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自然の甘みとして人気の高い蜂蜜。でも、そのほとんどが外国から来た西洋蜜蜂が集めている蜜だって知ってますか? 日本の在来種である日本蜜蜂を育てる養蜂家を訪ねて、盛岡の地に足を伸ばしてみました。 写真)上:西洋蜜蜂より、体の小さい日本蜜蜂 |
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| 毎年、春になると、皇居を見下ろす社民党ビルの屋上で、黒い網を顔にかけてなにやら作業をする白いツナギを着た人がいる。盛岡で養蜂業を営む藤原誠太さんだ。 「蜂の気持ちになって都心を歩くと、公園に花が咲き乱れていて、『宝の山だ!』と驚きます。特に、春先の皇居には花々が咲き乱れているのに、養蜂家が一人もいないのが不思議でしたね」と、藤原さん。 なんでも蜂の視点から見てしまうと笑う陽に焼けた長身の彼は、大学で蜂の研究を中心に農業を学び、その後、養蜂を学ぶためにブラジルに留学する。そして帰国後、実家の「藤原養蜂店」を継いだのだから、“筋金入りの養蜂家”と言っていい。 「ブラジルに留学したのは西洋蜜蜂の勉強のため。帰国後もしばらくは西洋蜜蜂を育てててたけど、あるきっかけで日本蜜蜂に興味を持って調べるうちに、日本の自然に合うのは在来種の日本蜜蜂ではないかと思い始めました」と言う藤原さんは、調べれば、調べるほど“在来種”の合理性を知ることになる。 そのきっかけというのは、スズメバチだ。近くの農地や農家の軒下など、スズメバチの巣ができると養蜂家が呼ばれて処理をすることになる。肉食のスズメバチは西洋蜜蜂の天敵で、1匹でも巣箱に気が付くと、養蜂家にとっての財産である蜜蜂を殺されてしまう。だから養蜂家は、スズメバチの退治方法を熟知している。 でも驚くことに、日本蜜蜂は自らスズメバチを撃退する方法を知っている。 そんなにすごい日本蜜蜂なのに、なぜ日本の養蜂家たちは西洋蜜蜂を飼うのだろうか? もちろんそれにはワケがある。日本蜜蜂は逃去性が強く、巣から逃げ出してしまうことも多い。また巣が脆いため、蜜を取るときに巣が混じって濁ってしまうことが嫌われる。学生時代から難しいと言われる研究に取り組むのが好きだった藤原さんは、誰もが諦めていた日本蜜蜂の弱点を見直せないかと研究した。巣に効率よく帰って来やすいように、寒い地方独特の蜂の家である“蜂舎”に「○」「△」「☆」などの目印を付けたり、風よけを付けてみたり、また、巣が崩れにくい巣箱の構造を工夫した結果、「なんとか商売が成り立つ」ようになってきたと藤原さんは微笑む。 いまでは、全国から藤原さんの蜂蜜を欲しいと注文をするファンがあとを絶たない。 そして蜂の研究が大好きな藤原さんは、いま、日本蜜蜂と自然の結びつきまで研究の幅を広げている。養蜂家が飼う蜜蜂は人間と自然の接点で暮らしているから、人間の近くの自然が変化すると、その影響を受けやすいのだ。 「蜂はすごくたくさん水を飲むんだけど、ある日、養蜂場の近くの田んぼの水を飲んで苦しんで死んでいくのを見て驚いてしまって……。稲を育てるために大量の農薬が撒かれていることを知って、蜂だけ育てててもだめなんだと思い知りました」 まもなく藤原さんは、近くの農地を借りて野菜や米を農薬を使わずに育てる研究を始めた。さらに農薬を使わないためには、肥料もオーガニックなものを使った方が野菜が強くなることがわかると、さらに有機・無農薬農法の研究を進めることになる。蜜蜂と自然が息づく限り、藤原さんの研究は終わりがないようだ。 文=川端由美 写真=黒須一彦 |
巣箱から蜂蜜を直接取って食べると、ほんのりと温かく感じる
街路樹などに良く使われるユリノキからは上質な蜜が大量に取れる
藤原誠太 1957年、岩手県・盛岡市生まれ。大学で養蜂を学び、さらに北米やブラジルに渡って海外の養蜂を学ぶ。帰国後、祖父の代から盛岡で続けてきた「藤原養蜂店」を継ぐ。西洋蜜蜂を育てる傍ら、在来種である日本蜜蜂の特徴を研究し、日本蜜蜂の養蜂に尽力している。4年前から、3月になると社民党のベランダのような都心に巣箱を設置しており、都内でも利き酒ならぬ、“利き蜂蜜”の会を開くなどしている。 |
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