使い放題 なんでもあり 良い訳ないよね

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DEENの池森秀一さんに

お話を伺いました。

 

取材・文:温野 まき 撮影:織田 紘

池森秀一 (いけもり しゅういち)さん

北海道出身。1993年に結成されたDEENのヴォーカル。16歳のとき、ソウルミュージックの好きな姉の影響を受け、歌うことを志す。札幌のライブハウスを拠点に活動したのち、DEEN結成にあたりヴォーカルとして参加。2008年、現メンバーの山根公路(Key)、田川伸治(G)と共に結成15周年を迎えた。同年、初の日本武道館ライブを行い、12月には通算34枚目のシングル『永遠の明日』を発売。今年2月25には通算9作目となるオリジナルアルバムが発売予定。

 

ミュージシャンはみんな ピースフルな思いを持っている

 昨年、デビュー15周年を迎えたDEEN。6月に行った日本武道館ライブは即日完売、12月10日に発売された通算34枚目となるシングル『永遠の明日』は、オリコンウィークリーチャートで初登場6位にランクインするなど、ますます充実している感がある。そのDEENが、2月21日にZEPP TOKYOで開催される「Music Saves the Earth '09」(日本音楽事業者協会主催)に出演することになった。ヒット曲は恋愛をテーマにしたバラードが多いが、ヴォーカルの池森秀一さんの歌詞には、『Tears on Earth』のように地球への思いを歌った作品もある。

「デビューのときから、そうした社会的な詞も作っていました。若いときは漠然と"もっとみんなが歩み寄って良い社会になっていけばいい"というようなものでしたが、それが地球環境の問題などで、少し具体的な内容に変わってきている感じはあります。でも、僕に限らず、ピースフルな思いをミュージシャンはみんな持っているんじゃないでしょうか」

 DEENの魅力のひとつに、歌詞の情景がすっと心に入り込んでくることがあげられるが、なかでもときおり効果的に使われる、風、海、雲といった自然を表す言葉は、果てしない広がりを感じさせてくれる。実際に、北海道出身の池森さんにとって、雄大な自然は価値観の源になっているようだ。

「歌詞は、僕が生み出しているというよりは、体験したり見たりしてきたものが投影されているのだと思うんです。道南で育ったんですが、夏は海と野球、冬はスキー。ゲームを家でやっていたなんていう経験はまったくなくて、それはそれはやんちゃな子ども時代でしたね。とにかく走り回って遊んでいました。海が大好きです。どこの海へ行っても気持ちが解放される気がします」

 

シンプルに暮らしていくために 大きなシステムを変えていく勇気が必要

 今回、DEENが出演する「Music Saves the Earth '09」は、危機的な状況にある地球環境のなかでも、特に"森林の問題をなるべく多くの人たちに伝えたい"というテーマを持っている。日本は国土の2/3を森林でおおわれた"森の国"であるにも関わらず、私たちのまわりにあるほとんどの木材は輸入されたものだ。海外で森林の違法伐採が行われているケースがある一方、日本の森は管理されずに荒れ果てている。

「日本ほど資源が豊かな国はそんなにないと思います。なのに、安いからといってあらゆるものを海外から輸入し続けている。木材もそうですが、僕自身は食べ物のことも気になりますね。食糧についても国産のものは40%程度。流通が複雑になっているせいもあるのか偽装まで起きる。寂しいですよね。もっと自分たちの都道府県でつくられたものを使ったり食べたりできる、シンプルな暮らしになったらいいのに。すでに出来てしまっている大きなシステムですが、変えていく勇気を持つ必要があるんじゃないでしょうか」

 普段の生活のなかでもエネルギーの無駄づかいについては特に気をつけているという池森さん。でも、何かが大きく変わるためには、政治や企業自体が変わらなくてはいけないのではないかと考えている。

「いつも思うんですが、たとえば企業が25度以下に下がらないエアコンをつくればいいんじゃないかって。そしたら公共電波を使って、冷房温度を下げてくださいって言わなくてもいいんですから。政治や企業が変われば、いままで地道にエコに取り組んできた人たちとつながって、一気に変わっていく可能性があると思います」

 

みんなといっしょに明るくノリノリで 国のリーダーたちに伝えたい

 さて、今後のDEENはどうなっていくのだろう。大成功をおさめた日本武道館ライブだが、"初の武道館"だったというのは意外な気がする。

「15年目で武道館っていうのも、この業界では初めてのことらしいです。もっと早くやっとけって(笑)。でも、地道にツアーを重ねてきて、全国で応援してくれるサポーターの皆さんがいて、その集大成として武道館ライブができたという実感があります。本当に感謝の気持ちでいっぱいですね」

 やはり武道館は特別な場所だった?

「ピンと背筋の伸びる場所ですね。音楽の神様がいるって言われているんですが、本当にそんな感じがしました。それになりよりも、会場の1万人がものすごく近くて、みんなと一体になれたのが嬉しかった」

 15周年の節目を経て、次の目標は20周年。恒例が決定した武道館ライブは、今年は5月9日に行われる。今後は通年のツアーのなかでも、年に一度のお祭りとして、サポーターといっしょに武道館ライブを盛り上げていきたいという。

 ところで、現在アルバムをレコーディング中とのことだが、次のアルバムにも地球環境をテーマにした曲が収録される予定とか。

「『Tears on Earth』の叫びとはまた打って変わって、明るいノリノリの曲なんです。国のリーダーたちに直接なんとかしてくれって言えないじゃないですか。それを明るい曲にのせて歌っちゃう。僕もそんなに立派なことは言えないけれど、書いちゃいました」

 シリアスなメッセージだからこそ明るくノリノリで伝える。歌詞のなかにある「使い放題 なんでもあり 良い訳ないよね」という言葉が胸に響く。早くも待ち遠しくなってきた5月の武道館。この曲で、DEENと会場がまた一体となって大いに盛り上がるのが目に浮かぶようだ。

 

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