祝島を描いた2つの映画に注目!
文:温野 まき

豊かな漁場で代々行われてきた一本釣り漁業(『祝の島』)
小さな島で続く原発反対運動
祝島という島をご存知だろうか? 山口県の東南、室津半島の沖合にある、ハート形をした小さな島だ。人口約500人、島民の7割が65歳以上を占めていると聞けば、過疎化、高齢化の島というだけで片付けられてしまうかもしれない。
しかし、今月、この島を描いた2本のドキュメンタリー映画が公開されることとなり、全国から熱い視線が集まりつつある。
1982年、祝島の対岸4キロメートルにある上関町の田ノ浦に、中国電力による上関原子力発電所建設計画が持ち上がった。それに対して、島民の9割が「原発反対」を表明し、28年間に渡り反対運動を続けている。
中国電力側は「エネルギーの安定供給と経済性を維持しながらCO2排出を最大限削減するには、原子力開発の推進が極めて有効...2010年代後半以降の重要な電源として、上関原子力発電所1,2号機の開発を経営の最重要課題と位置づけ、総力をあげて取り組む(*)」という理由で今年度の着工を急ぐ。
祝島も含まれる上関町では、2008年9月に、中国電力が山口県知事に提出している田ノ浦の埋め立てに同意する意見案が強硬採決された。昨年2009年には敷地造成に着手。さらに今年2月14日の同町議選では、定数12席に対して、建設推進派が9議席を確保し、原発建設は大きく動き出そうとしている。
そんな状況のなかで完成したドキュメンタリー2作品は、奇遇なことに、いずれも女性監督によるものだ。ただ、その手法は全く異なっているので、両方観れば、祝島のことはもちろん、私たちの未来に関わる大事な問題を立体的に、より身近に感じることができると思う。
島の暮らしに静かに寄り添う『祝の島』
コタツを囲む島のおじいさん、おばあさんたち(『祝の島』)
ひとつは、纐纈(はなぶさ)あや監督による初監督作品『祝の島(ほうりのしま)』。
2003年に、本橋成一監督の『アレクセイと泉』を上映するために、祝島を訪れた纐纈監督は、島に着くなり、"原発に反対する過疎の島"という暗いイメージを覆される。島民たちの屈託なさと明るさ。毎週月曜日の夜に島内を巡る原発反対デモの、どこかのんびりとした様子。先祖から受け継いできた大事な海を、体を張って未来に残そうとしている姿。
「海と山さえあれば生きていける。だからわしらの代で海は売れん」
島民の意思は固く、中国電力側から振り込まれた多額の補償金も突っぱねた。3月のエコピープルに登場していただいた纐纈監督が言った「島の経済はお金で回っていない」という言葉が、この映画を観るとよくわかる。人も自然の一部であることを感じられる暮らし。それを守り続ける温かな共同体。だからこそ、原発が来たことによって、人々の大切な絆が分断されてしまった悲しみは深い。その全てに静かに寄り添い、丁寧に収められた映像と音が、観る者を包み込む。
先代が積み上げた石垣の棚田を守り続ける(『祝の島』)
何ができるかを問いかける『ミツバチの羽音と地球の回転』

もう1本は、『六ヶ所村ラプソディー』が記憶に新しい鎌仲ひとみ監督の新作『ミツバチの羽音と地球の回転』だ。前作では、本州最北端の過疎地で原発最前線に生きる人々を追い、今作では本州最西端の過疎地で起きている原発建設問題を伝えてくれる。過疎地と原発の問題は切っても切り離すことができない。
高齢化が進むが、島民の表情は明るい(『ミツバチの羽音と地球の回転』)
今作品の主軸として登場するビワ農家の山戸孝さんも、いったんは祝島を離れたが、現在は島に戻り、持続可能な農業と特産品の販路を開拓しながら、数少ない若い世代の一人として、反対運動の中心に立っている。
鎌仲監督は、祝島の島民へのインタビューとともに、豊かな漁場、田ノ浦の稀少な生態系を紹介し、それゆえに原発建設に必死で抵抗する島民の心情を浮き彫りにする。そして、本当に原発建設しか道がないのかを問うべく、祝島からスウェーデンへと視点を移す。
自然エネルギーで走るスウェーデンの電気自動車(『ミツバチの羽音と地球の回転』)
国民投票で、脱原発、脱石油社会を選んだ(『ミツバチの羽音と地球の回転』)
国民投票で脱原発を決め、2020年までに脱石油社会をつくることを目標としている同国は、省エネ住宅、自然エネルギー開発、それに伴うインフラ整備を進めている。
何よりも、日本と最も決定的に違うのは、電力が完全に自由化されていることだ。同国第5位の電力会社は出版社が始めた会社だというから驚く。映画の中でスウェーデン人男性が、日本の電力事情に対して、「電力が自由化されてないって? それは変えなきゃダメだ」と言うシーンは印象的だ。
私たち一人ひとりが気づき、ライフスタイルを変えていくことで、小さなミツバチの羽音が、いつか地球全体を変える...。そんな思いが、映画のタイトルに込められているのではないだろうか。
千年前から続く大切なものを、千年後へ引き継ぐ
祝島の問題は、私たちの未来に関わる問題でもある(『ミツバチの羽音と地球の回転』)
最後に、この2作品に出てくる祝島の伝統行事「神舞(かんまい)」という祭を紹介したい。起源については、以下、祝島ホームページより抜粋。
仁和2年(866年)8月に、豊後伊美郷の人々が山城国石清水八幡宮より分霊を奉持して航海中に嵐に遭い祝島の三浦湾に漂着した。当時この地には3軒の民家があったが、生まれる子どもは体が弱く生活は苦しかった。しかし、彼らは遭難した一行を心からもてなした。その時に教わった荒神を祭り、農耕(麦作)を始めたことにより、以後島民の生活は大きく向上。それ以来、お礼にと、島民は毎年8月に伊美別宮社に「種戻し」に欠かさず参拝をした。そして4年毎に伊美別宮社から20余名の神職、里楽師を迎え、本島を斎場として神恩感謝の合同祭事を行うようになった。
2008年8月に行われた「神舞」を、両監督とも映像に収めている。神職の乗った御座船を迎え、先導する祝島の舟「櫂伝馬」上での勇壮な舞に目を奪われる。また、雨の中で行われた神舞小屋での舞のシーンは、両撮影クルーが苦心して撮影していることが想像できる。
千年余り前から続くこの祭も、原発反対運動が起きてからは、開催されない時期もあったという。それを復活させたのは、続いて来たものを決して絶やしてはいけないという誇りと優しさかもしれない。
この2つの映画を観て、多くの人が祝島の人々を自分の隣りに居る人のように感じるのではないだろうか。間違いなく、これは私たちの問題なのだ。
次の「神舞」は、2012年。その時までに、目先の利益ではなく、千年先を見据えた選択をしていけるかが問われている。
『祝の島』は東京と広島で上映中。『ミツバチの羽音と地球の回転』は、全国各地で上映会が決まっている。両映画とも自主上映も募っているので、詳しくは公式サイトへ。
おんの まき
1991年から旅行ガイドブックのライター、情報誌、女性誌、料理専門誌、企業のSPコピー、教育書籍などの編集とライターを経て、2009年からエコロジーオンライン、おひさまスタイルの編集長。環境分野の中でも特に興味のあるテーマは森林の保全と資源利用。趣味は風水研究。
http://www.hanulu.comEOL視点の[特集・連載・レポ・コラム]
-
イオルインターナショナル普通の人の僕らができること世界に届けよう!希望の光【イオルインターナショナル】ウィッキーさんの国際貢献DEイングリッシュ@天王洲 JALビルJカレッジ【9月14日開催】 ご支援宜しくお願いします チャンドラ氏が、エコピープルに登場!
-
里山保全再生ネットワーク日本の里山応援団!週末マーマーズ倶楽部ピザ窯作り、その2 - 里山フォトブログ 週末マーマーズ倶楽部ピザ窯作り、その1 - 里山フォトブログ そば、千葉市の在来種「野呂在来」の播種8月28日 - 里山ネット新聞
-
おひさまスタイルハッピーなライフスタイルに出会えるブログマガジン檜原村報告:祝っていこ~ ローフードランチ♪:ほほえんで いこ〜 ♪ 祝島 3 ー棚田ー:ほほえんで いこ〜 ♪










コメントする