
編集部員1「じゃ、トリさん、初回のお題はさくらってことで。」
(へっ?)
「ふう〜っ」
編集長が紫の煙を吐く。
(さくらなんてこの時期唐突ですよねえ、編集長なんとかいって下さいよ。もう非常識なんだから、この人)
「いいんじゃない、じゃ、さくらってことで」
(えええーっ、ちょっちょっと待って下さいよ、なんで今この真冬にさくらなんすかあ?)
との強引かつよくわからない打ち合わせでお題目は決定した。(編集長は紫の煙吐きません、ウソです)

イラスト:mattina
サクラ ――― バラ科。春になると日本の国民が狂喜乱舞する木。
いやほんとに冬の間は振り返りもせず忘れ去っているのに、春が近付くとやれ桜前線だとか開花予想だとか飲んで騒いで歌って踊ってと尋常じゃない。
戦時中では、一斉に咲いて散ることから「君たちも潔く散ってくれ、あのサクラのように」といった、時代を操作することにも使われた。
平和な今はもっぱら「花見」である。
さてこのサクラ、都心なんかで咲いているのはソメイヨシノという種類。並木道なんかにたっているのはほとんどこのソメイヨシノだ。園芸種、つまり人が育て植えたもので、ソメイヨシノ自体は自分では生きられない。接ぎ木で増えることから「クローン桜」とよばれているのを、このサクラ好きニッポンのどのくらいの人が知っているだろうか。
その昔、平安時代から江戸時代にかけて人々から愛されたのは、ヤマザクラやシダレザクラなどで、これらはふつうの植物と同じように受粉して増えていく。いわば野生だ。樹齢何百年などの大木はこの類いである。
ソメイヨシノは育ちは早いが病気に弱く、60年〜100年の寿命という。早く育つ、コピーで簡単に増えるソメイヨシノが日本中に植えられ、今の日本の八割がソメイヨシノだそうだ。ソメイヨシノは一度に咲いて壮観だし、名所にすれば観光客がおしよせ、お金もたくさん落としていってくれるから「地方自治体ウハウハこりゃやめられません」現象がおきた。
考えてみれば、ふつうの植物ならほぼ一斉に花が咲くなんておかしいのだ。木によって成長の早さも年もちがうのだから、開花もまちまちで当たり前。
「まあまあ、せやけどクローンでもなんでも春にサクラは似合うし、ソメイヨシノもきれいでええがな、と思いまひょ」と呉服屋の若旦那に説得されて、ううむと唸ってみたものの、が、しかし、先にもふれたが、このソメイヨシノは短命、ということは戦後植えられた多くのソメイヨシノがもうそろそろ老齢なのだ。いっせいに植えたのだからほぼいっせい全滅の可能性もある。
ただでさえ殺伐としたこの世の中、サクラまでなくなったらどうなることか。
どうなることかといっても、ソメイヨシノばかり植えてきて、自然の木を追いやってきたのだから自分達のせいでもある。にしても、花見もなし、「ウサをどこではらしたらええんじゃ」化した人々に寄る暴動が起きてもまた困る。
そこで、日本の治安を守るためにも行政さんにお願いだ。
ひとつ、いまあるソメイヨシノの手入れ、お世話をする人を増やし維持する。
ふたつ、目先のウハウハばかりにとらわれず、いまから長寿のサクラを復活させる準備をしようじゃあありませんか。
最後に花見を愛するみなさんに、じいからの提案。
花見の時、枝をおったり傷をつけたりするではありませぬ。サクラは傷によわいのじゃ。ビニールシートはやめてゴザにすべし。浅く根をはるサクラはビニールがきらいでのう。
花がはよう散ってしまうのでカラオケはやめてアンプラグド。
わかりもうしたかの?
鞍作トリ/プロフィール
「業界新聞記者勤務、のち劇団員、ナノニまたまた業界誌帰還。紆余曲折を繰り返す人生つつうらうら。流れ流れてエコロジ−オンライン、の人物なり」
