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COP15を終えて、ドイツ社会の反応

さて、大方の予定通りではありましたが、COP15は成果もなく終わりを告げました。人類の英知は、各国の経済的なエゴ、ひいては個人や企業の経済的なエゴよりも全く非力であったことが確認された会議でした。

地球温暖化の場面では様々な美しいコメントが、とりわけ経済的なエゴが強い男性社会の具現のような人の口から吐き出されます。子どもを、森を、美しい自然を守ろうという聞き飽きたコメントです。デン・ハーグの国際刑事裁判所に送られてもおかしくない国家の責任者の口から、――紛争における人権侵害、殺略などを繰り返してきたエチオピア、スーダンなどがそれです――そのようなコメントが口にされ、そしてそうした国々がコペンハーゲンでは、人類を脅威から守ろうと呼びかけるおかしな主張が見受けられました。

今回のCOPでは、一つのことが確認されました。気候温暖化対策をリードしてきた、リードしてゆくと自認していたはずのEUには全く交渉力がなく、中国が最大の交渉をブロックする大国であったこと、そしてそれ以上に、アメリカ、ロシアでさえなすすべが見当たらないほど中国は、アフリカに対する絶大な影響力を誇っていたということです。そして中国を主体とし、南アフリカ、ブラジル、インドというスクラムに対し、アメリカやEUは何かの交渉を引き出すカードさえ準備できませんでした。

そうした中で、もちろん日本と同じようにドイツは非力でありました。『プランBはない、オルタナティブはない、コペンハーゲンは失敗できない』と手持ちのカード(2020年までに90年比40%削減)を最初からオープンにして交渉に臨んだドイツの環境大臣レットゲン氏も、妥協を夢にも思わない交渉相手に最後は、失望の意を表すだけに留まっています。これは、WWFでも、グリーンピースでも、緑の党でも同じで、テレビ取材のコメントに対して、ただただ深い憤りと怒りを示すだけに留まりました。

ドイツのメディアはどのような評価だったのでしょうか? COP15に関してネガティブなことは、日本の報道と同様です。では、ポジティブな何かは報道されたのでしょうか。

一つは日本が先進工業国の中で唯一、意欲的、かつ正当な目標値を立てていたという評価です。交渉はオープンカードではなかったにも関わらず、EU議会の委託調査による各国の適正削減目標値(90年比2020年目標:アメリカ-15%、ロシア-55%、EU-30%、日本-25%)やIPCCの推奨に従っているのは日本だけだったということが明らかにされています。これをもって、日本の産業界やメディアは、日本だけが不利になることをあたかも国益に反するように取り扱っていましたが、逆の見方では、EUと並んで、唯一交渉をリードする可能性を持っていた国であったとも解釈できます。

もう一つは、100を超える国々が、最小限の共通理解(地球の平均気温の上昇を2度以内、あるいはそれ以下に抑えるべき必要性があることと各国は温室効果ガスの排出削減に努めなければならないこと)を示したことです。これは、速度も距離も全く足りないとしても、前進している証です。

それ以上は、ほとんどポジティブな報道は見当たりません。

最後にドイツメディアに載せられたいくつかの数字をここで示しておきます:

  • 中国の排出量増加の少なくとも3割以上は、西側社会向けの輸出であり、責任があること。この傾向は、家畜飼料の輸出元のブラジルも同じ。
  • これまでのところ、歴史的に人類が排出した温室効果ガス排出量の80%以上は、先進工業国に責任があること。また、現在でも人口1人あたりの排出量では、先進工業国は中国、インド、アフリカなどの数倍、数十倍を排出していること。
  • 2020年までに先進工業国全体で40~45%の削減(90年比)と毎年350億ユーロの発展途上国への支援が、交渉の際に最低限必要であったこと。今回の交渉の失敗は、こうしたカードを準備できなかった先進工業国の責任であること。

中国の交渉拒否を責める前に、国内情勢を鑑みて責め切れなかったアメリカとの交渉の失敗が、COP15の総括だといえるのではないでしょうか。この構図は、オバマ政権になっても代わり映えしていないというのが、メディアの伝えたところでした。さて、そういう日本は政権交代で本質が変ったのでしょうか?

環境ジャーナリスト 村上 敦
http://murakamiatsushi.de/

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村上 敦
村上 敦
むらかみ あつし

ドイツ在住の日本人環境コンサルタント。理系出身
日本でゼネコン勤務を経て、環境問題を意識し、ドイツ・フライブルクへ留学
フライブルク地方市役所・建設局に勤務の後、フリーライターとしてドイツの環境施策を日本に紹介
南ドイツの自治体や環境関連の専門家、研究所、NPOなどとのネットワークも厚い

2002年からは、記事やコラム、本の執筆、環境視察のコーディネート、環境関連の調査・報告書の作成、通訳・翻訳、講演活動を続ける

専門分野:
1.環境に配慮した自治体の土地利用計画、交通計画、住宅地開発計画
2.自治体レベルのエネルギー政策、気候温暖化対策

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