『里山物語』を通じて、僕らが目指して指いること その2
熊本の山間部にある棚田地帯少し記事の投稿間隔が空いてしまいました。この間、ついに里山保全再生ネットワークがNPO法人として産声を上げました。これからさまざまな活動を展開していきますので、よろしくお願いいたします。
さて、前回記事の続きです。前回の記事は「里山には大きな価値があります。しかも、世界にも誇れるような。次回はその価値について、書きたいと思います」で終わりました。
世界に誇れる里山の価値。それはたくさんあります。
たとえば、日本の原風景の一つであること。古い書物に記された「豊葦原の瑞穂の国」も、「花蝶風月」も里山があってこその風景です。
また、落葉広葉樹が主体の雑木林や田んぼは、季節ごとに装いを変えて私たちを楽しませてくれます。
こうした情緒的な価値に加え、実質的な価値もたくさんあります。
まず、防災や生活支援面での価値です。田んぼは天然のダムとなり、雨水をたくわえます。雑木林も土砂流出抑制といった大きな役割を果たすほか、水を蓄え、豊かな水源地帯を形づくっています。
気候面での価値も多大です。都市近郊の里山は大気を浄化し、ヒートアイランド現象などの気候緩和に貢献しています。実際に夏季の日中、新宿市街地が約33℃だった時に、明治神宮の樹林地は、25.5℃を示していたというデータもあります。明治神宮は里山ではありませんが、緑に満ちた環境が気候緩和に果たす役割を物語ります。
身近な場所で安心で安全な食べ物をつくりだしてくれることも、大きな価値の一つです。
そして、最大の価値は、「人と自然が共生しながらも、結果的に生物多様性の宝庫になった世界的にも希少な環境」であることです。
昨年の10月、『里山物語』の開発に携わった人たちと、里山で稲刈りを楽しみ、雑木林で得たまきでピザを焼いて食べ、里山を散歩するという、実にゆる~いエコツアーに出かけました。
稲刈りのときには、鎌で刈りとるそばから、バッタやイナゴ、カマキリ、トウキョウダルマガエル、マムシの子どもなどがワサワサと飛び出してきました。生物大脱出の気配を感じたのか、上空にはアオサギやオオタカの姿も。さらに普段はあまりお目にかかれないシュレーゲルアオガエルも姿を見せるなど、まるで生物多様性絵巻のようでした。
環境省の調査でも、里地里山の分布と、絶滅危惧種が集中して生息生育する地域(RDB=レッドデータブック種集中地域)との関連を分析したところ、動物・植物ともにRDB種集中地域の多くが里地里山であることが判明しています。
このように生物が多いのは、人間がつくりだした田んぼなどの湿地、ため池などの水域、雑木林のような冬には林床にまで日が差す明るい林など、さまざまな環境がモザイク状に固まっているためです。環境が多様だからこそ、生物の種類も多いというわけです。こうした環境の創造に人間も大きな役割を果たしているなんて、素晴らしいことだと思いませんか?
人間はいつからか生き物の輪から外れてしまったけれど、里山ではかろうじて、人間が生態系をつくりだす一員になっているのです。それは、親子をさまざまな生物が囲んでいるCOP10ロゴマークの世界、そのものと言えるでしょう。
次回は、この里山を守るためには、わたしたちが何をしたらいいのか書きたいと思います。
写真やテキストで綴る、日本の宝、里山のいま
いわまとしひこ
カメラと文章で森羅万象を発信する、自称“カメライター”。日本の美しさを発信したいと考えて活動してきたものの、各地で環境破壊の現場とぶち当たり、いつしか “環境”がメインテーマになりました。とりわけ関心があるのが里山です。里山再生計画に携わったり、保全活動で汗を流すなど、ライフワークになりつつあります。
http://www.satoyama-saisei.netEOL WEBパートナー
つながれば、低炭素な未来を実現できる
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