって何?

 

A. 排出量取引の手法の一つで、CO2排出量の上限(キャップ)を割り当てて、過不足分を取引(トレード)させる仕組みです。

 

Q. どんな人たちが対象となるの?

 

A. 東京都内の大規模事業者です。具体的には、電気や燃料の使用量が原油換算で年間1500キロリットル以上の約1400事業所で、ホテルや病院、官公庁なども含まれます。

 

Q. いつまでに、どのくらいの削減が必要なの?

 

A. 2010~2014年の第1計画期間内で、それぞれの事業所の「基準排出量」から8%(工場や地域冷暖房を多く利用するオフィスビルなどは6%)の削減が必要です。最終的に2014年度末に目標を達成していればOKですが、短期間での大幅削減は難しいため、早くから取り組むのが懸命です。

 

Q. 基準の排出量はどうやって決めるの?

 

A. 基準となるのは2002年~07年度の連続3年間の平均排出量。これにより企業は、自社に最も有利な基準でスタートすることができます。

 

Q. 削減の方法は?

 

A. LED電球や省エネ機器の導入などによる自主削減と、他者の排出枠を取得する排出量取引があります。

 

Q. 排出枠は誰からから買うの?

 

A. 「他の削減義務対象事業所」「都内の中小企業」「都外の大企業」「再生可能エネルギー販売会社」の4つがあります。中小企業はCO2の削減義務を負いませんが、排出枠を売ることができるため、企業全体の削減意欲を押し上げる効果が期待されます。

 

Q. 削減できなかった場合どうなるの?

 

A. 不足量×1.3倍の削減が求められ、その分の排出枠を購入することになります。従わない場合は、違反事実を公表と罰金50万円。さらには、都知事が排出枠の調達を代行し、その費用CO2排出量1トン当たり15000円(予定)を請求します。

 

 と、おおまかな概要はこんなところだが、国内初のキャップ・アンド・トレードに不安の声も少なくない。とはいえ、排出量取引は非常に複雑な制度である。今回の開始でまず走らせてみて、問題があった場合は、その都度修正していくことが必要となるだろう。来年度には埼玉県での導入、さらには国による制度設計の議論も行われているキャップ・アンド・トレード。2020年にCO2削減25%の達成に向け、重要な地球温暖化対策の1つになることは間違いない。

 

文:加藤 聡

東京都環境局 地球温暖化対策

URL: http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sgw/index.htm

 

«一つ前のページへ戻る