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EOLフライブルクレポート
緑の街と緑の人びと
第十回

今回は森と幼稚園のお話。私は田舎町の山の上にある幼稚園に通っていましたから、幼稚園児が森で遊ぶことの楽しみを良く知っています。今でも私の子供の頃の幼稚園で記憶に残っているのは、学芸会でも運動会でもなく、座布団をお米の袋に入れてガムテープで止め、紐を付けただけの『座布団そり』なるもので冬の山々を滑り降りたことです。
80年代までのドイツの幼稚園では、森で遊ぶことをあまり推奨しなかったようです。大都会でない限り、当時の子供たちは自由に野山に出かけていたようですから、幼稚園でわざわざ森に行く機会を提供する必要がなかったのでしょう。しかし現在、ほとんどのフライブルク市の幼稚園では、毎週1回「森の日」を設けています。これは夏ばかりでなく冬でも、そして晴れでも雨でも雪でも森へ行く日です。付き添いをしたことがないものですから、実際に幼稚園児が森で何をしているのかについてはあまりよく知りません。
しかし大方の予想はつきます。なぜなら私たち家族の住んでいるアパートは森の入り口にあり、ほとんど毎朝のように20人ばかりの幼稚園児が2人の保育士とともに森に入っていき、昼前には「ドロドロ」で「ぐちょぐちょ」の塊が森から出てくるからです。朝には元気で歌などを大声で歌っていた子供たちも、昼にはぐったりして山から降りてきます。雨の日には「なぜそこまでやるのか」と思われるほどドロだらけで降りてきます。一度私の家の窓から幼稚園の先生に「おや、まあ、どろどろですね」と声をかけたことがあります。するとその先生は、「私たちは大地の子供ですから」と笑って答えられました。
親としては、幼稚園に替えの衣類、合羽、長靴といつも準備しておく必要がありますし、洗濯なども大変です。しかし週に一度でも、山で自然とともに力いっぱい活動すると、子供の内面の攻撃的な傾向が発散されます。子供にとってスポーツが非常に重要な理由は、身体面だけでなく、精神面にも有効に働くからだといわれています。

さて通常の幼稚園は週1回森に出かけるのですが、上級者用もフライブルク市には準備されています。毎日を森で過ごす幼稚園があるのです。これはデンマークを発祥とするアイデアで、ドイツでも90年頃から少しずつ増えています。「森の幼稚園」には校舎は存在せず、森の入り口の集合場所にコンテナが置いてあるだけ。大きなリュック(この中にはパンなどのおやつと水筒、着替えが入っている)を背負った少人数の子供のグループが、2人の保育士に連れられて毎日森の中に入ってゆくのです。森の幼稚園の子供たちは、通常の幼稚園児と比べて以下のような特徴を持つそうです。1.年下の面倒見が良い、2.喧嘩が少ない、3.問題解決の道を子供たちだけでも見つけることができる、4.病気になりにくい、などなど・・・毎日自然の中で自然の素材を使って飽きることのない遊びを創造する「大発明家」は森からやってくるのです。


つづく

 




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村上 敦  (ムラカミ アツシ)

1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を学ぶ。途中ドイツ人女性と結婚し、休学。その後、フライブルク地方市役所・建設局に勤務し、 現在は日本の環境機器メーカーのアドバイザー、兼主夫。HP(www.geocities.jp/freiburg2004report/)でフライブルクの行政についての分析を行う。」


フライブルク基本情報

■市名/Freiburg im Breisgau

■位置/ドイツの南西部。フランス、スイスの国境に近い。

■気候/平地は乾燥して暖かいシュヴァルツヴァルトでは風が強く寒い。

■人口/約20万人

■面積/約103平方キロメートル(うち3分の1が森)

■特徴/ドイツ南西部「黒い森」のふもとに位置する中世の趣を残した大学都市。

1972年に隣接した地域に原子力発電所の建設が予定され、町をあげての反対運動で阻止。
これをきっかけに、市民と行政の両者が積極的に環境保護に取り組むようになり、1992年に「環境首都」(=自然と環境の保全に最も貢献した自治体)の称号を与えられた。



 

 



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