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ドイツにおけるバーチャル・ウォーター(仮想水)

WWFがはじめて本格的なドイツのウォーター・フットプリントを調査し、この度公表されました。

http://www.wwf.de/fileadmin/fm-wwf/pdf_neu/wwf_studie_wasserfussabdruck.pdf

水道の蛇口から出てくる水の消費量は、家庭でも、産業用でも減少の一途を遂げている優等生のドイツですが、グローバル化、社会の嗜好の多様化でヴァーチャル・ウォーターと呼ばれる水のフットプリントは、膨大で、著しく増加しているため、緊急な対策が必要であると調査は警告を発しています。

具体的な数字を見てみましょう。ドイツ国民1人あたり・1日あたりの家庭用の上水道の消費量は、1991年の144リットルから2007年には 124リットルとかなりの減少傾向にあります。日本の場合、家庭用の生活用水としての上水道の消費量は305リットル/日・人(2006年度)とドイツの 2.5倍であり圧倒的です。シャワーーではなく、風呂に入るなど生活習慣の違いもあるのでしょうが、近年はそれほど大きな減少傾向になく、停滞に留まっているのが気にかかります。

http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/hakusyo/H21/index.html

ただし、こうした家庭用の上水道の消費量は、全体の水資源の消費量から見ると、わずかな割合でしかありません。とりわけ私たちが口にしている食品を作り出すために必要な農業用の水の量は膨大です(全体の74%を占める)。WWFのこの調査によるとドイツ人が毎日消費しているコーヒー、紅茶、パン、木綿、大豆、肉など農作物の生産に必要な水は、1人およそ3,800リットルと、上水道の消費量124リットルを凌駕していることが分かります。このうち、ドイツ国内で生産され、国内の水でまかなわれているのは41.3%で、残りはブラジル、象牙海岸、ガーナ、トルコ、スペインといった農作物の生産国(であると同時に水資源問題が顕著な国々)からの輸入に頼っています。

WWFの調査では、ドイツ人のウォーター・フットプリントの総量は(工業製品用も含めて)、年間1,595億立方メートルであり、1人あたり毎日 5,288リットルの水資源を消費して生活している計算になります。ここまで精密な調査は、日本においては見当たらないので直接的な比較はできませんが、世界各国のウォーター・フットプリントを概略で計算している調査などによると、日本もドイツも、1人あたりの家庭用+農作物用の水の消費量の総量ではそれほど差異がありません(工業製品用はドイツが日本のそれを上回っていますが、産業構造が異なるので、単純な比較は出来ません)。ですから、生活者レベルでは、日本でもほぼ同じ量の水消費が行われていると想定すれば、大きな間違いはないでしょう。

ドイツ人の場合、とりわけ農業作物用の部分で大量の水を消費しているのが、コーヒーとチョコレート(カカオ)です。その他、大勢を占めるものとして木綿、大豆、植物油や肉がありますが、これはおそらくどこの国も同じでしょう。

このドイツ特有の消費物質、カカオとコーヒー豆。これはこちらで生活していると、その消費の勢いを実感できます。私見で余談になりますが、ドイツ人の食生活は、それほど脂っこいわけでもなく、旅行者の方が圧倒される外食は別にして(外食を日常的には普通行いません)、通常の家庭での食事は質素です。しかし、体の大きな人が多いのは(とりわけ横に)、完全にケーキや甘いものの採り過ぎによるものだと感じています。

ブラジル、象牙海岸、ガーナ、ナイジェリアからのコーヒーとチョコレート、トルコからの木綿とナッツ類、そして輸入の豚肉製品、こんなところに少し気を使えば、かなりの水資源消費を抑えられそうです。コーヒーを飲みながらこのブログを書いている私も以後気をつけようと思います。

注:厳密には、「ヴァーチャル・ウォーター」と「ウォーター・フットプリント」は、同一の結果を示すものではありませんが、本記事中は、その差異は特に考慮していません。WWFの調査は、「ウォーター・フットプリント」です。

環境ジャーナリスト 村上 敦
http://murakamiatsushi.de/

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村上 敦
村上 敦
むらかみ あつし

ドイツ在住の日本人環境コンサルタント。理系出身
日本でゼネコン勤務を経て、環境問題を意識し、ドイツ・フライブルクへ留学
フライブルク地方市役所・建設局に勤務の後、フリーライターとしてドイツの環境施策を日本に紹介
南ドイツの自治体や環境関連の専門家、研究所、NPOなどとのネットワークも厚い

2002年からは、記事やコラム、本の執筆、環境視察のコーディネート、環境関連の調査・報告書の作成、通訳・翻訳、講演活動を続ける

専門分野:
1.環境に配慮した自治体の土地利用計画、交通計画、住宅地開発計画
2.自治体レベルのエネルギー政策、気候温暖化対策

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