『Stromluecke』
3月16日(日)
ドイツの電力業界では、新しいキャンペーンがはられるようになってきていると、過去のコラムで触れました。そのキャンペーンとは、その名も『Stromluecke』。PowerGabとでも英語になら訳せば良いのかな?『電力の隙間』という意味です。
これは原子力発電所の閉鎖が順次はじまり、石炭火力の増設もままならず、温暖化の影響で夏はますます暑くなり、雨も降らず、このため夏場に河川から冷却水の取得が難しくなり・・・といった発電事業者の悲鳴が誇張されて噴出してきたもので、ドイツ4大電力事業者のうちの一つ、REWの経営者Grossmannが、声高に唱えたことを発端に、いろいろなメディアでこの問題が取り挙げられるようになりました。
さて、ドイツは、そしてヨーロッパの電力供給は、本当に途切れるようになるのか? 連邦出資のコンサルタント企業、ドイツエネルギーエージェント(Dena)の所長Kohlerのコメントも『今後予測されている電力需要の上昇と、今常識で考えられる電力供給サイドのキャパシティの増加との2つを考え合わせると、ネガティブな絵になってしまう』と悲観的ですが、私はそのようには思いません。
その一番の理由は、これまでもドイツの風力発電、バイオガス発電、太陽光発電のケースでは、いずれも事前の予測を上回るスピードで設置が進められてきている事実、さらに現在の化石燃料の高騰とそれに続くエネルギー価格の高騰も、これまでの予測をすべて裏切るほどのスピードで上昇しているという事実があるからです。つまり、これまでに経済省や電力業界が予測してきた数字は、まるであてにならないという事実によるものです。
こうした将来予測の数字は、いろいろな彩色がなされてはいますが、一口でいうと、これまでの経験値をそのまま感応的に延長することしかできていません。ですから、突然、現在のように原油価格が高騰したり、風力発電のコストが技術革新によって予想以上に低下したり、政治的な意志で、ソーラー電力の買取り価格が上昇したりすると、いかようにもこの数字は変化するのです。
こうした事象をうまく説明しているものに、日本の市民エネ調のプレゼンテーションがあります。予測とシナリオの違いがこれを読めば、おおよそ理解できるので、皆さんも是非、目を通してみてください。
http://www.isep.or.jp/shimin-enecho/presen_pdf/0801_presen.pdf
ドイツの電力事情においても、「自然電力の発展速度」、「原子力発電の撤退の速度」、そして「消費電力の上昇の程度」など、予測とシナリオを混ぜて語られる場合が多いですね。また、こうした各種の予測やシナリオをどのように組み合わせるかによっても、電力供給の隙間が開くのか開かないのかは変化してしまいます。どちらにしても、ここ5年間は、これまでにないほどの電力をドイツは国外に輸出していますし、2008年は新たに輸出量の新記録が達成される見通しですから、すぐには電力危機は起こらないというのが一般的な見方です。それではなぜ、電力危機を声高に大手の電力事業者は叫んでいるのでしょうか。推測でしか分からないわけですが、この理由は、①予定通りに原発撤退のロードマップを進展させたくない、②排出権取引の強化と中国の経済成長の影響で石炭/褐炭火力発電所の建設コストが急騰しているなどの理由により予定通りに発電所建設が進まないため、③EUにおける取り決めにより電力系統の事業と発電事業を分離しなければならなくなったため、④予想以上に自然電力の成長スピードが速まったため、などなど考えられますが、まあ、取り急ぎのところ①と②が該当するとみて間違いないでしょう。
市民エネ調のプレゼンにもありますが、「どのような未来を選ぶのか」の判断は、民主主義的な議論によって決まるべき性格のものであって、電力事業者たちのソロバンで決めることは許されないことを見落としている、無視している発言がドイツであっても多いんです。今年の夏も、2003年のように日照り+水不足となり、冷却水の確保が充分にできないと、また、いろいろなところから、いろいろな立場としての声が聞こえてきそうです。こんなところに注意して、ドイツメディアの声を紹介してゆきますから、今年の7月前後は楽しみにしていてくださいね。
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むらかみ あつし
ドイツ在住の日本人環境コンサルタント。理系出身
日本でゼネコン勤務を経て、環境問題を意識し、ドイツ・フライブルクへ留学
フライブルク地方市役所・建設局に勤務の後、フリーライターとしてドイツの環境施策を日本に紹介
南ドイツの自治体や環境関連の専門家、研究所、NPOなどとのネットワークも厚い
2002年からは、記事やコラム、本の執筆、環境視察のコーディネート、環境関連の調査・報告書の作成、通訳・翻訳、講演活動を続ける
専門分野:
1.環境に配慮した自治体の土地利用計画、交通計画、住宅地開発計画
2.自治体レベルのエネルギー政策、気候温暖化対策
オフィシャルサイト
www.murakamiatsushi.deフライブルクから地球環境を考える
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