水の中の動物に出会う。 ゆうゆうと生きるカメのくらし

ゆうゆうと生きるカメのくらし

 

今から2億年以上前。巨大な恐竜が出現する前から、カメはもうこの地上にいました。そして、その頃からすでにかたい甲らで身を守っていたカメは、恐竜が絶滅した後も、現在までずっと生き続けているのです。2億年もの長い間、厳しい生存競争を生き抜いてきたカメとは一体どんな動物なのでしょうか。

ワニやトカゲと同じ仲間

 

カメは「は虫類」。つまり、外の気温によって体温が変わる「変温動物」なので、寒い時や暑い時は自分で体温を調節しなければなりません。「甲ら干し」という言葉があるほどカメが日光浴を好むのも、実は、体温を上げてウォーミングアップしている姿。逆に、暑い日中には、涼しい木かげや水の中で体のほてりをさまします。カメには、陸で生活するもの、水中でくらすもの、その両方を住みかとするものがおり、環境に合わせて、甲らや足、口などのつくりが違っているのです。

 

2億年間、生きてこられたのはどうして?

 

カメのトレードマークといえば、背中の「甲ら」。岩場に落ちても、しっかりと体を守ってくれるほど丈夫なのですが、その表面は皮ふがかたくなったもの。言ってみれば、私たちのつめと同じで、小さなうちは柔らかく、成長とともにかたくなります。リクガメ類のようにもり上がって高くなるもの、スッポンのように軽くて柔らかいものなど、種類によって甲らもいろいろですが、この「よろい」のおかげで、2億年もの間、身を守ってくることができたのです。

 

どのくらい水中にもぐっていられるの?

 

は虫類は、肺で呼吸をする動物。だから、海に住むカメもときどき水面から頭を出して、鼻の穴から空気を吸っているのです。川や池によくいるクサガメなどは、一度空気を吸い込むと数分間は息をしなくても大丈夫。さらに、ウミガメの場合は、1回の呼吸で30分~1時間も水の中にいることができると言いますから、ダイビングの名人ですね。

 

頭のかくし方も2通り

 

カメは、身に危険がせまった時に、頭と足を甲らの中へ引っこめますが、そのかくし方は種類によって2通りあります。一つは、横から見て首をS字型に曲げて甲らの中に引っこめるもので、この種類を「潜(せん)けい類」と言います。もう一つは「曲けい類」と呼ばれる種類で、首を横に曲げるようにして甲らにかくします。ただし、ウミガメ類のように、すばやく泳ぐために甲らが軽くなっているカメは、頭も足も甲らの中にかくすことはできません。

カメと鳥の口の共通点は?

 

カメには歯が1本もありません。そのかわりに、口の先にオウムのようなくちばしがついており、前足とこのくちばしを使って、えさをちぎって食べます。多くのカメは、動物も植物も食べる「雑食性」。たとえば、日本でよく見られるクサガメは、生まれたばかりの時は水草をおもに食べていますが、成長にしたがって昆虫や小魚を食べるようになります。でも、中には、ゾウガメのように木の葉や果物を食べる「草食性」のカメや、スッポンの仲間のように「肉食性」のものもいます。

 

カメは冬の間どうしてる?

 

変温動物であるカメは、暑い夏の間は活発に活動していますが、秋になって涼しくなると、えさの量も少なくなり、やがて寒さの訪れとともに活動をやめ、土の中や水の底で冬眠して春を待ちます。ただし、1年中、気温も水温も高い熱帯地方のカメは体温も下がらず、また、えさになる動植物にも不自由しないので冬眠はしません。

 

ウミガメが陸にもどってくる時

 

ウミガメは陸で生まれますが、一度海に入ってしまうと陸にもどることはまずありません。ただ一つの例外が出産の時。日本では、5~8月にアカウミガメの産卵が、本州・四国・九州・南西諸島の太平洋側の海岸で見られます。夜、陸に上がってきたアカウミガメは、砂浜で後ろ足をシャベルのように使って穴をほり、20~30分間で100~150個も産み落とします。産卵から2ヶ月後、ふ化した子ガメは地上に出て、海まで一目散(いちもくさん)に走って行くのです。その後、海に入った子ガメにも危険はいっぱい。子ガメ100匹のうち、1匹が大人になれればよいといわれるほどです。 

 

減り続けるウミガメたち

産卵のために日本の海岸に上陸するアカウミガメの数は年々減っています。その原因は、海岸のうめ立てや護岸(ごがん)工事などで自然の砂浜が姿を消していることや、海が汚染されてカメが住みにくくなっていることなどいろいろ。最近の国際的な研究によると、北太平洋を泳ぎ回るアカウミガメの多くが日本生まれであることがわかってきており、こうした環境悪化に、ウミガメ類の絶滅を心配する声がますますふえています。


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