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「ソーラーシティ・フライブルク」


自動車専用のトンネル上部に設けられたPV市民電力発電所

3月26日(水)
「ソーラーシティ・フライブルク」。この称号は2年前までは、誰にもはばかれることなく、大きな声で発することができました。ただし、現在は小さな声でしか言えないような状況になってしまっています。
まずは、PVと呼ばれる太陽光発電、そしてソーラー温水器(コレクター)の設置量を見てみましょう。
ドイツでは、ドイツ環境援助というNPO、それからSolarThemenというソーラー専門雑誌、さらにドイツ環境基金の援助によって、PVとソーラー・コレクターの設置量を自治体単位で集計し、規模や種類に応じてポイントに換算、住民1人当たりのポイントで比較し、競い合う「ソーラー・ブンデスリーガ」なるものが存在します。
http://www.solarbundesliga.de/?content=grossstaedte


2003年、2004年、2005年、2006年と人口10万人以上の都市部門でソーラー首都の座に輝いたフライブルク市は、れっきとしたソーラー首都と呼べるのでしょうが、2007年以降はぱっとしません。その他の都市や自治体で大型のPVプロジェクトが連発されていますが、最近のフライブルク市ではソーラーの大型プロジェクトは生まれていません。現在まではPVの設置量が住民1人当たり49.2Wピーク出力と高い水準を保っていますが(市内合計のPVピーク出力で約10MW)、現状のフライブルク市では、これからの将来に繋がるプロジェクトがあまり準備されていないのです。
今日の地元新聞Badische Zeitungでも、市民団体による自動車専用トンネルの上にある巨大なPV市民発電所の拡張案が、近隣住民の賛成が得られず、廃止になったというニュースを報道しています。緑の党のザロモン市長は、政治的に積極的にこの問題に仲介しなかったことから、自然エネルギー推進派の市民から批判を受けています(個人情報保護の観点から、具体的にはどの近隣市民がこのプロジェクトに反対していたのかを市民団体は知ることができず、当然のことながら反対派、懐疑派の人びととコンタクトを取ることも、交渉することもできませんでした。市長と行政は、このプロジェクトの反対者/懐疑者に対してソーラー推進の理解を請う手紙を1通送っただけとされています。説明会を行うなどして、もう少し交渉の余地があったのではないかというのが、大方のフライブルク市民の意見でしょう)。

写真:自動車専用のトンネル上部に設けられたPV市民電力発電所。ここでは現在年間40万kWhのソーラー電力が作られており、この規模は本来1.5倍以上拡張されるはずでした。
ということで、まずは、フライブルク市のソーラー設置の発展動向に黄色信号が灯っています。現在のフライブルク市は過去の遺産で食べている状態なのです。
さらに、ソーラーを経済的な一大ファクターにするという構想も、進展がないまま、下降線を辿っています。2004年にフライブルク市議会は、この地方におけるすでに存在するソーラー関連の経済的なファクターについて(企業、研究所、NPO、市民など)、経済的な観点から分析を行い、それを強化する戦略を練りました。しかし、ソーラー、とりわけPV産業が急激に拡大する中で、ドイツの国としては旧東独の失業率が高い地域で、ソーラー産業を景気の起爆剤とする旨の各種の優遇措置が行われました。自治体という小さな規模では、思うようにそうした思い切った措置が取れず(財政赤字の影響ももちろんあります)、フライブルク市のあるバーデン・ヴュルテムベルク州は、全くこの動きを支持してこなかったため、現在のソーラー産業は、完全に旧東独が世界の中心地になり、フライブルク市は時代の波に取り残されました。

http://www.invest-in-germany.com/uploads/media/PV_Industry_Overview_Spring_2008.pdf
http://www.invest-in-germany.com/uploads/media/Industry_Overview_Photovoltaic.pdf


さらに、2007年まではヨーロッパ最大のソーラーメッセ「InterSolar」がフライブルク市で開催されてましたが、ソーラー産業の規模が膨らんだことから、より会場の大きなミュンヘン市に今年からその会場が移されています。
http://www.intersolar.de/index.php?id=intersolar&no_cache=1&L=1

現在のソーラー産業/ソーラー市場は、急激に拡大中の事象であるだけに、数年で、一瞬にしてこれまでの常識が覆されてしまうわけです。フライブルク市も、数年間にわたってソーラー王座という椅子に張り付いていた重い腰を、そろそろ上げるときが来たようです。
そうそう、この教訓、事例は、何もフライブルク市だけではなく、そのまま、ずばり日本にも当てはまります。2007年には、2005年末までのデータを下敷きにして『なぜ、日本が太陽光発電で世界一になれたのか』という書籍がNEDOから出版されています。
http://www.nedo.go.jp/informations/other/190619_1/190619_1.html

現在は西暦2008年であり、本の執筆時のデータとは3年の時差があります。最新の世界におけるソーラー事情をよく知る人には、すでにこのタイトルは非常に恥ずかしいモノに響きます。

  • 参考までに2007年度のPVセル生産量(企業別):
  • 世界1位:Q-Cells(ドイツ)389.2MW
  • 参考までに2007年度のPVモジュール/パネル生産量(企業別):
  • 世界1位:Suntech(中国)364.0MW
  • 参考までに2007年度のPVセルの生産量(国別):
  • 世界1位:中国(1200.6MW)
  • 参考までに2008年末までに計画されているPVセル生産キャパシティ(企業別):
  • 世界1位:Suntech(中国)1000MW
  • 参考までに2008年度のPVセル生産量の予測(企業別):
  • 世界1位:Q-Cells(ドイツ)590MW
  • 参考までに、2007年までのPV設置量(国別):
  • 累計・単年ともに世界1位:ドイツ
  • 参考までに、2007年までのソーラーコレクター(温水器)生産・設置量(国別):
  • 累計・単年ともに世界1位:中国

はい、以上が『なぜ、日本が太陽光発電で世界一の座から滑り落ちたのか』を表す事実です。2008年にはすでに過去の栄光となっているんですね。こうした急激な市場/産業拡大を続けている業界では、1年で世界シェアが変わってきますし、ドイツや中国の場合のように、『フィードインタリフ』という法律1つで社会が一気に変わってしまうことを、よく覚えておきましょう。それからシャープのCMなんかも今年に入っては表現がソフトになっているはずです(世界No.1では、もはやないわけですから。あっ、でも累計の生産量ではあと2年間ほどは世界1位かな?)。
ちなみにここで紹介したPVの数字は、世界で最も高度な情報網を抱えるソーラー専門誌『Photon』の2008年3月調べ/速報値です。ドイツ語版が最も内容が濃いのですが(専門家が揃っていますので)、英語版も日本で入手できますので、ご興味のある方は以下のWEBサイトからどうぞ:
http://www.photon-magazine.com/

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環境先進国ドイツから最新のエコ情報を発信!

村上 敦
村上 敦
むらかみ あつし

ドイツ在住の日本人環境コンサルタント。理系出身
日本でゼネコン勤務を経て、環境問題を意識し、ドイツ・フライブルクへ留学
フライブルク地方市役所・建設局に勤務の後、フリーライターとしてドイツの環境施策を日本に紹介
南ドイツの自治体や環境関連の専門家、研究所、NPOなどとのネットワークも厚い

2002年からは、記事やコラム、本の執筆、環境視察のコーディネート、環境関連の調査・報告書の作成、通訳・翻訳、講演活動を続ける

専門分野:
1.環境に配慮した自治体の土地利用計画、交通計画、住宅地開発計画
2.自治体レベルのエネルギー政策、気候温暖化対策

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