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EOLフライブルクレポート
緑の街と緑の人びと
第八回

1993年にフライブルクの社会学者が「都市の子供の活動空間」という調査を行ったことは以前のレポートでも触れました(第六回参照)。それ以来この調査書は、子供にやさしい街づくりの手引きとしてドイツ全土で参考にされています。この調査書には、子供が外で活動するときに最も重要な空間とは、(1).家の庭や車庫、(2).家の前の道路、(3).近所の公園という順序であることが記されています。先週までは(3)にあたる公園について書いてきました。

さて今回はその調査書によると(2)に該当する「子供のための道路」を見てみましょう。「マイカー社会」という一言で私たちの生活ぶりを示すことが出来るようになってきている現代です。日本と同じようにマイカー王国であるドイツでも自動車交通が飛躍的に増加していて、子供が道路で遊ぶことが大変困難になっています。ですからこれを改善し、さらに騒音と事故のない快適な生活空間を作ろうという試みがフライブルク市では行われています。例えば、現在フライブルク市内の全ての道路(例外として自動車専用道路、バイパスのような幹線道路がありますが)は、30キロの速度制限を設けています。これにより90%以上の市民が30キロ区間に住めるようになりました。幹線道路から住宅地へ侵入する場所にも、路幅をわざと狭めたり、段差を作ったりという対策が行われています。さらに市内には120ヶ所を超える通りが「遊びの道路(正式には交通静寂化区間)」になっているのです。遊びの道路の入り口には、子供のためであることを示す大きな看板が取り付けられています。もしこの遊びの道路に車が進入する場合は歩く速度で、子供の遊びを妨げないように通行しなければなりません。

交通静寂化区間

もし皆さんの周りに子供がいればこんな道路が欲しくないかどうか訪ねてみてください。私の子供の頃は近所の道路で野球をすることができましたが、皆さんの場合はどうでしたか? 「そんなのんびりとした世の中を未来の資源である子供たちに残す」なんていうのは、環境保護の中でも一番カッコイイことだと思うのは私だけでしょうか? もちろんドイツでも、通常の道路で子供たちが遊ぶことに理解できないオトナが大勢います。特に「自分もかつては子供だった」との認識が欠けている働き盛りの中年世代がいけないようです。

さて算数を少し。市内を車で5キロ移動する必要があるとします。もし時速50キロで飛ばしたなら6分で目的地に着きます。それよりも20キロ時速を緩めて、30キロで走ったら何分かかるでしょうか? 正解はもちろん10分です。その差は4分。この4分を子供のために投資してみると、住みやすく環境に優しい世の中になるのではないでしょうか。来週も「道は誰のためのものか?」というテーマでもう一度レポートします。


つづく

 




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村上 敦  (ムラカミ アツシ)

1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を学ぶ。途中ドイツ人女性と結婚し、休学。その後、フライブルク地方市役所・建設局に勤務し、 現在は日本の環境機器メーカーのアドバイザー、兼主夫。HP(www.geocities.jp/freiburg2004report/)でフライブルクの行政についての分析を行う。」


フライブルク基本情報

■市名/Freiburg im Breisgau

■位置/ドイツの南西部。フランス、スイスの国境に近い。

■気候/平地は乾燥して暖かいシュヴァルツヴァルトでは風が強く寒い。

■人口/約20万人

■面積/約103平方キロメートル(うち3分の1が森)

■特徴/ドイツ南西部「黒い森」のふもとに位置する中世の趣を残した大学都市。

1972年に隣接した地域に原子力発電所の建設が予定され、町をあげての反対運動で阻止。
これをきっかけに、市民と行政の両者が積極的に環境保護に取り組むようになり、1992年に「環境首都」(=自然と環境の保全に最も貢献した自治体)の称号を与えられた。



 

 



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