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自然の法則や生態系を尊重した農法のひとつとして有機農業があります。
有機農業という社会現象をアカデミックな場で追求している現役大学院生の谷口葉子さんをインタビューしました。彼女は学生でありながら神戸を拠点に活動するNGO “organic platform FOON(風雲)” の代表も務めています。オーガニックの新しい可能性に目を向け国内外の視察にも積極的に参加している谷口さん。オーガニックとどんな風に向き合っていらっしゃるのかお話しして頂きました。

写真)上:風雲の事務局をおかせてもらっている有機八百屋「あおゆず」です。毎月第4土曜日には県内の有機農家グループによる朝市が開かれます。



イギリスのファーマーズマーケットの様子です。イギリスではほんものの「ファーマーズマーケット」かどうか、という認証が行われています。写真は、有機農産物中心の「オーガニック・ファーマーズ・マーケット」です。

有機農業に関わるようになったきっかけ

 有機農業との出会いは大阪でおこなわれたある環境NGO主催のセミナーでした。ところが、その後すぐにアメリカへ留学したので、実際に活動に加わるということはありませんでした。有機農業について直接関わりたいと思うようになったのは、留学先でのことです。

 留学先の大学では、環境政策を専攻しました。そこでは公共政策学の基本やアメリカや国際機関による環境政策を学んだのですが、実はその結果、悲観的な気分になっていました。公共政策といえば、何も環境政策だけではありません。貧困の問題、高齢者の医療問題、安全保障問題。何をするにも、政策とするからには、お金がかかり、税金が必要となります。そしてどうしても、環境よりも人の命にとって差し迫った問題の方が、小さなパイの奪い合い競争で勝利をおさめることになります。環境問題も放っておけばやがて人類に大きな危機をもたらすでしょう。でもそれを科学的に証明することは難しいですし、いろんな利害を調整するまでに、大変な労力と時間がかかります。一方で、減税や高齢化によって小さなパイはますます小さくなっていきます。そんな中で、自分が勉強していることの意味を見失いかけていました。

 ところがある授業の課題として取り組んだ論文でアメリカの有機農業を取り上げた時、日本の産消提携に似た、CSA(Community Supported Agriculture)という取り組みのある事を知り、それが希望を与えてくれました。そこでは人々が、環境や健康に配慮してつくられた農産物を、一般市場よりも高い価格であることを承知しながら購入しています。そこには「パイの奪い合い」はありません。自然環境を守りたいと願う人たちが、自分のポケットからそのためのお金を出し合います。農家は安定した収入が得られるため、環境や健康にいい有機野菜をつくり続けることができます。有機農業なら、税金も、議会を説得するためのデータも、貿易紛争を心配する必要もありません。国の政策ではないから、関係ないのです。こういう仕組みやものの考え方を通して社会が変化していけば世の中がもっと変わっていくのでは、と思えるようになりました。


「マイ・オーガニック」を持とう

 その後、自分なりに「オーガニック」の正体をいろいろと考えるようになりました。最近は、オーガニックとは「生態系の法則にしたがって生きる」ためのいろいろな知恵や工夫のことではないか、と思っています。もし、生態系の法則を守るために何をすればいいのかみんなが知っていたとしたら、「オーガニック」という言葉は生まれなかったでしょう。「オーガニック」はサステナブルなもの、そうでないものを区別するための「仕掛け」として存在するのではないかと思うのです。

 今や、「オーガニック」という言葉は暮らしのいろんな場面に登場するようになりました。食べものだけでなく、衣服や音楽、住環境等、いろんな選択肢が広がってきています。その中で、農業をよく理解し、有機農家のサポーターになる、というのもひとつでしょう。玄米菜食やヨガを始めるというのもよいでしょう。どのような形でもいいから、自分流の「マイ・オーガニック」を持って、そのパーセンテージを高めていくということが大切だと思います。

 それから、自分流の「マイ・オーガニック」を持つことは、有機表示を鵜呑みにするのではなく、よりサステナブルかどうかを自分で判別するための「眼」を養うということでもあります。例えば、今の表示制度では、農家に適切な価格が支払われたかどうか、水や化石エネルギーのムダ使いをしていないかどうか、森林を破壊してつくられたものでないかどうか、知ることはできません。ところが表示を通してそのことを伝えようとすると膨大なコストがかかります。つまり、表示には限界があります。数百年先の話になるかもしれませんが、物事を見る眼を養うことで、最終的に「オーガニック」という言葉が必要なくなることが、究極の理想だと思うのです。私もNGO活動を通して少しでもそのことのお手伝いができれば、と思っています。


今後の活動

 現在、神戸大学大学院自然科学研究科にて農業経済学を勉強しながらorganic platform 風雲を運営しています。一般の人や若い人へオーガニックをもっと知ってもらおうと、2005年4月に立ち上げました。メンバーは有機農業を実践している農家の方から八百屋、ミュージシャン、ラジオのDJ、通訳など多彩です。この一年間は、若い人に企画や実務に参画してもらい、イベントやコラボレーションを行ってきました。日常的には、主に関西地域のオーガニック情報を集めたサイト“myorganic.jp”や、オーガニック情報を音楽と共に送るインターネットラジオ“Radio FOON”を運営しています。イベントでは多彩な顔ぶれを生かし、農家による直売を開いたり、ライブ演奏を行ったり、ステージイベントやスライド画像によって場を演出したりしています。事務局をおく神戸市東灘区の界隈には、最近、オーガニックのカフェやレストランが増えてきています。今後はそうしたお店とつながりを持ちながら、地域の人々が実際に有機野菜を食べたり、エコロジカルな生活をしたりするためのきっかけづくりを積極的に行っていきたいと思っています。

聞き手=岡村貴子


myorganic.jp
http://myorganic.jp/







谷口 葉子(たにぐち ようこ)

神戸大学大学院自然科学研究科在学中。アメリカで環境政策を学んだ後、英語講師をしながら関西地域の有機農業団体の活動に関わるようになる。現在、大学院で学ぶ傍ら神戸のNGO「organic platform 風雲」の代表を務め、情報発信を中心にオーガニックを広めるための活動を行っている。

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