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Transrapid

3月26日(水)

昨日、ドイツにおいてはTransrapid、つまりリニアモーターカーのプロジェクトが正式に凍結されることが建設交通省から発表されました。いやー、いろいろシュトイバー(バイエルン州の元知事で、CSU党の党首であった人物)が頑張ったわけですが、やっぱり採算の取れるような代物ではなかったわけですね。
ドイツのリニアはTransrapidという方式で、ご存知のように世界的なコンツェルン「シーメンス:Siemens」が作成しており、2006年の中国への売り込みでは日本勢を除して、ドイツ側・シーメンス側が勝利したわけです。ただし、中国ですら計画通りにこのリニア路線は延長されるわけではなく、シーメンスの技術はほぼ完全に盗られたそうですから(中国で路線建設に携った私の知人の技術者談)、ほとぼりがさめる頃には、中国社製のリニアが中国では設置されることでしょう(これは、まあ単なる予想で、根拠はあまりありませんが)。
そうそう、ところでドイツ国内のリニア整備についてです。シーメンスはバイエルン州の企業ですから、シュトイバー(政治力が強く、一時期はメルケル(CDU党)と首相候補を争い、シュレーダー(SPD党)に総選挙で辛くも負けたというポジション)にとってみれば何としても成功させたいプロジェクトであり、彼の州知事+CSU党の党首引退時点までは何とか面目を保ったわけですが・・・:

  1. 通常の鉄道(ドイツでは超特急ICE、フランスではTGV、日本では新幹線)がここまで高速化し、国内の飛行場、空の便ともより一層の拡大が続く中で、本当にリニアという超高価な技術が社会に必要かどうかという声、疑問
  2. ドイツの知識層市民は、シュトイバーのリニアにこだわった政策を単なるロビー活動とみなし、ほぼ馬鹿にしている/相手にしていない(2007年にはシュトイバーの言い間違いを含めた間抜けなリニア推進演説があり、その直後から、彼の政治力は退任に向けて急激に下がっていったわけです)
  3. 強力な政治力シュトイバーのバイエルン州知事の退任(任期切れによる)とCSU党の後継者の指導力不足(シュトイバーほど人気のあるバイエルンの政治家は、当分出てこないでしょう)
  4. 上昇を続ける鉄鋼、セメント価格により、当初の甘い見積もりが、ますます逼迫し、天文学的に建設費や補助金必要額は膨れ上がっている。税金の支出、無駄遣いという側面が顕著になる→これが今回の凍結/中止の直接的なトリガー。
  5. そして2006年9月に23名(!)の死者を出した試験用区間でのリニア衝突事故

などなどと、数え上げればきりがないほど中止を決めた理由が浮かび上がってきますし、今の時点で凍結を決めるのはやや遅すぎた感もあります。国民感情的には、誰もこうしたプレステージ・プロジェクトに夢を膨らませるような時代では、もはやなくなっているわけです。
しかし、それでもこの時点で中止が決められたことに対して、2大政党制というのはありがたいものだとつくづく感じています。現在のドイツの政権は大連立となっていますので変則的ですが、建設交通省の大臣はSPD党のティーフェンゼーです。SPD党と緑の党は、このリニア建設には最初から反対でしたから(バイエルン州では両党は万年野党という側面もあります)、こうした理性ある決断もつきやすかったのでしょう。

というところで、同時進行で、徳山ダムの完成のニュースがありました。私は岐阜県高山市の出身であることから、小学生の頃にはこの『徳山村消滅事件』に関しては、いろいろなニュースや映画、演劇、反対運動などがあったことを記憶しています。そのダムのいよいよの完成です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%B3%E5%B1%B1%E3%83%80%E3%83%A0


私は、このテーマに詳しくはありませんから、このダムの必要性が今現在でもどれぐらいあるのか?、費用対効果の程はどの程度か?、ということについては、よく知りません。ただし、私はもともと土木技術者であり、ゼネコンに努めていたことから、日本においてはこうした箱物の必要性は、官僚が(いわゆるお上が)必要だと見なすと、必要だという結果になるような数字のやりくりが存在することを知っています(省庁にくっついていて設計や計算を行うコンサルというものの中立性は、ほぼゼロです→これは周知の事実であるが、関係者は見て見ないふりをしています。まあ、談合と同じようなものでしょうか)。
ですから日本にも中道左派と保守の2大政党という政治システムが機能していたら、もっと早い段階で、なんらかの国民的な議論があったことは確実でしょう――完成後の諦めの報道ではなくて。ただし、そうした政治制度を形作れないこと自体が、日本国民の民度だと言ってしまうと、それで話は終わりになります。
一方、日本でのリニア構想というと、JR東海+保守政党+経済界は、中央新幹線と呼ばれる東京-名古屋間を2025年までに建設する意向です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A

総工費が最大10兆円(エネルギーや原料の高騰で軽くそれ以上の数字になるでしょう)ともいわれる巨大プロジェクト。税金と公共交通の運賃という公共性の高い料金収入によってまかなわれる予定の建設計画ですが、本当のところはどれだけの必要性があるのでしょうか? 私は人の移動の需要拡大が見込まれるのであれば、新幹線の軌道を部分的にでも増やし、便数を増やす方向で調整した方が、よいと素人考えで思うわけです。いまでも新幹線は充分に飛ぶほど速いわけですからねえ――「のぞみ」に羽根つけたら飛びますよ、絶対に。

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環境先進国ドイツから最新のエコ情報を発信!

村上 敦
村上 敦
むらかみ あつし

ドイツ在住の日本人環境コンサルタント。理系出身
日本でゼネコン勤務を経て、環境問題を意識し、ドイツ・フライブルクへ留学
フライブルク地方市役所・建設局に勤務の後、フリーライターとしてドイツの環境施策を日本に紹介
南ドイツの自治体や環境関連の専門家、研究所、NPOなどとのネットワークも厚い

2002年からは、記事やコラム、本の執筆、環境視察のコーディネート、環境関連の調査・報告書の作成、通訳・翻訳、講演活動を続ける

専門分野:
1.環境に配慮した自治体の土地利用計画、交通計画、住宅地開発計画
2.自治体レベルのエネルギー政策、気候温暖化対策

http://www.murakamiatsushi.net

オフィシャルサイト

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