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緑の街と緑の人びと
第一八回

前回はDSD社の問題点まで言及しました。しかし設立当初は予測していなかった副産物とこれから先のドイツのゴミ処理の事情について話を進めてみましょう。

まずDSD社が回収と分別、リサイクルを行うようになったことで、市民は分別する手間(PETとかPPとかPEとか、見た目では違いが分からないものを分ける手間)がかからないようになりました。しかしその分、DSD社が大量のゴミを分別しなければなりません。磁石で分別できるスチール、ブリキや電流を一時的に流すことで分別できるアルミは簡単なのですが、設立した当時は、ほとんどの場合その他の軽量の包装容器の分別は、人海戦略で、つまり工場においてベルトコンベア上に人を並べる形で分別していました。

しかしDSD社も株式会社ですから、この分野に他者の参入を許さないためにもコストを抑える必要があります。またモノポールという体制を政治的に批判されもしていましたので、できる限りの技術革新とコストダウンが必要だったわけです。皆さんはゴミをリサイクルする際に、どこに一番のコスト要因があるとお思いですか? それは間違いなく分別にあるのです。分別し終わったものはそれほどのコストをかけなくともリサイクルできるのですが、分別のしにくいものは、前回のDSD社のライセンス料金表を御覧になればお分かりかと思いますが、その分飛躍的にコスト=人件費がかかります(次にコストのかかるのは、日本では自治体や一部の小売店が負担している回収と運搬です)。

ですからDSD社の歩みと包装容器の分別の自動化の歩みは同時にはじまっています。特に2000年のハノーヴァー万博の際に発表され、現在までに改良が加えられているSortechnology3.1(ゾルテクノロジー)という分別システムは、PEを顆粒形成化し、テトラパックだけを取り除き、PSを分別、もちろん紙もPETもアルミもブリキも全自動で選別できるようになっています。

File written by Adobe Photoshopィ 4.0
© Der Grüne Punkt – Duales System Deutschland GmbH
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こうしてドイツでは自動ゴミ分別機の技術革新はめざましいものがありました。その結果は、次の2つのポイントで重要です。

まず一つは、これまで手作業で分別されていたプラスチック類の多くは、製品価値として非常に低いものでしかありませんでした。また中古品の流通も盛んではなかったのです。ですからプラスチックのリサイクルといえば、ほとんどが工事現場の立看板の重しだとか、黒やグレーの花壇や植木鉢、公園のベンチなど品質がそれほど高くなく、魅力もないものにしか使われることがありませんでした。

その状況、つまり使い道があまりないという状況を変えたのは、マテリアル・リサイクルと呼ばれるプラスチックからプラスチックへの循環ではなく、サーマル・リサイクル、あるいはケミカル・リサイクルという循環です。例えば多様な種類のプラスチックが混じったものをペレット状に圧縮し、製鉄を行う際必要なコークスを代替する燃料として使用されるケースです。あるいは火力発電所で燃料として使われるRDF(固形のゴミ燃料)に使われるようなケースもあります。

つまりどのみち、同じ化石燃料を使うのであれば、わざわざ分別などを厳しく行わないで一緒に燃やして、そこから発生するエネルギーを利用しようというリサイクルの定着です。これは一見すると効率的に思われますが、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点から見るとそれほど効果的ではありません。なぜならプラスチックの原料を原油から精製する際には非常に多くのエネルギーがかけられ、汚染物質の排出が避けられず、プラスチックからプラスチックへとマテリアルでリサイクルしたほうが環境負荷が低いからです。

しかしコストのことを考えるとサーマル利用のほうが断然有利な時代が続きました。こうしてDSD社が回収したプラスチック類の多くは、政令で認められている限度でサーマル利用していた期間があったわけです。でも最近ようやくサーマル利用よりもコスト的に見合うマテリアル・リサイクルの方式が定着しています。先ほどのSortechnology3.1(ゾルテクノロジー)という分別の機械がPEを顆粒形成化、PS、PETを自動分別できるようになったからです。

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原料としてのPE顆粒 © Der Grüne Punkt – Duales System Deutschland GmbH (>>

これまでプラスチックのリサイクルといえば、醜い商品にしかなりえなかったものが、素材ごと、そして場合によっては色ごと(透明度程度)に顆粒化することができるようになり、プラスチック製品の流通に乗るようになってきました。つまり現在のドイツでは、もしプラスチックの製品を生産しようとする企業は、その製品のクオリティとコストに見合った素材を、顆粒の形で、新品と同様にリサイクル品も購入できるようになっています。

もし私がテレビを作ろうとすれば、その本体の背面のグレーのプラスチック部分は、なにもすべて新品のプラスチック原料で生産する必要がありません。新品のPVCを何割、中古を何割、新品のPSを何割、中古を何割といった形で自由に配合を変えることで生産できるようになっているのです。

こうした素材の流通価格を掲載しているヨーロッパ経済サービス(EUWID)の2006年2月号によれば、ドイツでPEの顆粒の新品はキロ当たり1.1ユーロ前後で取引されているのが分かります。同じ素材での中古品はというと0.5ユーロ前後。つまりそれほど透明度は期待できませんが、品質的にはそれほど劣らない素材が半額程度で買えるようになっています。

流通や市場が確立したことで、マテリアル・リサイクルの道が確保されました。現在は製鉄の際の還元剤などに使われるサーマル・リサイクルの割合は減少傾向です。これまでは混ざったプラスチック・ペレットをただ同然に買い叩かれていた製鉄所との複数年契約が終われば、一気にプラスチックはサーマルでない使われ方をするようになると見通されています。これは環境のためにも非常に画期的なことです。

これがドイツが容器包装リサイクル法を制定し、DSD方式を取るようになってから生まれた副産物の一番目です。

次回はもう一つの大きな副産物をご紹介するとともに、日本の分別の方式が根本から決定的に間違っているポイントを指摘しましょう

 

つづく


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村上 敦  (ムラカミ アツシ)

1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を学ぶ。途中ドイツ人女性と結婚し、休学。その後、フライブルク地方市役所・建設局に勤務し、 現在は日本の環境機器メーカーのアドバイザー、兼主夫。HP(www.geocities.jp/freiburg2004report/)でフライブルクの行政についての分析を行う。」


フライブルク基本情報

■市名/Freiburg im Breisgau

■位置/ドイツの南西部。フランス、スイスの国境に近い。

■気候/平地は乾燥して暖かいシュヴァルツヴァルトでは風が強く寒い。

■人口/約20万人

■面積/約103平方キロメートル(うち3分の1が森)

■特徴/ドイツ南西部「黒い森」のふもとに位置する中世の趣を残した大学都市。

1972年に隣接した地域に原子力発電所の建設が予定され、町をあげての反対運動で阻止。
これをきっかけに、市民と行政の両者が積極的に環境保護に取り組むようになり、1992年に「環境首都」(=自然と環境の保全に最も貢献した自治体)の称号を与えられた。



 

 



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