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グリーンビルド

今なお新しい米国の先駆的エコビレッジ「ヴィレッジホームズ」Vol.1

文・写真:箕輪 弥生


人を優先したロード・ネットワーク

 1981 年にカリフォルニア州デイビス市に建設されたエコビレッジ「ヴィレッジホームズ」は、約30年前に開発された環境共生型住宅地だが、ソーラーエネルギーの利用、自動車道路と歩道や自転車専用道路との分離、エディブルランドスケープのコミュニティへの活用など、先駆的な試みを持続させ、今なお注目されているエコビレッジだ。
開発面積68エーカー(27.5ha)の敷地には、個性にあふれたエコハウスが225 戸、住民が集まるコミュニティ施設、レストラン、保育園、公園に加え、8つの果樹園や2つのふどう畑、菜園、コミュニティガーデンなどで構成されている。特に、住民の誰もが利用できる「コモンエリア」が4割も占めることが特長だ。

デイビス市はカリフォルニア大学デイビス校のある学園都市であり、全米一の自転車都市としても知られている。平坦で温暖な気候のため自転車利用がしやすく、市内には自転車専用道路が張り巡らされており、学生のみならず自転車を足として利用するインフラが整っている。もちろん、ヴィレッジホームズとダウンタウンも自転車道路がアクセスしており、住宅地内ではほとんどの人が自転車か徒歩で移動するという、車社会が基本のアメリカでは珍しい場所なのである。
自動車用道路の道幅は6m と狭く、行き止まり(クルドサック)やカーブもたくさんあるので自動車はあまりスピードを上げられないようになっている。逆に自転車専用道路はまっすぐで行き止まりもなく、歩行者専用道路は緑で囲まれ歩くのも楽しい道である。それらが緊密なネットワークを形成し、自動車道よりも短い距離で安全に移動することが出来る。つまり車より人を重視した設計になっているのだ。
もともと、ヴィレッジホームズはニューアーバニズムの理念を示した、「アワニー原則」を策定したマイケル・コルベット氏が発案、設計を行い、アワニー原則を具現化するかたちで作られている。この「アワニー原則」には自動車利用を減らすような道路ネットワークについても言及されている。

eolfocus-villagehomes-544.jpgホームズ内は自転車で移動する人が多い

果樹や菜園に囲まれた「エディブルランドスケープ」

eolfocus-villagehomes-560.jpg果樹に囲まれた公園内のような敷地内の歩道

歩道が自動車道路と分離されているせいか、敷地内は歩いていても楽しい場所だ。敷地内に一歩入るとその緑の濃さ、多様性に驚かされる。そして、それらを良く見るとほとんどが果樹なのである。りんごやザクロがたわわに実った果樹が目につく。敷地内には大きなブドウ畑もいくつか。これらは収穫してワインに加工され、住民に配られるという。さらに、住民が自由に使える菜園もあちらこちらにある。
つまり、住宅地内の景観を緑化するだけでなく、それらは、住民が収穫し食べることができる樹木を中心に構成された「エディブルランドスケープ」となっているのだ。
敷地内の果樹は30種以上。30年経った今は果樹も大きく育ち、ほぼ1年中を通して何かしらの収穫物を口にできるという。

eolfocus-villagehomes-506.JPGふどう畑も数カ所。自宅前にも収穫と日除けを兼ねてぶどう棚を作っている家庭も多い

eolfocus-villagehomes-565.jpgここには、好きな時に新鮮な果物を収穫して食べられる贅沢がある

でも、これらの果樹の手入れなどはどうしているのだろうか。ヴィレッジホームズのマネージャーのKatieさんに聞いてみた。
「8戸の住宅がコミュニティの最小単位として機能しています。それぞれの世帯で管理費として月130ドルを支出。8世帯の中で持ち回りによって代表者を決め、その代表者がコモンエリアの果樹の管理やホームズの運営などにかかわります」
「住民はアーモンド以外の全てを自由に採って食べることができます。アーモンドだけは機械で収穫し、販売されています。その収益も住宅地の管理費を賄っています」
やはり美しく実っている果樹の管理運営も、住民参加のたまもののようだ。23エーカーものグリーンベルトや菜園、ワイン畑などのコモンエリアは、住民の代表が作るアソシエーションが管理や運営をおこなっている。また、農業委員会も住民らが構成し、農作物がどのように管理されるべきか決めているなど、住民による自主的な管理、運営が行われている。

eolfocus-villagehomes-572.jpgヴィレッジホームズ・マネージャーのKatieさん


住民同士の交流がエリアのセキュリティを高める

このような運営が日常的にされることから最小コミュニティの8戸の交流は頻繁に行われ、果樹の収穫シーズンには収穫パーティなどコミュニティイベントも盛んだという。つまり、エディブルランドスケープや菜園といった環境価値が人の交流を生み、それがホームズに住む魅力にもなっている。
「犯罪の発生率も、近隣のネットワークが強固なこともあり他の住宅地に比べても低いですね」とKatieさんが言うように、住民同士の交流はエリアのセキュリティの向上にもつながっているようだ。
また、ホームズの子供たちは、ホームズ内にある託児所や保育園を利用できるほか、プレイグラウンドと呼ばれる公園もある。
何より、コモンスペースで遊ぶ子供達に家の中から多くの視線が向けられるため、子供達にとって安全な環境が作られている。
エディブルな景観が人の交流を生み、それが地域のセキュリティレベルまでアップするという相乗効果は、米国の景気後退後もヴィレッジホームズの資産価値がそれほど急激に落ちないという数字にも表われている。つまり、ハード面だけの工夫だけでなく、人と人との交流や、暮らしを豊かにする共有スペースの創出が、住宅地の価値を作り出していくということが、30年という歳月をかけてこのホームズが物語ってくれているのだ。
次回はヴィレッジホームズの自然エネルギーの利用方法、建築的なデザインポリシーなどについてレポートする。

eolfocus-villagehomes-graph.gif2009年のDavisの犯罪率はカリフォルニア州平均よりも3割近く低い

eolfocus-villagehomes-551.jpg施設内の掲示板には、コミュニティのニュースがいっぱいだ

箕輪 弥生
みのわ やよい

立教大学卒業、1989年よりマーケティングプランナーとして独立。以来、メーカー、流通系のプランニングを中心に、広告・販促・商品企画・イベント企画・情報誌執筆など幅広く参画。
現在は、環境に配慮した商品の開発や企画、環境にかかわるライフスタイルやビジネスについての記事執筆など、暮らしと環境にかかわる仕事に力を入れている。自身も太陽熱と雨水を利用した家に住む。
著書に『LOHASで行こう!』(ソニー・マガジンズ)、『あなたにもできる!環境(エコ)生活のススメ』(飛鳥新社)がある。毎日新聞水と緑の地球環境本部「マイECO」http://mainichi.jp/life/ecology/にも環境記事を連載。

http://gogreen.petit.cc/

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