08/10/24

温暖化対策と金融不安

ここのところちょっと忙しく、更新が止ってしまっていました。理由は、ドイツの気候温暖化に関するレポートを仕上げたこと(http://www.eolways.jp/book/germanypackage/)、そして11月に帰国して全国各地で講演する準備に追われていたことです。

講演スケジュールや内容については>>
http://murakamiatsushi.de/article_013.html
http://www.eco-online.org/info/2008/10/24-153502.php


9月16日のブログでもお伝えしましたが、ドイツは今年の初夏に画期的な気候温暖化パッケージ(に含まれる法案の数々)を決議しました。それを、できるだけ早く日本に紹介しようというのが、今回の帰国講演の趣旨なわけです。

ただし、この8月までEUでも、ドイツでも大いに盛り上がっていた気候温暖化対策ですが、金融不安が訪れ、株価が暴落してみると、状況は変化してきています。とりわけ排出量取引に関して未定だった事項が、一気にトーンダウンしていますね。EUの気候温暖化対策の目標値を2020年までに30%削減だと主張し、それが可能となるならばドイツは2020年までに40%削減するんだと世論を牽引して来たドイツのメルケル首相も、10月に入ると自動車ロビーの代理人みたいな発言や主張を繰り返すようになっています。ま、これがドイツ人ですね。アウトバーンの国ですから。

キャップ&トレードの排出量取引であっても、結局はそのキャップの締め具合は、その時々の政治的な意志で形成されます。景気が悪くなると「減税を!」ということと全く同じパターンで、このキャップについても「手加減を!」と産業界は大合唱するわけです。さらなる景気の悪化を恐れる時の政治家たちは、こうした状況では産業界の望む通りついつい手加減してしまうんですね。まあ、この手加減による経済効果は、後になっても明確にはなかなかならないとは思うのですが。こればっかりは同じ状態の地球が2つあって、それぞれで実験できないとだめですね。

ですから、気候温暖化対策を考える上では、排出量取引とは星の数ほどある手法の中のただの1つでしかないと最初から構えておく必要があるでしょう。したがって、これによってあまり多くを期待するのは間違っているような気がします。すでにノウハウと経験のあるEUであっても、排出量取引で具体的に温室効果ガスを削減できたとは結論づけることができない状況なのです。まあ、何もやらずに野放しにするよりは、ある程度のルールづけをやった方が良いでしょう。ただ、日本でも試験的に開始されていますが、これで気候温暖化を阻止することができる、対策の柱になると理解するのは危険です。世界中のほとんどの国で所得税や事業税、はたまた消費税が徴収されているように、ほとんどの国で排出量取引や規制を行うことは必要ですが、これが切り札になるとは考えにくいのです。

なんせ、国の会計が大赤字を抱えていても、収支が釣りあう見込みのない状況であっても、不況となれば減税を行うのが政治であり、我われの住む世界です。ましてや産業が自己目標としてキャップを定める日本式の排出量取引では、まあ、企業のCSR活動の一貫という程度に構えていることが肝要でしょう。つまり本筋ではありません。

それでは、何が本筋となるのでしょうか? 私はそれは、すでに世界中の新エネルギー電力の分野で絶大なる効果を上げている「フィードインタリフ」のような市場ルールを定めることだと思っています。環境保護にも、経済にも、そして市民にとっても中期的な視点でWIN&WINになるような市場の枠組み、つまり世界規模で少なくとも中期的な視野に立った市場のルールを定めることでしか、気候温暖化対策は進まないことでしょう。その際には経済的なインセンティブ(正も負も)が導入されないことにはいけません。つまり、税金方式の政治的に目標値を定めるという枠組みではなく(これは日本の新エネのケース、RPS法でも同じ姿ですよね。電力事業業界と経済産業省が過小な目標値を設定して意味のないものになっています)、付加価値として物やサービスの料金にうまく環境への配慮・投資が上乗せされる市場の仕組みづくりが必要です。

従ってこの金融不安の最中であっても、すでに6月にフィードインタリフを2009年から改正することに決めているドイツでは、またその他の法改正も決議されていますから、新エネ・省エネ・エネルギーの高効率化の分野では安心していられます。まあ、大型車を作るメーカーばかりのドイツでは、車や交通に関してはご愛嬌ということで。

さて、これまでのブログでは、こちらの新聞記事などホットな話題を、その話題が少し結論づいた1ヶ月程度の遅れで報告、そしてコメントしていましたが、更新を長々と怠った私。すでに机の横に山になっている新聞記事のスクラップ記事の古い日付と現在の日付の開きが4ヶ月にもなってしまっています。やれやれ・・・見ないふりをしよう。今後は日時がバーンと飛んでしまうきらいもありますが、次回からも引き続きこのブログを楽しんでいただければと思います。

環境ジャーナリスト 村上 敦
www.murakamiatsushi.de

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村上 敦(むらかみ あつし)

1971年生まれ。岐阜高専土木工学課を卒業後、ゼネコンに入社。東京湾埋立工事 などにおいての環境破壊の惨状に疑問を感じ、ドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク大学独文科に在籍しつつ、ドイツの環境政治・行政を独学。...全文へ

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