賃貸物件にもエコ・環境の要素を

 昨今の戸建て住宅は、エコハウス花盛り。太陽光発電に高効率給湯器、国産材の無垢材の床など各ハウスメーカーは環境技術を競い合っています。分譲の集合住宅も、戸建に遅れはとるものの、最近では、自然素材を多用した環境配慮されたマンションや集合住宅も続々開発されています。

 ところが、環境やエコから最も遠いのが賃貸物件。賃貸事業としての側面だけが重視され、いかに安く、早く仕上げ、傷がつかない、汚れにくいといった管理しやすい素材が求められます。そのためクロスや床もビニールクロスや合板のフローリング、塩ビのクッションフロアなど、化学物質がたっぷり使われた内装材が使われることが多く、それらは自然素材とは異なり、年月に伴い劣化するので、入居者が変わるたびに、貼り替えが必要となり、廃棄物を多量に出します。

 物件としても駅歩何分、築何年など画一的な打ち出し方がほとんどで、古くなると空き物件が増えていきます。賃貸物件の空き部屋率は2008年で18.7%(総務省統計局)と、年々高まっているのが現状です。

 欧米では築100年のアパートが、新築のそれより経済価値を持つということもある一方で、日本の賃貸物件は築年数と共にその経済価値が評価されなくなるのです。

 その背景には、ユーザー不在で、画一的な価値しか認めない業界の体質にも原因がありそうです。

 

 そんな原状を打破するべく、賃貸住宅にも新たな価値観を導入しようという動きがでてきました。

「健康賃貸®」の名前で、自然素材の内装、そして電磁波防止までを比較的リーズナブルな価格で、賃貸物件に向けて提供する株式会社レジナです。

「子育てをする若い世帯は、賃貸住宅に入居することが多いのに、環境を考えた物件があまりにも少ない。子どもが小さい時こそ環境のことを考えなければならないのに」と代表の土田直樹さんは健康賃貸への取組のきっかけを説明します。確かに、アトピーやアレルギーを持つ子どもたちは激増。在宅時間の長い子どもたちは、室内環境の影響をもろに受けます。

 同社では、床は九州の杉の無垢のフローリングを、壁は赤貝の貝殻、麻の繊維、つのまた(銀杏藻)と呼ばれる海藻と、すべて自然素材を使った漆喰や珪藻土を使います。元々電磁波の研究をしていた土田氏が開発した電気配線からの電磁波を抑制する「有機導電性シート」も施工されます。

 

 このエコリフォームされた室内に入ると、まず無垢材の足あたり、そして空気の質が良く、とにかく気持ちがいいのです。漆喰や珪藻土の調湿効果や、結露を防ぎ、脱臭効果や化学物質の分解・吸収といった効果も期待できます。目に見えないですが、電磁波の影響もないためか、リラックスできます。

 もちろん、無垢材には傷がつき、壁も汚れることがあるでしょう。でもそれは自然素材の経年変化。ある意味、味になるのです。

何より、健康に暮らせて、気持ちのいい自然素材の賃貸物件を求めているユーザー層は多いはず。

 オーナーにとっても、画一的な不動産業界の価値ではなく、ユーザーが求めている環境面で負荷価値をつけた物件を提供することで、同じ価値を共有する住まい手に住んでもらえる、他物件との差別化、ロングライフな部屋作りなど、新たな価値を生み出すことができます。

 

「賃貸でも住まい手の立場にたつべき。住む人が健康で暮らせるということ。そして人の手が感じられる自然素材は、モノを大切にする心も育てる。経済性だけの追求ではなく、そこに社会性をもたせたい」と土田さんが言うように、賃貸市場にもロングライフ、環境配慮、ユーザーの視点など社会的責任の視点が求められているようです。

 

文:箕輪弥生

 

株式会社レジナ

http://www.regina-life.com/

健康賃貸

http://www.kenko-chintai.com/

 

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