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循環する農、そして山、川

栃木県下都賀郡・藤岡町、あき津亭で30年以上無農薬・無化学肥料で農業をしている町田武士さんにお話をうかがってきました。

オタマジャクシ、カエル、ホウネンエビ、カブトエビ・・・町田さんの田んぼには生きものたちがいっぱい。田んぼに稲の補植をしながら、縁側でとれたてのきゅうりをかじりながら、地に根ざした生活をしている町田さんの“オーガニック”観をうかがいました。

「農薬を使わないから“有機農法”っていうのとは違うと思うんだよね。」とゆっくりと口を開いた町田さん。自身も試行錯誤して現在の姿がある。「いい答えはないけどさ、その土地、その土地のやり方があってさ、まわりの自然条件にあわせて循環させることが大事なんじゃないかな、と思うんだよね。」と言う町田さんは、山や川や田畑の関係を語った。山に雨が降り水が貯えられ、木々の落ち葉が腐葉土となり栄養が蓄えられる。その水と養分が川を流れ、人々の田畑を潤す。そしてその田畑が様々な生命を育む。この大きな循環の中に農業があると考える町田さん。有機農業が時には「農法」として語られることが多い中、町田さんはこの循環の中にあるということこそ大事だと語る。そこに、常に大きな自然の流れに目を向けながら農業をしている町田さんの姿勢が感じられる。

どんなきっかけで農業を志したのか?とたずねてみた。

「家が農家だったからさ、小さい頃、両親に連れられて田んぼや畑によく行ったんだよね。それで穴掘ったりさ、土だんご作ったりさ、それが気持ちよかったんだよ。その感覚を覚えていたんだと思うよ。」という町田さんにとって農業はとても自然なことだったに違いない。ただ、農業をやろうと思ったのは高校生の頃。ちょうど水俣病などの公害が大きな問題となっていた頃だ。そこで「環境を汚さない農業」をやろう、と決めた。その後、試行錯誤を経て今の町田さんの農業がある。

「循環の中にある」ということを大事にしている町田さんは、極力人間の手も加えない。畑の条件にあわせて野菜の種類を選び、肥料も極力使わない。そんな町田さんの畑から採れる野菜たちは小ぶりだが、野菜本来の味がする。「野菜の『野』はね、野生の『野』なんだよね。(野菜だけじゃなくて)みんなそうだけど、自分の力で生きることが大事なんだよ。野菜も自分の力で生きられるようにさ、人間はちょっと助けるぐらいがいいんだと思うよ。」と言った町田さんは、まさに自然の力を借りながら自分の力で生きている人だ。

町田さんの言葉には“オーガニック観”という言葉では語れない深さがある。大事なのは自然の循環の中にあること、そして気持ちいいこと。それは決して農業だけではなく生き方そのものにも当てはまる。私たちもちょっとだけ意識してみると、昨日よりも気持ちのいい日が待っているかもしれない。

写真:黒須 一彦

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プロフィール:

町田武士( )さん

栃木県・藤岡町生まれ。若い頃に全国各地の共同体や、自然農法の提唱者福岡正信氏や天然農法の提唱者藤井平司氏のもとで農業に従事する。その後栃木県・藤岡町で30年以上、無農薬・無化学肥料の農業をしている。また、現在古材や間伐材などの国産材を使用した工房作りなどを含め、循環型・持続型コミュニティの場の形成を進めている。
著書「やまずめぐる