08/5/18

人口ピラミッドと道路財源

2月29日(金)

2007年の出産統計が出てきました。
ドイツは長年日本と同じように少子化に苦しんできたのですが、
ようやく少し改善されて合計特殊出産率が1.4を超えました! 
持続可能な社会を維持するためにはこの数字が2.1必要だと言われていますから、
まだまだ低いレベルではありますが、
まあ上昇傾向が続いているようですから、今後のドイツ人のお仕事の頑張りに期待しましょうか。


ちなみに日本は2005年が1.26、
2006年は団塊ジュニアの出産期のピークということで1.32、
そして2007年もなんとか1.32を維持したということです
(ウィキペディアでざっと見ただけなので正確かどうかは分かりません)。

さて、このテーマを取り扱ったには理由があります。
それは、持続可能な社会について少し考えてみたいからです。
今の日本や韓国、欧州ではこうした低調な出産率が続いていますから、
人口の減少傾向がすでに現れてきたり、
より一層の少子化・高齢化が顕著になってきています。
ですから、毎年毎年、地方自治体や国の予算編成は、
社会福祉コストの増大で厳しい方向に向っていますし、
この傾向は益々著しくなることはあっても、穏やかになる方向ではありません。

ドイツの地方自治体の首長と会って、
環境保護やまちづくりについてのヒアリングをすると、
彼らはさっとノートパソコンからその自治体の人口動態の
人口ピラミッドの変化図を見せてくれて、それを契機にプレゼンテーションが始まったりします。
日本では考えられないことですが、こちらの首長は、
どこかのベンチャー企業の若社長という感じで、
首長自身が自治体の「経営」について熱心に語ってくれるのです。
つまり、自治体や国が何らかの政策を行おうとするとき、
この人口ピラミッドが鍵を握っているということです。

税収入から支出までの大きな部分が、
年々変化する人口ピラミッドの構成図によって固定されてしまうわけですから、
当然と言えば当然です。
つまり首長や政治の力で短期的に何とかできるのは、
この人口ピラミッドによってフィックスされた分に加えて、
景気というこれも首長や議会などではほとんどどうにもならない分を
差し引いた残りの部分だけに交渉できる余地があるというわけです。


とりわけ日本の地方自治体の首長や議会には、
そして縦割り官僚制の日本の政治の場面では、
こうした根本的な議論の部分が欠落していると感じられます。
例えば、中期的な視点で考えるのであれば、
日本で現在行われている道路財源を巡る議論は全くのナンセンスです。
だって、もう数十年、つまりその道路が補助金の恩恵で計画され、
建設されたあとに、その道路が改修の必要性が出てきたときに、
一体どれだけの道路を改修・維持することができるのか、
そのための財源は本当にあるのかどうかという大事な視点が欠けているからです。
私は戦後の復興が10年早かったことから、
こうした社会整備のインフラの状況はドイツが日本の10年先を先行していると感じています。

すでにフライブルク市をはじめとするいくつかの自治体では、
私の知る限りでもいくつかの道路と橋が、修理・改修することができなくて
通行止めになっています。
もちろん、こうした道路や橋は、ほとんど車の通行がないことから止められたものではありますが、
これは、そうしたインフラ維持が不可能になってきた前兆だと思うのです。
そう、持続可能な社会を求めるのであれば、
道路の新設を云々議論する前に、30年先ぐらいまでは現状の維持が可能かどうか、
人口ピラミッドから導かれる財源の具合で見てみる必要があるのではないでしょうか。
まあ、現在の石油価格の高騰を見ていると、ガソリンが高くなりすぎて、
ほとんどの市民はその頃には車を利用していないので、どうでもよいのかも知れませんが・・・

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村上 敦(むらかみ あつし)

1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を独学。...全文へ