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EOLフライブルクレポート
緑の街と緑の人びと
第6回

ドイツの文豪ゲーテがもともと弁護士だったのを知っていますか? この時代、彼のような天才はどの分野にも精通していました。とりわけ彼は地質や鉱物学、植物学から解剖学といった自然科学研究に熱心で、独自の自然観察法を確立しています。その観察方法を生かしながらゲーテは、森について有名な詩をいくつか書いています。

芭蕉の「古池や・・・」でわびさびを感じ安らぐのが日本人なら、森を扱った詩や散文で安らぐのがドイツ人。このドイツ人の森を愛する気持ちこそが、自然保護の根っこの部分で、例えばワンダーホーゲル運動へと展開したり、政治にも自然保護を持ち込んだ「緑の党」を結成させたりしたのではないかと私は感じます。

さて今回は、フライブルク市の庭園課(現在の正式名称は「緑の施設課」)が整備している児童公園についてレポートします。児童公園といえば、ブランコや滑り台、ジャングルジムなどの遊戯器具が置かれ、砂場がある場所を想像しませんか? フライブルクでもこれまでは、一面が芝生の遊戯器具置き場を児童公園と呼んでいました。しかし1995年を境に、児童公園に対する考え方が変わっています。現在のフライブルク市は、毎年5つの公園を目標に、自然に近い状態で子供にとって楽しめる「荒れ地型」に改良しています。
それでは、荒れ地型公園、言い換えれば近自然工法の公園とはどんなものだと思いますか? なぜフライブルク市はそんな手間のかかる改良を行うことにしたのでしょうか?

はじめに公園とはそもそも誰のためのものか考え直してみましょう。つまり対象となる現在の子供を詳しく調べてみて、その視点で公園を見るのです。これまでの公園は、作る側(自治体)と子供の親の希望によって、子供に遊び場を与えてやるという発想で形作られてきました。しかし現在の子供は、今の大人が子供だった頃とは全く異なった環境で生活しています。増え続ける自動車交通、少子化、そして教育のレベルは均一化し、皆が勉強しなくてはなりません。自由に入ることができる空き地は減り続け、その土地を勝手にいじることも許されません。

「外で自由に自然をいじり、創造し、破壊する」といった行為を十分に行っていない子供に対し「消費してばかりで、すぐに飽き飽きし、後片付けをしない」と非難するのは酷だ、というのがフライブルク市の新しい方針です。この方針は1993年に行われた子供の生態調査の結果によって導きだされています(注1)。この調査では、子供が自由に監視を受けない状態で遊べるのは、1日の内でわずか5%以下(つまり40分以下)しかないという結果も公表されています。ですからフライブルク市は児童公園を子供の視点で、自由に子供が楽しめる本物の遊び場として整備してゆくことを決めたのです。それが荒れ地型公園の誕生の理由です。自然に近く、子供が楽しめる公園のキーワードは「火、水、木、土」の四つ。次回は実際の荒れ地型公園について詳しく触れてみましょう。

荒れ地型公園に改良するようになってから、以前はベンチでタバコを吸っていた親も子供と一緒に遊ぶ機会が増えたそうです。市のど真ん中、駅裏にある荒れ地型公園のスケッチをみれば、その親の気持ちも分かりませんか?

荒れ地型公園のスケッチ

図:吉田敬(注2

 

注1:『都市の子供の活動空間:バルド・ブリンケルト博士』原題:モAktionraeume von Kindern in der Stadtモ, Dr. Baldo Blinkert, Freiburger Forschungsinstitut fuer angewandte Sozialwissenschaft (FIFAS), 1993, Freiburg
この先駆的な子供の生態調査の報告書は、ドイツで大きな議論を呼び起こし、現在にいたっても様々な自治体の庭園課においてハンドブック聖書のようにして使われている。

注2:図の作者、建築家の吉田氏は数年前までフライブルク市の庭園課に勤務していた。


つづく

 




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村上 敦  (ムラカミ アツシ)

1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を学ぶ。途中ドイツ人女性と結婚し、休学。その後、フライブルク地方市役所・建設局に勤務し、 現在は日本の環境機器メーカーのアドバイザー、兼主夫。HP(www.geocities.jp/freiburg2004report/)でフライブルクの行政についての分析を行う。」


フライブルク基本情報

■市名/Freiburg im Breisgau

■位置/ドイツの南西部。フランス、スイスの国境に近い。

■気候/平地は乾燥して暖かいシュヴァルツヴァルトでは風が強く寒い。

■人口/約20万人

■面積/約103平方キロメートル(うち3分の1が森)

■特徴/ドイツ南西部「黒い森」のふもとに位置する中世の趣を残した大学都市。

1972年に隣接した地域に原子力発電所の建設が予定され、町をあげての反対運動で阻止。
これをきっかけに、市民と行政の両者が積極的に環境保護に取り組むようになり、1992年に「環境首都」(=自然と環境の保全に最も貢献した自治体)の称号を与えられた。



 

 



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