07/10/05

ヒデンゼーへの誘い――車のない楽園(その5:最終回)

車のない楽園ヒデンゼー島では、幹線道路を自転車で移動し、残りはひたすら歩きます。こんな単純な行動が、非常に大きな楽しみとして味わうことができるのはなぜでしょうか。やはり車のある生活を考え直さなければならないことを象徴しているような気になりました。
島の中央部には、エリカの咲き乱れるハイデ(荒涼地帯)が広がっていました。ここは島最大の自然保護区です。

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8月に訪れたということもあり、エリカは満開です。日本ではヒースと呼ばれるツツジ科の多様な花々が残されているのをみると、キリスト教徒ではなくても、多いなるものの手による「創造」というイメージが浮かんできます。
さて、多くの人には美しい自然景観や海岸、車のない環境だけでは物足りないようですから、もう2つのお楽しみも紹介します。日本人が旅行に行く際の宿命としてのキーワードは「食」と「お土産」。
まず1つ目の食に関しては、このヒデンゼーではすばらしい魚類の燻製の文化があることに言及しましょう。港や港近くのビストロでは、新鮮な魚を朝から燻製し、燻製したてのホヤホヤ(魚の汁と油が滴るような感じのやつ)をお昼ご飯に頂くという贅沢が味わえます。以下の写真はクロースター港に浮かんでいる古い漁船を改造したビストロで、島では一番おいしい燻製が頂けると評判のお店です。

もちろん、それほど贅を凝らした料理や、日本のペンションのような創作料理が食べられるわけではありません。バケットに玉ねぎとトマト、そしてピクルスを刻んだものを添えて、燻製した魚を載せて、パクつくだけ。レストランでも、それほど特別な料理はありませんでしたが、魚のスープや肉料理など田舎独特の素朴さが味わえました。
そしてもう1つのお楽しみとは・・・うーん、言っていいのかなあ――あんまり大量に日本人ツーリストが押し寄せると困るなあ――ここの海岸ではなんと簡単に琥珀を拾うことができるのです。琥珀ですよ、琥珀!あの宝石の。
北海とバルト海の海底には、それこそ無数の琥珀が沈んでいます。昔ここは広大な森だったからです。2億年前の木の樹脂が、長い年月とともに固化したその宝石は、嵐などによって海底から掘り起こされます。琥珀は海水の比重より軽いか、同じ位です。嵐の後の海岸線には、それこそ無数の琥珀が打ち上げられるというわけです。ドイツ語で燃える石(Bernstein)という意味の琥珀を探しながら(樹脂が固化したものだから当然燃えるのです)、海岸線を当てもなくふらふらさまよい歩く休暇。その他にも特殊な石や化石を見つけることができます。
海岸で苦心して見つけた「琥珀」を夕日にかざすと、ふっとシングルモルト・ウィスキーが飲みたくなる。でも今晩は、サントドルンの甘酸っぱいリキュールを試してみようと考えたのが、今年の夏の休暇の最後の晩でした。

注:それからヒデンゼーに旅行に行かれる、行きたい、行くかも知れないとお考えの方に方に一言。ここは団体旅行なんてもので行く場所じゃありません。それから2、3日で行く場所でもありません。できれば1週間ぐらいは時間を取って、のんびりとそして自然と環境に配慮して散策・旅行・FKKしてくださいね。

(写真は私が集めた琥珀とドンナーカイレと呼ばれる古代のイカの角の化石)

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村上 敦(むらかみ あつし)

1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を独学。...全文へ

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