16日、国連大学ウ・タント国際会議場にて、WWFジャパン主催の国際シンポジウム、「脱炭素社会に向けた排出量取引制度」が開催された。
京都議定書の第一約束期間スタートを目前にひかえる今、目標達成が困難な日本の現状を打開する方策のひとつとして注目を集める排出量取引制度。その動向と是非を議論することを目的に開かれた今回のシンポジウムには、ビジネスマンなど約350人が参加。質疑応答でも参加者からの積極的な発言が目立ち、排出量取引への注目の高さが伺えた。
最初に行われた基調講演では衆議院議員の水野賢一氏が、続く事例報告では、諸富徹氏(京都大学公共政策大学院准教授)、サイモン・マー氏(欧州委員会代表部排出権取引制度担当官)、スコット・マーティショー氏(カリフォルニア公共事業委員会)の三氏がそれぞれ、日本、EU、アメリカ西部諸州の排出量取引の現状を伝えた。
昼休憩を挟んでの報告で気候ネットワーク代表の浅岡美恵氏は、「家庭部門よりもむしろ、全体の3分の2を占める発電・産業部門での積極的な温室効果ガス排出抑制対策がもっとも効果的」と指摘。さらに「結果を出すには、現在の丸投げ状態の自主行動計画では弱く、確かな削減を担保できる政策の導入が不可欠」と述べた。
UNEP FI特別顧問・末吉竹二郎氏の司会で進行したパネルディスカッションは、テーマの範囲を「日本にとっての排出量取引制度」と狭め、サイモン・マー氏、スコット・マーティショー氏、山田健司氏(新日本製鐵株式会社・環境部長)、高橋康夫氏(環境省・市場メカニズム室長)、藤原豊氏(経済産業省・環境経済室長)、鮎川ゆりか氏(WWFジャパン・気候変動特別顧問)の7人で集中的に意見を交換した。
「高いエネルギー効率を達成している日本の鉄鋼生産にさらなる制約を強いることは国益に反する」とする山田氏、「自主行動計画の拡大を強化」したい高橋氏、「国内C&T型排出量取引制度の早期導入を支持」する鮎川氏などによって活発な議論が行われたが、業界間での利害や不平等感が最後まで壁となり、意見合意の難しさがあらためて浮き彫りになった形だ。
とはいえ私たちに残された時間は少ない。「議論する時は過ぎた。今は行動する時」とまとめた末吉氏の言葉を実行に移す時が来ている。
取材:中島 まゆみ

