ローマ法王が市民、国連と協働! みんなでつくったパリ協定

presidencia.gov.ar CC-BY-SA-2.0
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今月12日、パリで開かれていた国連気候変動枠組み条約第21回締約国(COP21)でパリ協定が採択された。京都議定書が採択されてから18年。世界中で猛威を振るい始めた気候変動の被害を抑える本格的な枠組みが動き出すことになる。

COPの会議は全会一致を原則とするため、一国でも反対すると議定書や協定の採択には至らない。利害の一致しない先進国と途上国の深い溝が埋まらず、全会一致の原則のままでは、交渉成立は難しいという弱気の声も出ていた。ではなぜ、パリ協定は成立にいたったのか。そこには、市民、国連、ローマ法王の連携プレーがあった。

2015年 パリ、そして大切なすべてのもののために

この会議の向けた市民の動きの核となったのがAvaazだ。そのウェブサイトに彼らの戦略がこんな風に記してある。

ここ2週間、Avaazコミュニティは歴史的な合意を後押しする上で、非常に重要な役割を果たしました。世界中で何十万人もがマーチに参加し、過去最高の動員数を世界各地で達成しました。各国代表が会場入りした際には、録音したAvaazメンバーのメッセージをスピーカーで一斉に流すことで、文字通り私たちの「声」を届けました。その後、Avaazスタッフによる国連事務総長への署名提出に続き、数々のキャンペーンが展開されました。            

彼らは交渉に後ろ向きな国が現れると、その国の気候変動による被害を交渉会場の大画面のスクリーンに映し出し、被害者たちの声を代表団に伝え、各国政府に大量のファックスを送り、海面上昇の危機にあるマーシャル諸島の代表者を、自らが集めた寄付で交渉の場に呼び込み、ドイツやフランスとともにCOP21をリードするヒーローに仕立てあげていった。

COP21を後押しするために世界175か国で720,000人を動員したクライメートマーチも組織した。パリで実施しようとマーチについては次のように記されている。

パリ気候会議まで秒読み段階となる中、この重要な会議直前に予定されたマーチへは、何十万人もの人が参加登録をしていました。世界各地で、Avaazは様々なイベントやデモも企画しました。ですが、パリ襲撃という悲劇が起こったため、予定されていたパリでの巨大マーチも、フランス各地でのマーチも、すべてキャンセルされました。                               

でも、私たちAvaazのメンバーは、これに希望と創造力で応えました。キャンセルが決まってからわずか数日の内に、私たちは靴1万1千足を集め、パリ中心部において展示したのです。これらの靴は、マーチに参加できなくなった人たちを象徴したものですが、この展示は驚くほどの効果を発揮しました。ローマ法王や国連事務総長まで、靴を提供してくれたんですよ!

世界で繰り広げられたクライメートマーチ

市民の靴とともにローマ法王の靴も並ぶ

国連事務総長のメッセージ付きの靴も並んだ

“COP21の失敗は人類に破局をもたらしかねない”

会議の数日前、地球温暖化防止を世界に呼びかけるローマ法王フランシスが、世界のカトリックの信者たちにこんな強いメッセージを発信した。ローマ法王として初めてアフリカを訪問した時の発言だ。アフリカの訪問をしながらも、市民の取り組みのためにフランスに靴を送り込んだ。

市民たちの取り組みに一緒に靴を並べたローマ法王と潘基文国連事務総長。パリ協定採択に向けたギリギリの調整でもこの2人が連携していたという噂もある。それを報じたのはイギリスBBCのCOP21: Did the Pope save the climate deal?という記事だ。

この記事によれば、「気候変動を止めるために必要だと言われていることと、この協定によって提案されたもののミスマッチがある」ということで、ニカラグアがサインをすることを拒否した。その姿勢を変えさせるため、ローマ法王が直接大統領に電話をして交渉し、国連事務総長がクリスマスを祝福するためにニカラグアを訪問すると約束したというのだ。

ここに書かれていることが本当にあったかどうかはわからない。だが、これだけ難しい交渉が成立したことを考えると、これに近いことが起きたことは十分に予想される。

Avaazを中心とする市民たちの国を超えた横の連帯と、ローマ法王や国連事務総長と市民たちとの縦の連帯が生まれたからこそ、この結果が生まれたとも言えるだろう。パリ協定の成立は新しい世界の枠組みが生まれたことの象徴でもあるのだ。

 

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テキスト / 編集部

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