そうした中、NGO団体小笠原自然観察指導員連絡会は、国、都、村、小笠原海運などの関係機関に、天ぷら油等の食用廃油を利用したTSLの代替燃料供給プランを提案した。
TSLは重油より高い軽油を使うため、現在運行しているおがさわら丸の約2〜3倍のコストがかかる。そこでこの軽油を、天ぷら油などのリサイクル油を利用したバイオディーゼルに変えることによって燃料費を下げようというのが、このプランの趣旨だ。廃油のリサイクルをするバイオディーゼル精製工場を東京に作ることによって、下水道汚染、ひいては海洋汚染の原因の1つである廃油排出量も低減でき、東京都の環境政策にもつながる。バイオディーゼルは植物性なので有害化学物質の含有量が少なく、黒煙や硫黄酸化物(NOx)が出ない。CO2の排出量もゼロカウントで、地球温暖化抑制にも寄与できる。
環境負荷が少ない分の憂虞処置として東京都独自のバイオディーゼル優遇税などの対策をとれば運行コストの削減にもつながるだろう。バイオディーゼルはドイツを中心としたEUやアメリカ・カリフォルニア州では積極的に使われている。ドイツではバイオディーゼルの燃料スタンドが1,100箇所もあり、このため、ガソリン車よりもディーゼル車のほうが環境に配慮した車として認知されているほどだ。日本でも環境にやさしい燃料ということで、昨年からバイオディーゼル燃料車の開発・普及促進が国交省によって実施されている。
内地から1,000kmも離れている小笠原では、週に1度の船便が生活物資を届ける唯一の交通手段だ。それだけに、いずれは枯渇する化石燃料にいつまでも依存しているわけにはいかない。一日も早く化石燃料に頼った現状から脱却しなければ、島の未来はない。
今、船の燃料をバイオディーゼルに転換することによって、将来にわたる島のピンチをチャンスに変えられる。環境問題の解決にもつながり、世界遺産に認められる可能性も高まる。
バイオディーゼル精製工場の運営は、地域住民の手でやっていくことに意義がある。PFI事業(民間の資金、経営の能力、技術を活用して公共事業を行うこと)として、村の人たちが会社を興して実施していきたい。食用廃油は冷凍食品会社や揚げ物工場、ファーストフードチェーン、ホテルなど大量消費をしている工場などから供給を受けることを考えている」と同連絡会渉外担当理事の友永成太氏は語る。
クリーンで低燃費な高速艇の航行が話題を集めることは必至。廃油の供給先企業と提携を結ぶことにより、TSLを広告宣伝媒体として利用したいという企業もたくさん出てくることが見込まれる。広告収入をTSLの運航費の一部に充てられるのではないかとの見方もある。また、いずれは一般家庭からの食用廃油をリサイクルすることも検討しており、回収対価としてグリーンマネーを発行することも視野に入れられている。「修学旅行生などを対象に『食用廃油を集めて、小笠原へ行こう』etc….という夢のあるキャンペーンも展開できるだろう。廃油が船や自動車を動かせる、廃油の下水汚染で困っている東京都を救えるという。環境保護体験学習などと組み合わせるなどして、いろんな仕掛けができると思う」と友永氏。
課題となるのは、東京ー小笠原間で1往復552キロリットル軽油ベースで必要となる燃料を精製するための具体的な廃油回収システムの検討だ。回収は民間の運送会社と提携して実施する計画だが、村民たちの情熱が問われる。
「バイオディーゼルの精製技術は確立しているので、都やこの事業に関連している企業の方達に土地や資金の援助を受けられれば、ローコストで精製工場はできる。バイオディーゼルは、軽油と混ぜることによっても燃費が上がり、排ガスも減る。まずは燃料の一部だけでも供給できるめどをつけたい。当面、TSLへの供給だけを目的とし、食用油の廃油を効率良くローコストで集められる独自の回収システムを構築することで、リッター35〜45円で精製可能と試算している」と友永氏。
このプランの反響は大きく、特に国土交通省、TSLの保有会社、三井造船内部では、すぐにできることではないが、良いアイデアだと高い評価を受けている。原油価格の高騰に左右されず、クリーンエネルギーで走る世界一環境にやさしく低燃費な船。国家プロジェクトとして開発されてきたスーパーライナーオガサワラ(TSL)は、持続可能で環境保全に役立つエネルギーで走ることによって、世界からの注目も集めるだろう。就航予定の4月に向けて、小笠原では地域住民の間で活発な動きが見られそうだ。
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