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人と地球に優しいTシャツを創る

久米繊維工業の久米信行さんにお話しを伺ってきました。

「国産Tシャツメーカーの久米さんです」「それに『ブログ道』の久米さんですね」「そうそう、新東京タワー建設で今をときめく“墨田区”の久米さんにも目が離せませんよ」。多彩な顔をもつ久米さんの周辺では、絶えずそんな話題が飛び交っていそうだ。そして久米さんのビジネスの特徴といえるのが、NPOやNGO、コミュニティ、アーティストといったパートナーとのコラボレーションだ。さらに環境に配慮したTシャツづくりに取り組み、「オーガニック・コットンTシャツ」の製造販売を手掛けている。エコロジーオンラインが「渡良瀬エコビレッジ」で行っているオーガニック和綿栽培プロジェクトの強力な助っ人でもある。

オーガニック・コットンとの出会い

久米繊維工業は、1935(昭和10)年に久米さんの祖父・才市さんが、繊維産地だった東京下町の本所(現在の墨田区石原町)に、メリヤス製造の町工場として創業した。戦後、久米さんの父・信市さんが家業を継いだ。映画青年だった信市さんは、映画とともに米国から運ばれて来たTシャツ文化に魅せられ、日本人の体型に合わせた型紙を作り、素材、縫製、仕様などを吟味し、オリジナルのTシャツを開発した。
Tシャツという言葉が知られていなかった時代、「色丸首」と名付け、国産Tシャツの先駆けとなった。以降、デザインから販売まで一貫して行う国産Tシャツメーカーとして商品を提供してきた。
3代目を継いだ久米さんは、Tシャツ製販サイト「T-galaxy.com」を開設し、いち早くITツールをビジネスに活用してきた。とともに、環境負荷の少ないTシャツづくりに取り組んでいる。もちろん、品質に誇りをもつ。「現在も、職人さんが一枚一枚手縫いしています。しっかり作ってあるので、長く着られる。100回200回洗っても大丈夫」。そんな久米さんが、オーガニック・コットンに出会ったのは10年前。自身の結婚がきっかけだった。
「『子ども』のことを考えたとき、環境問題とか、複合汚染とか、より身近なこととして捉えるようになりました。そこでオーガニックの食べ物を知ったわけです。と同時に、着る物のオーガニックも心配になりました」。現在、日本で使用されている原材料の綿のほとんどは、米国などから輸入しているものだ。「私たちもコットンU.S.A.の会員ですから、綿の農薬はどうなっているんだろう?と尋ねてみると、『残留農薬はないから大丈夫。着ている人は大丈夫だ』というんです。けれど現地を見た人は、『畑は大変。農薬が川に流れ込んでいる』というんですね」。
そんな折、オーガニック・コットン製品の販売を始めたというアバンティの渡邊智恵子さん(*)を訪ねた。渡邊さんに共感した久米さんは、NPO日本オーガニックコットン協会のメンバーとなり、自社でオーガニック・コットンTシャツの製造販売を始める。「最初にオーガニック・コットンTシャツをたくさん使ってくださったのは、高知県にある『砂浜美術館』の『Tシャツアート展』でした」。そこでオーガニック・コットンの普及に自信をつけた。「直感的にいいと感じる要素がたくさんあるんですね。生地を手にすると『香りがする』『肌触りがいい』『生成りの色が落ち着く』と反応が返ってきます。体感できる品質のよさで、環境のことを気にしていない人でも、着てくれる人がいると思いました。普通の人のエコロジーに近い感覚ですね」。

身体感覚が大事

オーガニック和綿栽培プロジェクトに協力するようになってから、久米さんは家族で「あき津亭」(*)に足を運び、畑仕事を手伝っている。「種まきから綿摘みまで一通りやらせていただいて、イメージが豊かになりました。家族で楽しいと感じています。なぜなら、今まで見えなかったプロセスが見えるからなんですね。ものづくりの大変さがわかる。すると、ものを大切にするようになる。それに関わっている人たちを尊敬するようになります」。
「現代人は、生活の基本である衣食住を手に入れるまでのプロセスが分業化されて、見えなくなっています。昔の農村だったら、作っている人がわかっているから、買う人もありがたいと思い、作って売る人も、コンプライアンス(法令遵守)なんて言われなくても、使う人がわかっているから悪いことができない。私は下町育ちなので、そのコミュニティの感覚がよくわかります。そうやって相互に信頼関係ができていました」。
何より久米さんは現場で感じる『身体感覚』が大事だと思っている。「頭で考える『意識』ばかりだと、地球温暖化のことを考えたら絶望的になってしまいます。『身体感覚』で見れば、こんなにお米がおいしいとか、身近に自分がありがたいと感動できるものが見つかって、元気が湧いてくる。そういう人が増えると、みんなの『意識』も変わって、マスの『意識』に働きかけていくことになると思います」。

ブログは個人の活性化ツール

「ブログ道」の著者として知られる久米さんは、現在、「日本財団CANPANブログ」のエディターとして、NPOや社会起業家の支援事業に協力している。「ブログの主役となるのは、個人、NPO、小さな企業のような人たちです。日本財団のブログ大賞で審査員の一致した意見は、『ブログは個人がはじけるメディア』だということです。個人が独断専行でやることが許されない組織からは出て来ません。ブログは、組織を作らなくても、最小限のユニットで活動するのに有効なツールです。事務局、コールセンター、会報がいりません。CANPANブログの改良では、どんなNPOでも簡単に管理できるようなブログベースを作ることを提案しました」。さらにブログが個人のライフスタイルに与える影響は大きいと指摘する。「ブログを書くと、すぐにネタがなくなり、ルーチンで生きていることに気づきます。もっと本を読もう、人に会おう、やりたいことを極めようと考えるようになり、個人の活性化ツールになります」。
最後にビジョンを尋ねてみた。「Tシャツの楽しみ方をいろんな人に知っていただけたらと思っています。できればオーガニック・コットンをベースしていきたい。人々のライフスタイルが多様化、オタク化して、メーカーが提案する時代は終わったと考えています。私たちはいいものを作って、パートナーであるNPO、企業、地域の人、エコの人、クリエーター、それぞれの人が使いやすいしくみ提供していく。お互いに応援し合えるようなやわらかな共同体ができたらいいと思っています」。
久米さんの会社の協力を得て、「あき津亭」で収穫したコットンボールから、まもなく日本初のオーガニック和綿Tシャツが完成する。持続可能な社会の実現に向けたNPOと企業の取り組みが、一つ形になろうとしている。

( 取材:中島 まゆみ 写真:黒須 一彦

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PROFILE:

久米 信行( くめ のぶゆき)さん

1963年東京墨田区生まれ。1935年創業の国産Tシャツメーカー3代目。日本製ならではの商品品質に加え、オーガニックコットンや水性インクを用いた環境品質、少枚数でもオリジナルTシャツ製作とネットPRを応援する文化品質を追求し、国内自社工場でのTシャツ生産を続ける。その道のプロに聴くサイト AllAbout.co.jpのTシャツガイド。
NPO日本オーガニックコットン協会広報委員として有機栽培綿の普及。和綿を無農薬で生産する「渡良瀬エコビレッジ」で畑仕事を実践中。NPO/NGO法人やアーティスト.クリエイターの活動をTシャツで支援するアソシエイト・アフィリエイト+ブログコミュニティのシステムも提供。
その他、東京商工会議所 企業経営委員/墨田支部IT分科会長。明治大学商学部「ブログ起業論」講師。日本財団CANPANブログ エディター。
著書:「メール道」「ブログ道」(共にNTT出版)