08/2/23

EU委員会気候保護プランに対する牽制

さて、このブログでは
ドイツ・フライブルクのニュースを随時お伝えしようと思っていたのですが、
日常のあまりの忙しさに
小まめな更新ができていませんねえ。すみません。
ですから、逐次とは言わず、1ヵ月に一度程度は、
EUやドイツ、フライブルク地方において、
新聞や雑誌、テレビなどで報道されて市民の口に上ったニュースの中から、
環境に関連するような出来事を抜粋して、
感想文的なものを日本の皆さまに紹介しようと思います。

でも、このために特別に取材をする暇もなく・・・まあ、
ドイツの環境にまつわる四方山話のつもりで、気楽に読んでいただければ幸いです。
ちなみに、継続して目を通しているニュースのソースは、
主にバーデン新聞(www.badische-zeitung.de/)、フランクフルター・ルントシャウ紙(www.fr-online.de/)、
テレビでは、国営放送のARD局(www.ard.de/)、ZDF局(www.zdf.de/)、
雑誌はフォークス誌(www.focus.de/)、シュピーゲル誌(www.spiegel.de/)とそのオンライン配信などです。
それにドイツ環境省やフライブルク市のホームページ、
広報なども参考にしています。
もちろん環境に関連するような各種の専門誌・情報源なども参考にしていますが、
ここではできるだけ一般的な話題になった事柄を取り上げたいと思います。


1月21日(月)
日本各地で講演を終えて、パリ経由でフランクフルト空港に向う途中のことです。
機内で無料配布されていたDie Welt(ヴェルト誌)を読んでいると、
翌々日の水曜日にが発表しようとしてる気候保護プランに対して、
数多くの牽制球が、とりわけ経済・エネルギー産業寄りの名物政治家から発せられていました。
多くのドイツの政治家も日本の族議員と同様に、
自身の出所に対しては死に物狂いで擁護に出ます。
その様子が良く伺えるので、少しこの記事を紹介しましょう。


まずは、「前」経済・雇用大臣(※) のクレメントさんの発言趣旨です。
彼はドイツ社会民主党(SPD)の国会議員を務めた後、
現在は主にエネルギー・コンツェルンRWE社の理事などを務めています。
ですから新聞は本来は、エネルギー会社の理事と紹介しなければならないのですが、
どうしても前大臣が肩書きになってしまいますよね。彼はこう言っています。


『原子力発電や新式の石炭火力発電の促進を含まないようなエネルギー政策は誤っている。
近々行われるヘッセン州の選挙では、
SPDの州知事候補イプシランティ女史はこういった方向性を強調しているが、
ヘッセン州民は、自身が選ぶこの政治家が掲げている政策は、
ヘッセン州の工業力を損なうものであるとの認識が必要だ』。
けっこう過激な発言ですね。
アル・ゴアの『不都合な真実』にもでてきますが、
アプトン・シンクレアからの引用句をここで紹介:
『もし彼が(そのことを)理解しないために給料をもらっているのだとしたら、
そのことを彼に理解させるのは大変困難である』。
RWE社は、ドイツの電力・ガス事業で大きなシェアを握る4大エネルギーコンツェルンの一つで、
とりわけルール工業地帯を主に活躍しています。
つまり石炭・褐炭は無尽蔵に利用したいばかりの企業とも言えるでしょう。
そこの理事が、自身の出身政党の候補者さえも批判する有様は、
この引用句をまさに体現していますね。


そして「現」経済・技術大臣のグロースさん
(超?保守政党であるキリスト教社会同盟:CSUの政治家)も、もちろん負けていません。
彼はこのEU委員会のプラン、
とりわけ2020年までに全電力中の再生可能エネルギー(自然エネルギー)からの
割合を20%まで拡大する方針に対して、
このような趣旨の発言をしています。
『ドイツにおける電力供給の確実性は著しく脅かされており、
私はブラック・アウトする可能性を非常に深刻に捕らえている』。
つまり原発なしでは、電力の安全供給は確保できないという脅しにも似たコメントです。


日本の皆さんにはあまり知らされていないかもしれませんが、
このグロース大臣はドイツ政界の原発推進の特攻隊長です。
反原発を掲げる緑の党をとくに毛嫌いしていて、
2004年には当時の外務大臣フィッシャーと
環境大臣のトリティン(両名とも緑の党)を
『エコ・スターリニストで、かつてのテロリスト』とジャーナリストに語ったこともある強兵です。
日本の新聞・テレビなどでは往々にして、
「ドイツの脱原発政策はもうすぐ覆される、あるいは覆されるのは確実であとは時間の問題だ」
といったトーンで報道がなされていますが、
そのソースは、彼と彼周辺の政治家から発せられている強声の場合が多いですね。
ですから、ドイツに住んでいて、
政治家を見聞きしている感覚でいうと全くナンセンスな報道に聞こえてきます。
ただし、まあ昔の小泉さんが郵政事業の民営化を唱えていたときも、
誰もそれほど本気にしていなかったようですから(私も含めて)、
政治の世界で何が起きるのかは誰も確実には予測はできませんが・・・

※ 当時は経済省と雇用労働省が統合され、
彼はスーパー大臣と呼ばれていましたが、現在はこの2省は再び分割されました。

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村上 敦(むらかみ あつし)

1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を独学。...全文へ