待ち合わせ場所に颯爽と現れた藤崎さん。「こんにちはー!」という明るい挨拶とともに、よく陽に焼けた魅力的な男性が近づいてきた。藤崎さんのまわりには心地良い空気が流れる。
学生の頃、日本全国を自転車で旅をしていた藤崎さんは、知床を訪れ「ここに住むんだ」と直感した。その後、結婚を期に知床に移り住んで、はや10年。今では地元に溶け込んで様々な活動をしている。
「最初はね、エコツアーは怒りから始めたんですよ。僕がそれまでの人生を捨ててまでやってきた知床なのに、観光客はカニを食べるだけで何も見ないで帰ってしまう。『ちゃんと見ていけよ!』という気持ちが強かったんです。」そして、知床の魅力を伝える活動が始まり、エコツアーを手がけるNPO「Shinra」は10名のスタッフを抱えるほどまでになった。それだけ、エコツアーを求めている人が沢山いたのだ。
「知床の魅力を伝えたい」という想いは、全国に情報発信をするためのインターネットラジオ局「radio
KISAR」を立ち上げるまでになった。音楽好きで知床好きの藤崎さんが立ち上げた「radio KISAR」は知床に似合う心地の良い音楽と、現地からの情報を届けてくれる。
世界遺産に登録されることが決定した知床だが、観光客が増えた時の影響はどうなるのだろうか?「観光客が増えると自然には良くないでしょうね。でも、『知床』というものを世界遺産で登録された範囲だけではなく、広い目で見ればいいんです。」と語る。つまり、世界遺産以外の広い範囲でエコツアーが行われれば、観光客は分散して自然への負荷も減るし、それぞれの地域経済が活性化される。知床の将来を考える藤崎さんの視野は広い。「もうひとつね、世界遺産に登録されて良かったな〜と思うのは、IUCN※が明確に『アイヌ民族の参画』を示したことですね。」と言う藤崎さん。アイヌの友人も多く、北海道のアイヌの事情にも精通している。 様々な活動をしてきた藤崎さんだが、展望はさらに広がる。「次はね、先住民族のエコツアーを普及させたいんですよ。仕事がないアイヌの若者が誇りを持ってできる仕事として、そして、コミュニケーションの場として。私たちはアイヌから学ぶことは多いですよ。」と語る。すでに、シレトコ先住民族のエコツーリズム研究会(SIPETRU)が発足し、7月に第1回目の先住民族のエコツアーが企画された。
藤崎さんの言葉や活動から感じられるのは、知床の自然だけではなく、人の未来も考えた誠実な姿勢だ。これからも多くの人に感動と幸せを運んでくれるに違いない。 ※IUCN(国際自然保護連合)
国家、政府機関、非政府機関で構成された国際的な自然保護機関。IUCNはユネスコの世界遺産委員会に対し、自然遺産に関して技術的な評価を下す公式な諮問機関の役割を持っている。
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