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緑の街と緑の人びと
第十三回
前回まで少し窮屈なお話が続いたので、今回は身近なゴミのお話へ・・・
最近、ドイツから日本の実家に帰省すると必ず困ることがあります。どこに何を捨ててよいのか分からないのです。30を大きく超えた大の大人が、ゴミを方手にうろうろ母を探し回るというのは、非常にばつの悪い思いがするものです。また日本の新聞を見ると、ゴミの不法投棄の記事が頻繁に目につきます。中でも都会で一人暮らしをしている若者が、引越しの際などゴミをどこに捨てればよいのか分からず、畑や山などにまとめて捨ててしまうというタイプの事件が目に付きます。
こういった事件はもちろん法を犯した者が悪いのですが、実際のところ私は同情してしまいます。最近では分別20品目を超える自治体が大量に出現している世の中。もし私が環境保護にこうも携わっていなかったら、そして都会で孤独な日々を送らざるを得なかったとしたら私自身もその犯人の1人だったかもしれません。まあ大量に野山に不法投棄はしないまでも、早朝や深夜に人目を避けて分別の完全でないゴミを捨てにいそいそとゴミ収集所へ・・・そんなシチュエーション、思い当たる人も多いのではないでしょうか? 市民をそんな目に合わせている日本のゴミシステム。何か変だとお気づきの方も多いのではないでしょうか? それについて今回から少し考えてみましょう。

1997年から日本では容器包装リサイクル法が段階的に施行されてきました。それに伴い、全国各地の自治体が良い言葉でいえば多種多様なやり方で、悪く言えばバラバラに資源ごみを回収しています。自治体によれば20品目以上の資源ごみを分別しているところから、未だに多くの品目の分別が実施できていないところまで、それこそ複雑怪奇な「分別」が、ゴミ削減やリサイクルの効果についての議論なしで行われています。最近目にした新聞でも、リサイクル量は若干増えているものの、ゴミの排出総量は依然横ばいという記事を目にしました。つまりこれだけの手間をかけた分別も、ゴミの減量に効果があまりないのです。
また例えば私の実家では牛乳のパックやヨーグルトの容器などは各自が洗った後、分別を行うように指導されています。それを聞いて私はびっくり。こんなことはドイツでは考えられません。
LCAと聞いてピンと来る人にはお分かりでしょうが、各家庭でヨーグルトの容器を個別に洗浄すると、ものすごい量の水道水と洗剤を使用することとなります。皆さんご存知ですか? 水道水とはエネルギーの固まりなんですよ。ただで蛇口をひねれば水が出てくるわけではないのです。また洗剤使用量が増えれば増えるほど、下水処理場に負荷がかかります。この負荷もれっきとしたエネルギー消費を意味します。そうして洗浄に大量にエネルギーを投入した後、ヨーグルトの容器は市民のご苦労、つまりエネルギーで分別され、ガソリンやディーゼルを使って、そうまたまたエネルギーを使って収集され、運搬されます。リサイクル工場でも、洗浄、運搬、そしてリサイクルという工程の中で恐ろしいほど大量のエネルギーが消費されます。
皆さんは環境のためにヨーグルト容器を分別していると思っていましたか? 残念ながらそうではない場合が多いのです。現状の日本では上記のようなLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)が徹底して行われていませんから、どの分別が環境のためで、どれがそうでないかは素人が見分けるのが大変不便になっています。
では何のために分別しているのでしょうか? まず日本ではゴミの埋立地が不足しているという事実が挙げられます。そう、使い捨てを止めてリサイクルすることで埋立地の余命をいくばくかでも先送りするために分別が必要なのです。そしてダイオキシン問題が挙げられますね。日本のゴミ処理は、自治体単独で行う場合が多いので、大規模・高性能の焼却炉の導入が先進国の中では非常に遅れています。ですからダイオキシン発生の可能性のあるプラスチック類は、燃やさずにリサイクルしてしまおうという理由もありそうです。
でもなんだかこんな話、おかしいと思われませんか? ゴミ埋立地の寿命を延ばすために、大量のエネルギーと皆さんの労力、そして自治体が税金を投入してリサイクルや分別を推進するのって。そこで、このおかしなポイントについて来週からドイツの場合と比較しながらお話を続けましょう(続く)。
参考記事:朝日新聞2005年11月7日付
http://www.asahi.com/life/update/1107/006.html

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村上 敦
(ムラカミ アツシ)
1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を学ぶ。途中ドイツ人女性と結婚し、休学。その後、フライブルク地方市役所・建設局に勤務し、
現在は日本の環境機器メーカーのアドバイザー、兼主夫。HP(www.geocities.jp/freiburg2004report/)でフライブルクの行政についての分析を行う。」 |
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