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ドイツのソーラー(PV)事情と新政権のエネルギー政策

日本でも11月から中途半端な余剰電力の買取り制度がはじまりますが、今年からドイツでは太陽光発電(PV)を含むすべての再生可能エネルギーの固定買取り制度(フィードインタリフ:FIT)の大改正が行なわれています。

このFIT改正の中でも一番注目されたのが、太陽光発電の買取り価格についてです。30kW出力までの小型のものについては、2008年度は46.75セント/kWh(約63円)で買取りされていたのですが、より低価格化が可能だとして、買取り価格の下げ率をこれまでの毎年5%ではなく、8~10%に設定しました。今年は43.01セント(約58円)、来年度はおそらく39.14セント(約53円)になる予定です。

しかし、今年の上半期には、金融危機を受けて、かつ、スペインでのPVバブルがはじけたことによって、世界のPV生産量は少し過剰生産気味になりました。とりわけアメリカ、中国が生産量を伸ばす中、設置量には伸び悩みがあり、その結果、ドイツでは、今年に入ってからのPV価格は、取り付けも含めたシステム価格ですでに30%近く低下しています。

昨年までのPVメーカーの言い分、「毎年10%の価格低減は不可能である」は、すでに1年にして間違っていることが証明されたわけですね。というタイミングで、今年の9月末にはドイツ議会の総選挙が行なわれ、保守+保守党が過半数を獲得、連立政権設立に向けて最後の調整を続けています。もともと、FITに反対し、今では一定範囲で容認という立場だった保守派は、これを機に、買取り価格の大幅な値下げを検討するようです。

このような理由から、今年の、今年限りのドイツでは、太陽光発電を設置すると史上最高の収益を上げることができるようになっています。利回り4%も夢ではありません(20年後には投資額の2.2倍のリターンが期待できます)!

ですから、今年に入ってからは、金融危機の影響で建物の着工件数が落ち込んでいたため、一時沈静化していたPVでしたが、下半期に入ってからは設置ブームが再来しています。今から、PVを設置しようと思っても今年中に取り付けするのはほぼ不可能な状況です。取り付け業者はもう一杯一杯。電気工事士であれば、就職先はいくらでも・・・という状態です。価格は、一度下がると上げにくいものです。これを機に、もう少し下げ幅を大きくしたらという意見がメディアなどでも出てきているのは当然の流れでしょう(一度に20%下げるか、15%の値下げを2年に渡って行なうか、など多数の論調があります)。

さて、気になる2009年度のドイツでのPV設置量ですが、2GW~4GWの間に収まるだろうというのがPV専門誌『Photon』の見方となっています。昨年の1.5GWを超えるのは確実な状況で、ドイツのソーラー世界No.1の面目を今年も保つものと思います(去年はスペインのバブルで2位に転落していましたが)。

翻って、もう一つのエネルギー政策についてです。日本からは環境保護、反原発に取り組む方々から私のところに問い合わせが入るようになっていますので、少し中間報告を。

10月末に発足する予定の保守・保守の連立政権では、選挙公約で脱・脱原発が謳われていました。もちろん、その政策そのものではなく、金融危機対策と経済活性化の政策を見込まれて保守政党が勝利したわけですが(ドイツ人の7割超は脱OR反原発です)、連立に向けての交渉では、ある程度の方針が示されました。

ドイツでは2002年に、緑の党が連立パートナーの中道左派政党と電力事業者との妥協の末、〈原子力法〉の大改正を行ないましたが、そこでは、ある一定量の発電をした原発には、事業の再認可を出さず、順次廃炉にすることが謳われています。予想では2020年~22年に脱原発は完了するというシナリオです。また、2005年からはMOX燃料のための核廃棄物の輸出の禁止、保険の代わりの積立金を25億ユーロに積み増し(世界中の原発は保険に入ってないので、というか保険に入れてもらえないので、独自に積み立てをしています)、安全性の向上とチェック機能の強化などが決められています。

さて、これを受けてこれまでに2基の原発は廃炉になりました。今年には本来、残り17基の原発のうち4基が廃炉になる予定でしたが・・・昨年から電力事業者は該当する原発の出力を下げ、運転時間を短縮し、発電量を調整することで、今年の総選挙までは「運転」という状態をもたせた状態にしていました。まあ、結構露骨な戦略ですね。で、気になる新政権の方針ですが:

  1. 故障が続く古いタイプの4基については延長を許さない(原子力法の規定よりも早い段階で廃炉にする)
  2. それ以外の原発ついては、飛行機を利用したテロにも耐えうる構造への改築、安全性の大幅な向上を条件に、これまでに発電した量や原発の稼動年数ではなく、安全性の観点で、事業の再延長の認可を出すことも考慮する
  3. ただし、それによって潤う原子力発電事業者の利益の50%は、国への上納金として収めることが条件で、それは再生可能エネルギー推進に利用する

というような感じの内容が報道されています。20年前(!)から「原発はつなぎの技術である」と主張している保守党にとってみれば、国民感情を計算した上での妥当な内容といえるでしょう。ただし、このためには、先の〈原子力法〉を改正しなければなりません。その際に、メディアや国民がどのような反応を示すのか、また、保守党も一枚岩ではありませんから、どのような妥協案がなされるのか、注目してゆきたいところです。

さて、先週はフランスの核廃棄物の相当量が、ロシア、シベリアにある閉ざされた街「Sewersk市(Северск)」の緑地に野ざらしで放置されているというスキャンダルなニュースが飛び込んできました。すぐにフランスは、MOX燃料に加工するために正当に輸出されたものだと主張していますが、これに飛びついたメディアが調べてみると、フランス以上の量がドイツからシベリアには運ばれていたそうです。グーグルの航空写真で野ざらしの状態を見ることが出来ますから、興味のある方は以下をどうぞ。少し分かりにくいのですが:


より大きな地図で Sewersk を表示


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http://murakamiatsushi.de/article_021.html#1

環境ジャーナリスト 村上 敦
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村上 敦
村上 敦
むらかみ あつし

ドイツ在住の日本人環境コンサルタント。理系出身
日本でゼネコン勤務を経て、環境問題を意識し、ドイツ・フライブルクへ留学
フライブルク地方市役所・建設局に勤務の後、フリーライターとしてドイツの環境施策を日本に紹介
南ドイツの自治体や環境関連の専門家、研究所、NPOなどとのネットワークも厚い

2002年からは、記事やコラム、本の執筆、環境視察のコーディネート、環境関連の調査・報告書の作成、通訳・翻訳、講演活動を続ける

専門分野:
1.環境に配慮した自治体の土地利用計画、交通計画、住宅地開発計画
2.自治体レベルのエネルギー政策、気候温暖化対策

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