環境問題に万能薬はない! 国連がバイオ燃料に関するレポートを発表

*画像はイメージです。
今月16日、国連環境計画が世界的に注目を浴びているバイオ燃料に関する報告書を発表した。温暖化防止効果に止まらず、原油高騰の影響もあり、バイオディーゼルやバイオエタノールなどのバイオ燃料に対する需要が高まりつつあるが、生産の仕方次第では地球環境に大きな負荷を与えかねないと指摘。各国政府に対し、エネルギーとしてだけでなく、気候、土地利用、水質汚染、農業政策などを考慮し、包括的なアプローチをとることを促している。この報告書は、20人を超える著名な科学者が参加した「持続可能な資源管理に関する国際パネル」によって、世界各地で発表されたバイオ燃料に関する論文を中心に編集されている。
バイオ燃料が世界的なブームになったきっかけは、ブラジルのサトウキビから生まれるバイオエタノールだった。これを第一世代とすれば、すでに第二〜第三世代にまで進化したバイオ燃料だが、まだまだ環境負荷に関する調査は不十分だ。ブラジルのバイオエタノールはサトウキビの絞りかすから生まれるバガスという廃棄物をエネルギーとして使う。そのため、石油に比べCO2排出で7割〜10割の削減が可能だ。
一方、トウモロコシから生まれるバイオエタノールは、精製の過程で化石燃料を使用するため、逆に5%の排出増につながる可能性があるという。
バイオ燃料の精製過程だけでなく、どのように原料が栽培されたかを考えると、地球環境への負荷はかなり大きなものなってくる。インドネシアなどで栽培されるパーム油から生まれるバイオディーゼルの場合、原油と比較すると80%の排出削減も可能だが、熱帯雨林を伐採して生まれたプランテーションからの原料を使用した場合は、なんと800倍の温室効果ガスの排出に相当する。また、大量の炭素を抱え込む泥炭林を伐採したプランテーションからの場合には2000倍の排出増につながる可能性があることも指摘している。
私たちが地球環境への負荷をはかる際に使うのがライフサイクルアセスメント(LCA)だ。この過程で評価されるのは二酸化炭素の排出だが、バイオ燃料に関しては原料となる資源を生産する際に使われる肥料や農薬、水質汚染、大地に対する負荷を考慮しなければならない。荒れ地となっている場所でも、手を入れれば食料を生産する農地に変わる場所や、農地にならなくても太陽光パネルなどを設置した方が、エネルギー生産の効率が良くなる場所もある。そして、バイオ燃料を生産する際にも、社会全体でエネルギー消費を抑制し、社会全体の燃費を良くする政策の導入が必要となる。
こうした考えはバイオ燃料だけにあてはまる問題ではない。地球温暖化防止という大義のもと、核廃棄物の最終処分場さえ決まっていない原子力発電を過度に推進したり、自然環境に大きな負荷をかける可能性がある二酸化炭素の地中貯留を進められたり、未来の交通政策の全体像が固まらないままに電気自動車が突出して生産されたり・・・。このレポートでは「バイオ燃料は万能薬でも、排除されるべき者でもない」と語られている。これはエネルギー問題全般に関しても言えることだが、どのような環境で、どのような方法で使っていくかによって、それは天使にも悪魔にもなる存在だ。切迫している地球環境問題に対して、私たちに、これまでのような失敗は許されない。新しい技術を導入する際には、総合的な視野を持ち、冷静に判断しなければならない。このレポートはそう私たちに警告しているのかもしれない。
文:上岡 裕
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