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緑の街と緑の人びと
第一六回
前回までは、ドイツの『拡大排出者責任』、つまり生産者が包装容器のリサイクルを義務づけられており、それが日本のリサイクル法よりもうまく機能していると述べてきました。
でもちょっと考えてみてください。もし私がドイツで煎餅屋をはじめたとしたら、その煎餅を包むプラスチックの袋、化粧箱、そして包装紙はどのように回収したらよいのでしょうか。賞味期限が2時間ほどの食品の場合なら、販売した地域の家庭を尋ねて(あるいは購入頂いたお客様の住所をもらっておいて)、後日回収にということも不可能ではありませんが、そのコストを商品に上乗せするとなると煎餅1枚1,000円ぐらいは必要になってしまいます。袋持参の包装容器のいらないお客様には煎餅1枚50円で、でも包装すると1,000円という具合の商売です。
また煎餅は普通生ものではありませんから、多少の保存が利きますし、事業を大きくするためにはドイツ全国展開で販売をしたいのも本音です。すると包装容器の回収はほとんど不可能で、無理を押してやるとしたら煎餅1枚10,000円でも赤字になってしまうことでしょう。つまり法律を犯さない限り、私はドイツで煎餅の販売ができないのです。
つまりドイツの容器包装リサイクル法の場合、個々の生産者がそれぞれに対処しなければならないとしたら、法律施行後に困る(というか破産する)企業がたくさん出てしまします。そこで考え出されたのがドイツ全土の包装容器をすべて取りまとめて回収し、企業の負担(義務)を肩代わりしてくれるDSDというシステムの導入です。このシステムは、ドイツの企業、数百社の出資により設立されたDSD社(ドゥュアル・システム・ドイチュラント:DualSystemDeutschland)が執り行ないます。

簡単に説明すると以下のようになります。
まず私の煎餅の包装に使用される包装容器の種類、大きさ、重さをDSD社に報告します。すると各包装容器の種類に応じて決められた料金で、つまりリサイクルしやすい素材ほど安くなるという料金設定で、私の会社とDSD社がライセンス契約することとなります。ライセンス契約を結ぶと、私の包装容器には図のようなDSD社のマーク(グリーンポイントと呼ばれています)を印刷することができ、そのマークがついている包装容器は、私ではなく、DSD社が責任を持って回収し、分別し、リサイクルするというものです。

あとは、出荷個数に応じてDSD社との間で取り決められた料金(ライセンス料と呼ばれています)を支払えば、わたしのリサイクル法に対する責任は完了するというわけです。
消費者は、DSD社から配布される大きな黄色の袋か、自治体によっては包装容器のための専用ゴミコンテナに、包装容器でグリーンポイントがついているものはすべて投げ込めば、DSD社が回収にきてくれ、あとは分別、リサイクルされていくというものです。
ですから消費者は、いわゆる資源ゴミ、つまりアルミやスチール缶、発泡スチロール、ペットボトルやその他のプラスチック、テトラパックなどの包装ゴミを分別する必要がなく、また洗浄、折り畳みなども行わないで、中身が空であればそのまま捨てるだけとなります。紙の包装容器については、自治体はすでに紙だけの回収を行っているのが普通ですから、そこに入れることとなります(自治体とDSD社でどのような役割・費用分担をするのかが取り決められますが、通常はDSD社が回収します)。ガラスのビンについては、近所に設置された(通常は500メートル四方に一箇所ほど設置されています)ガラス回収コンテナに投げ込めばそれでゴミの処理は終了です。市民は包装ゴミの料金を追加で支払う必要がありません。消費者は、分別や回収、リサイクルのコストを、商品を購入する時点で支払っているのですから。
すっきりとしたシステムだと思いませんか? それに使われる税金もゼロということも魅力的です。つまり企業が過剰包装をすれば、その分が商品の値段に含まれているので、簡易包装の商品のほうがお買い得という状態をこの法律で作ってしまったわけです。後は市場原理にお任せすれば、ゴミの問題は解決へと繋がることとなりました。
次回は、さらにこのDSD社の方式を詳しく報告するとともに、その法律施行後に出来上がってきたドイツのゴミに関する世の中の現状をお知らせしてゆきます。

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村上 敦
(ムラカミ アツシ)
1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を学ぶ。途中ドイツ人女性と結婚し、休学。その後、フライブルク地方市役所・建設局に勤務し、
現在は日本の環境機器メーカーのアドバイザー、兼主夫。HP(www.geocities.jp/freiburg2004report/)でフライブルクの行政についての分析を行う。」 |
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