前回までは、ドイツの容器包装の処理とDSD社について報告してきました。ここまでは、どこの本にでも書いてある内容ですし、ちょっと環境をかじったことのある人なら聞いたことがある話だと思います。
今回は、DSD社への評価や、さらに詳しいリサイクルの目標値などについて話を掘り下げてみましょう。でも一言だけ。リサイクルというのは、ゴミの処理の中でも効率の悪い(つまりエネルギーとコストがかかる)処理方法です。つまり埋立てしたり、焼却してしまうよりはほとんどの場合「まし」であるものの、リユース(つまり修理、洗浄して何度も使う)やそもそも包装容器を作らないほうがよいに決まっています。この点を取り違えてしまわないためにも、もし途中からこのコラムをお読みの方がいましたら、第一三回からお読みいただければ幸いです。リサイクルが良いものだと思われている日本の世の中では、リサイクルの技術・システム的な問題・課題よりも、この点に注目する必要があるからです。
さて気を取り直してDSD社とドイツ版の容器包装リサイクル法についての詳細です。
まずリサイクルの目標値についてですが、ドイツの容器包装リサイクル法では以下の表の値をクリアしていることがDSD社にも、あるいはDSD社に回収、分別、リサイクルを依頼せず自分で回収している企業にも義務づけています。
| 包装素材 |
リサイクル
目標値 |
リサイクル
達成値 |
|
(1999年改定) |
(DSD社2003年度実績) |
| ガラス |
75% |
99% |
| ブリキ |
70% |
121% |
| アルミニウム |
60% |
128% |
| 紙類(ボール紙なども含む) |
70% |
161% |
| 混合素材(テトラパックのようなもの) |
60% |
74% |
| プラスチック類 |
60% |
97% |
| 注:プラスチック類のリサイクルは24%までがサーマル利用が認められているが、残りの36%はマテリアルリサイクリルを行うこと |
出典:DSD社環境成果報告書
表に見られるようにDSD社はこれらの値を大幅に上回るリサイクル率を達成しています(リサイクル達成値が100%を超えているのは、DSD社の回収容器や袋に、グリーンポイントがついていない包装容器以外のものが混入しているため、契約分以上のリサイクルを行っているからです)。そしてDSD社は企業との間では、以下のようなライセンス料金を設定しています。
| 包装素材 |
ライセンス料金 |
| |
ユーロセント/kg |
| ガラス |
7.6 |
| ブリキ |
28.0 |
| アルミニウム |
75.6 |
| 紙類(ボール紙なども含む) |
18.0 |
| 混合素材(テトラパックのようなもの) |
77.5~104.5 |
| プラスチック類 |
135.0 |
| 自然素材(バイオ資源などの包装) |
10.2 |
出典:DSD社2006年から有効のライセンス料金と包装容器の測定法リスト
この一覧表では、一つあたりの包装容器の大きさによる割引率など料金設定の詳細は省略しましたが、お分かりのようにリサイクルしにくいもの、つまり分別に手間がかかり、リサイクルするのにエネルギーやコストがかかるものは、そのまま回収・リサイクルを請け負う対価のライセンス料金も比例的に高騰しています。ですから、いかにプラスチックなどの素材が冷遇され、そもそもの生産量、つまり排出量を抑えているのかが窺い知れることでしょう。
さあ、数字の話ばかりで堅苦しくなりました。それでは、DSD社における問題点とそこから誕生した技術について述べてみましょう。
容器包装リサイクル法が制定されるとき、もちろん産業界からは反対・批判の声が上がりました。つまり包装容器のリサイクル費用が商品に上乗せされると『コストが増大し、他国の商品との間で競争力が弱まり(しかし輸入品であってもドイツ国内で販売するためには包装容器にDSD社のライセンスは必要なのですが…)、ドイツ企業に負担がかかり、経済が失速し、失業率が増大する』といういつもの名文句です。ただしこれらの意見を退けたのは、政治的な左右両党、与野党もこの循環型社会の実現に見合うような法整備を行わなければならないという意志が強かったからでした。
ただしDSD社によるシステムは、現実的ではありますが、いわゆる「抜け道」、つまり企業がゴミを排出することへの責任転換がお金で買えるシステムであり、結局のところその商品を買う羽目になる消費者がそのツケを支払わなければなりません。DSD社の設立に対しては、厳しい批判が環境保護や消費者保護の団体からは噴出しました。またDSD社は文字通りモノポール体制の企業となっていますので、非常に厳しい監視体制が敷かれているとはいえ、競争相手がいません。もし私がリサイクルにかかわる非常に良いアイデアを持っていたとしても、DSD社という巨人相手に、この包装容器のリサイクル業界に進出するのは困難です。また私が進出に成功したとすると、私は独自のグリーンポイントの代わりのブルーポイントなどというマークを包装容器に取り付けるようになりますから、消費者は包装容器の品目でなく、マークで分別を強いられることになり混乱してしまいます。
やはりある程度の事業規模を持つ企業であれば、それぞれが自身の責任で回収と分別、リサイクルを行う。最終的には、ほとんど包装容器の生産されない世の中を目指さなければならないのでしょう。ですからドイツが完璧なゴミシステムを構築したと想像されるのは間違いです。ただし日本とは比較にならないほどうまく機能しているのは誰の目から見ても明らかではないでしょうか。
次回からは、ドイツの容器包装リサイクル法とDSD社の出現によって将来のゴミ社会を揺るがすようなポジティブな現状と見通しが発生していることをお伝えいたします。