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しあわせのかたち、オーガニックコットン 日本オーガニックコットン流通機構理事長 宮崎道男さん

わたしたちの暮らしにかかせない布。身のまわりにあるたくさんの布を、少しだけオーガニックなものにかえてみる。そんなちょっとした選択が、自分だけではなく、世界中の人たちもしあわせにするのだとしたら? そこには、わたしたちの知らないオーガニックコットンの世界がありました。

 朝一番、顔を洗う。タオルを手にとって、顔をうずめる。ふんわり、しっとりなコットンのやさしさに包まれると、何かイイことがありそうなしあわせな気分になります。それが、自然そのまんまのオーガニックコットンだったら、もっとうれしい。

 日本オーガニックコットン流通機構(以下NOCと言う)の宮崎道男さんは、オーガニックコットンブームの火付け役の一人と言われている方です。
きっかけは、アメリカ、ロサンゼルスで広告宣伝の仕事をしていた宮崎さんが、ある日、日本にいる友人にオーガニックコットンの調査を頼まれたことから。

 1990年代はじめ、日本では、ナチュラルとかグリーンとか、ピュアなんていう言葉は使われていましたが、まだオーガニックと言う言葉は、ほとんど知られていなかった頃のことです。

「オーガニックなコットンは、てんとうむしやとんぼなどのような天敵昆虫を使って綿につく害虫を食べてもらったり、コットン畑のまわりにトウモロコシのような糖分の多い植物植えて、そっちに害虫をおびき寄せて駆除したりして、ひたすらてまひまをかけて育てます。殺虫剤や枯れ葉剤などの化学農薬を使った一般の綿花栽培とはまったく違います。農家のそんな育て方や考え方を見て、すっかり共感してしまいました」と、宮崎さん。

 せっかく農薬も化学肥料も使わないでていねいに育てたコットンです。製品の加工でも化学薬品は使いたくありません。そんなふうに、かたくななまでに自然な製法にこだわりながら、まずは、安全をあげたい赤ちゃんの服を、それから少しずつ製品の種類を増やしていった宮崎さんたち。あるとき、その信念が揺らぎのない確信に変わった大きな出来事がありました。

 それは、化学物質過敏症という、微量の化学物質にも反応してしまい、日常生活を送ることが難しい病気にかかってしまった人たちのために製品開発をすることになったことです。

 アメリカ、ドイツに続いて世界で3例目となる化学物質過敏症の専門病棟を、東京の広尾にある大手の病院が手がけることになり、その病棟内のすべての布製品を請け負うことになったのです。

 病院の設備が揃って一般市販の寝具製品を病室に持ち込んだそうですが、空調の検知器が化学物質を感知してクリーンレベルがまったく下がらなかったそうです。そこで化学処理を極力避けてきたNOCのオーガニックコットン製品に白羽の矢が当たというわけです。すぐに、医師や看護師用の白衣、タオル、、シーツ、ベッドのマットレスやスリッパまで、ありとあらゆる生活用品、医療用品をつくって持ち込んだところ、クリーンレベルが見事に下がって、無事、患者さんたちを受け入れられるようになったんです。NOCオーガニックコットン製品と一般のケミカル処理をしているコットン製品とがこんなにも違うものかと、私たちも改めて驚かされました。そして闇雲にやってきたこの仕事でしたが、本当の役割がここにあったと強く感じました。」

 育てた人や、それを使う人のことを常に想ってモノをつくる。生産者が決して忘れてはならない良心をもっとも大切にしてきた宮崎さんたちだからこそ、出せた結果なのかもしれません。

“科学的”にその良さが認められてか、そのころからオーガニックコットンは繊維業界で急速に広がっていきます。ところが話題になると世の常で混ぜたり、染めたり、とうていオーガニックと謳えないようなニセモノまで現れるように。宮崎さんは、「オーガニックコットンの本来の良さが消えてしまう」と従来から続けてきた日本オーガニックコットン流通機構を独立法人のNPO申請して、より社会に貢献できる体制を作ることにしました。

 NOCは、原綿から、糸、生地、最終製品にいたるまで、携わるすべての人たちの“良心”に支えられてできた製品を認定し、本物のオーガニックコットンの普及につとめています。

 近年中もっとも宮崎さんが力を入れているもの、それは、フェアトレードです。

 NOCの3つの理念では、NO-CHEMICAL(化学農薬を使わない)、NO-BLEACH(化学処理をしない)、そしてNO-SWEATがあります。最後のSWEATという言葉には、「汗」という意味が一般的ですが「搾取する」というもう一つの意味があります。NO-SWEAT、つまり、コットン農家から、生産の喜び、働く楽しさ、そして彼らの生活を、「搾取しない」ということなのです。だから、NOCのグループ企業のパノコさんはできるだけインドやアフリカ、ペルーなどの貧困問題を抱えた地域から輸入し、それも綿花相場最高値の20〜50%も高く、毎年継続して買うのだとか。

「作柄のいい年とそうでない年とがありますが、とにかく”継続”して買うことが大事で、農家の人々は安心して仕事ができ、生活も安定し向上できるようになります。NOCコットンはこの点が他のオーガニックコットンを扱うメーカーと違う点かもしれません。」

 フェアトレードは、働くことの対価としてお金を得ることで、彼らの誇りや自信へとつながる仕組み。ただお金を送るだけの施し、資金援助の考え方とは根本的に違うのです。そのことは、現地で働くオーガニック農場で働く人々の、希望と誇りに満ちたとびっきりの笑顔がちゃんと物語ってくれています。彼のマザーテレサがこんな言葉を残しています。「愛の反対は憎しみではなく、無関心なのです。」

 そんな、コットン農家の人たちの夢と希望がたっぷり詰まったオーガニックコットン。一方で、それを使う豊かな社会に住む私たちの意識はどうでしょう? 

「オーガニックコットンを扱い始めたころ、漂白していない生成りの製品を見て、「まだ未完成なの?」「安っぽいなあ!」綿の葉っぱの粉が生地についているのを見て「何これゴミが付いてる。こんなもの売れないよ」など散々な批判を受けました。それは、私たちの中に、『白ければ白いほどいい』『同じ色、同じ形でずっと変化しないものがいい』という価値観がすり込まれてしまっているいからです。製造の過程で起こる色んな汚れや欠点を隠すための漂白加工であることも知らずに。

 でも、本当に人類にとっていいもの、地球にとってやさしいものは、ときの経過とともに変化して、最後には土に返って消える、そういうモノなんです。変化しない長持ちする便利な化学合成品は、ゴミとしていつまでも残ると言う現代の大問題も抱えていたのです。」と、宮崎さんは、便利になりすぎて大切なことを忘れかけている私たちに気づかせてくれます。コットンだって、人間だって、同じ大自然の一部なんだということを。

 まずは、身のまわりをぐるりと見回して、生活の中にある布をオーガニックなものに変えてみる。その行為一つが、生産者を助け、地球を守ることになる。そして何より、自分も気持ちイイ。ぐるぐるまわってみんなをしあわせにするオーガニックコットンは、神様からのとっておきの贈り物なのかもしれません。

写真=黒須一彦

お知らせ
自分にも、家族にも、地球にもうれしい、コットン畑からの贈り物。
オーガニックコットンの新ブランド『COTTON TALE』誕生!

COTTON TALE
http://www.panoco.co.jp/cottontale


株式会社パノコトレーディング
http://www.panoco.co.jp

パノコ・オーガニックコットンショップ
http://www.panoco.co.jp/noc

日本オーガニックコットン流通機構
http://www.noc-cotton.org







宮崎 道男(みやざき みちお)

1950年東京生まれ。明治大学農学部農芸化学科卒業後、アメリカ・ロサンゼルスにて宜伝広告業を行う。1993年の帰国後からオーガニックコットン事業を開始。1994年、日本オーガニックコットン流通機構を設立し、現在は同理事長を務める。

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