東京五輪招致失敗に見る「エコジャパン」の異質さ
「カーボンマイナス五輪」を掲げた東京五輪の招致失敗を見ていて、ある意識調査のことを思い出しました。
それは(株)NTTデータスミスと、カナダの社会調査機関グローブスキャンが手がけた意識調査で、世界32カ国、約32,000人の消費者を対象に、企業のCSR活動について実施されています。
先頃、同社が発表した情報によれば、この意識調査によって日本の消費者は、世界とは異なったCSR観を有していることがわかったと言います。日本の消費者は、CSRを「商品の安全性の保証」等の企業本来の業務に直結した分野に限定する傾向が強く、企業に最も貢献して欲しい分野として、多くの人が「環境問題」をあげました。一方、世界を見ると、「慈善事業、地域活動の支援」「人権問題への取組み」「犯罪、貧困、教育への取り組み」等の公共問題や、社会的責任分野が強く期待され、「教育/人材育成」、「貧困問題」、「健康問題」などが貢献して欲しい分野の上位にあがったと言います。なんと、「環境問題」は消費者の期待としてマイナーである国が多いのだそうです。
つまり、現代の日本においては「環境」を掲げれば、多くの消費者や企業にとって錦の御旗となるわけですが、世界的に見れば決してそうではなく、「貧困問題」、「人権問題」、「健康問題」の方が、人々の賛同が得られやすいとも言えるわけです。
今回の東京五輪招致が、環境一本槍だったのに対して、2012年にオリンピックを開催するロンドンがどんな五輪を目指したかと言うと、環境対策に止まらない「持続可能(サステナブル)」な五輪です。
彼らが掲げたいくつかの目標をあげてみましょう。
『気候変動』
公共交通機関の利用、再生可能エネルギーの導入、すべての施設を省エネに。
『ゴミの減量』
リサイクルした素材を使ったり、リユース、リサイクルがしやすい施設を設計。リース型のプロダクツを多用。
『生物多様性』
アウトドアの競技の会場は生物多様性への配慮を重視。
『インクルージョン』
スポーツだけでなく文化イベントなども実施し、多くのステークフォルダー参加するイベントを目指す。
『健康な生活』
地産地消、オーガニック、フェアトレードの飲食を提供。自転車などの利用しやすい施設にし、化学物質の排出なども抑制する会場に。
といった具合です。
実現すれば東京よりも4年も前に行われるイベントなのに、『インクルージョン』や『健康な生活』といった、この意識調査にも出てきたような幅広い社会性を有する内容になっていたわけです。
『インクルージョン』については、エコに関わる私たちには馴染みの薄いコンセプトですが、障害や貧困にある人たちに対する差別を無くし、教育や事業を包括的に行っていこうという考え方です。なにも地球環境問題だけが、社会的に考えるべき問題ではありません。イベントも、学校も、企業も、行政も、もっともっと多様な社会問題に目を向けられる国にならないと、先進国として国際的に評価されるのは難しいということを、今回の招致の失敗は教えてくれたのかもしれません。
アメリカのグリーンニューディール政策が、貧困層に雇用を生み出すという社会的な思惑があるのに対して、日本のグリーンニューディールが大手企業の環境ビジネスにばかり焦点を当てていることも、同じような異質さを表す事実かもしれません。
日本の常識が世界の非常識とならないように着実に歩んでいきたいものです。
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