08/3/23

ヒートポンプのフィールドテスト

2月4日(月)
インターネットを検索してみると、ヒートポンプのフィールドテストの結果が掲載されていました。
ヒートポンプとは何かと言えば、エコキュートや冷蔵庫、
エアコンといえば日本では分かりやすいでしょうか。
つまり、電気を利用して冷却したり、
大気や地熱などの温度差を利用して投入する
電気エネルギー以上の熱エネルギー取り出す装置のことです。
詳しい仕組みはここでは説明しません。
このヒートポンプは日本では主にエアコンか給湯に利用されていますが、
欧州では主に暖房(セントラルヒーティング)に利用されています。
とりわけ最近では床暖房への利用が多いですね。
理由は床暖房の場合、それほど循環水の温度を上げる必要がなく、
効率が高いと言われているからです。

さて、このフィールドテストとは、
フライブルク市近郊にあるラー市のアジェンダ21のエネルギー作業グループが、
実際に稼動している家庭設置型のヒートポンプを調査しました。
これは公募した市内100件のヒートポンプのうち、
地理的・仕組み的・規模的な条件がうまく混合されるような配慮の下で33件の異なるメーカー、
異なるタイプのヒートポンプ暖房を選び出し、通常に人が住んでいる条件で、
2年間の稼動を調査したものです。
最終的な結果は、
ヒートポンプから得られた熱エネルギー量÷投入した電気量=COPで比較しています。
日本と異なる点は、ほとんどのヒートポンプが冬は外気よりも温度が高い地下の熱
(5~20メートル前後が一般的です)、
あるいは温度が年中一定している地下水の熱を利用している事です。
このことで大気熱を利用するヒートポンプよりも効率が高くなりますから、
日本の給湯用のヒートポンプ(エコキュートなど)とは直接効果は比較できません。
また、深夜電力の利用を想定した商品ではなく、
熱が必要な時に稼動することもドイツの場合の特徴です。

さて、ここで何が言いたいのかというと、
COPは少なくとも3以上でなければヒートポンプは
温暖化防止にはあまり役に立たないということです
(原子力発電をどう捕らえるのかによって、見方はここでは大きく異なります)。
というのは、電気を1作るのに、
日本でもドイツでもおよそ3の一次エネルギー(化石燃料/ウラン)を必要とするからです。
電気というものは石油やガスを燃焼させるよりも
3倍高価で貴重だと理解してもらえると分かりやすいですね。
ですから、当然ヒートポンプのメーカーや設置業者は、
機械の性能をCOP=4とか、あるいは最近では5を超えると謳って出荷しています。
しかし、あくまでこれは研究室での試験成績で、実際の家庭で動かしてみると、
ホントのところはどうなの?という疑問が常にこのヒートポンプを巡っては議論されているわけです。
車の燃費を巡る議論と似ていますね。

ということで、専門家を含むアジェンダ市民グループは立ち上がり、
フィールドテストを敢行したのです。
その結果は、やっぱりメーカーや取り付けの
工務店が主張するほどのCOPは得られていませんでした。
ひどいものではCOP=1.9なんてものもあったそうですが、
平均的なところでは2.8~3.4といったところでしょうか。
もちろん4.0を超えている優等生もありました。

タイプや仕組み、規模や設置方法、使用条件がそれぞれ異なるため、
ここですべての平均値を示しても意味がないのですが、
このフィールドテストの結果では、まだまだ技術革新や取り付け時や設置時、
設計時の配慮やノウハウの蓄積が必要だということが書いてあります。
もちろんこのフィールドテストの結果だけで、全体の結論を導くこともできません。
ただし、今のところ、そしておそらくこの先も、ヒートポンプにお金をかけるよりも前に、
家屋の断熱やパッシブソーラー建築、
ソーラー温水器にお金をかける方がコスト対効果の点で賢明だろうというのが私の意見です。

日本でも数多くのフィールドテストが行われ、
本当に気候温暖化防止に貢献するものなのかどうか、
数多くの機関に調査して欲しいですね。
そして、もし本当に温暖化防止や資源の消費を回避する手段として認められるのであれば、
それに見合った国家的なエネルギー供給計画を議論して欲しいと願います。
だって、みんなが、社会で一斉に深夜電力に依存するようになれば、
そりゃ巷で噂され始めたように深夜電力も足りなくなるでしょうし、値段も高くもなります。
第一、発電所が足りなくなるじゃないですか。

ちなみにラー市のアジェンダ21エネルギー作業グループの行った
詳しいフィールドテストの結果は以下のアドレスからダウンロード可能です(ドイツ語):
http://www.agenda-energie-lahr.de/leistungwaermepumpen.html

PS.この後、3月6日にバーデン新聞で掲載された読者からの投書コーナーでは、
このヒートポンプの実験結果に疑問を持った方の投書が載せられていました。
自身でヒートポンプを設置した施主の方で、COPは3を優に超えているという主張です。
ヒートポンプを巡っては、なかなかはっきりとした見解がないという状況は
ドイツも日本も同じようですね。
近年の環境保護(地球にやさしい)は複雑化しているので、
ケースによって一々検討しなければ意味がないというのをこの場合は教訓にしておきましょう。

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村上 敦(むらかみ あつし)

1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を独学。...全文へ