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小笠原村がエコツーリズムを具体的に進めていくためにエコツーリズム推進委員会を設置したことは、前回ふれた。実はこの組織、第一段階目の組織として発足したものだった。このため、構成団体も小笠原村、商工会、父島・母島の観光協会、ホエールウォッチング協会といった、いわば資源である自然を利用する側の団体のみ。保全側の団体は入っていなかった。ただし、マスタープランづくりには、環境保全に関わる諸団体からの知恵をたくさん借りたという。

同委員会はまた、小笠原の自然を楽しむにあたって各団体が定めたルールを、ルールブックとして1冊の冊子にまとめ、発行している。中でも特筆すべきは、南島と母島の石門一帯のについて東京都の定めたエコツーリズムのルールだ。

南島はその景観の美しさから、観光客が過剰に立ち入って、植物が傷めつけられ、その結果として赤土が海へ流出して自然への悪影響が出てしまった。母島の石門一帯は手つかずの自然のすばらしさが残っている貴重なフィールドだ。

都では、この2つの地域に対して、一日の最大利用時間、最大利用者数、立ち入り禁止エリアを設けている。また、訪れる際には、観光協会加盟のガイド付きであることが求められ、しかもガイド1人あたりの利用者の人数の上限も定められている。

ルールブックには、このほか、クジラやイルカ、固有種や希少な生物たちを観察するためのルールも図解入りでわかりやすく解説されている。

エコツーリズムの基本姿勢を決定した推進委員会は3年間の活動を行った。その後、平成17年度から第二段階目の発展的な組織として、エコツーリズム協議会が発足。これまでの団体に加え、農協や漁協、NPO法人小笠原野生生物研究会、NPO法人小笠原自然文化研究所、NPO法人日本ウミガメ協議会、小笠原自然観察指導員連絡会といった自然保護団体、環境省、国交省、東京都、そして、小笠原への唯一の交通機関である小笠原海運も構成員として名を連ねた。

同協議会は、具体的な事業を実施する団体ではない。小笠原でエコツーリズムを進めていく上でどのような方向性を取るのか、その合意形成機関として位置づけられている。具体的な実行組織については、今後、検討していくことになるという。

小笠原というと、海の美しさに目を奪われがちだが、固有種の動植物が豊富な森の散策もエコツアーとしては見逃せない。父島では今年2月から、エコツーリズムを展開する上で必要となる新たな遊歩道の調査を行っている。その調査の委託を受けているのが、村の自然観察指導員連絡会だ。

その中心となっている原田龍次郎さんは語る。

「原生状態のところを切り開いて新たな道を作ることは自然破壊につながるので、絶対に避けなければいけない。じゃあ、昔の人たちが使った道をもう一度調べ直そうということになった。

戦前に集落のあった森の中は、非常に急勾配の地形だけれど、歩くための生活道なので、歩きやすい道になっている。それをもう一度(遊歩道として)使えるなら、そのほうがいいだろうと。

その道をたどることによって、例えば、サトウキビを絞める道具が落ちていたり、昔の人たちの生活や歴史を忍ぶことができる。エコツアーというのは、自然だけでは片手落ち。人の生活があって、初めて本来のツアーになる」

第二次世界大戦の強制疎開によって、なくなってしまった集落。その跡をたどり、生活を潤した原生状態の自然と対話する。そうしたエコツアーが実現する日も遠くない。

<コラム>もう一つの島・母島の魅力

母島は、メインランドの父島からさらに約50kmのところにある、のどかな島。その魅力を小笠原母島観光協会・事務局の坂入祐子さんが語ってくれた。

父島から船で入ってくるとわかるんですが、母島は赤土がなく、全体が緑の島。島のちょうど真ん中に父島、母島合わせて一番高い山・乳房山(標高463m)があります。そこにいつもガスがかかっていて、自然の高木林や固有の植物を育てています。手つかずの自然がそのままに残っているんですよ。

一番行っていただきたいのは、この乳房山と小富士という山です。小富士は日本で一番南にある、ふるさと富士。そこから見る珊瑚礁の美しさは絶景。母島のまわりの属島全体も見渡せます。

あとは世界にここだけしかいないハハジマメグロという鳥。山に行くと本当に近くまで寄ってくるんですよ。ウグイスなども内地では声は聞くけど、姿は見たことない方が多いのでは。ここではすぐ近くまで寄ってきてくれる。鳥たちが警戒していないんですよね。だから、双眼鏡なしでバードウォッチングができる。

ダイビングも解禁になってから6年目になりますが、今もアンカーを打たないように工夫をして、珊瑚礁に負荷をかけないようにしています。

母島の観光客はリピーターが多いですね。時計を忘れてのんびりできること、そして、ローカルなお祭りにも島民の一員として参加でき、疑似島民体験ができることが、その理由のようです。



九冨 真理子 (クトミ マリコ)

1959年、千葉生まれ。量販店、マーケティング会社での勤務を経て、フリーのライターに。環境、福祉、医療、教育の4分野を中心に著作活動を行って十数年。ぐーたら虫の主婦(?)ゆえに、息をするように無理のないエコロジーがモットー。今春、夫がガンで亡くなったことをきっかけにメディカル・ソーシャル・ワーカーになることを決意。真に患者がいきいきと自分らしく過ごせるためのサポーターになるのが目下の夢



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