【ドイツ発】グリーン電力を天然ガスに変えて貯蔵

*写真はイメージです(撮影:岩間敏彦)
*写真はイメージです(撮影:岩間敏彦)

 世界中で、電力源がどんどんと風力や太陽光などに移っているが、ドイツの研究者たちはこのたび、再生可能エネルギーによる電気を天然ガスとして貯蔵することに成功した。これより、グリーン電力の安定した供給が期待される。

 

 再生可能エネルギーが急速に増える一方で、貯蔵技術への需要はますます大きくなっている。エネルギー関連の施設や電力会社では特にだ。風力が強い時は必要以上の電力が発電されるため、余剰分は電力市場で安く取引される。新しい技術では、そのような時に電気を天然ガスにして貯蔵できるようになる。

 太陽エネルギーおよび水素研究センター(ZSW)とフラウンホーファー研究所の風力・エネルギーシステム技術部門(IWES)とが協力して開発したプロセスを使用すると、電気を合成天然ガスにすることが可能。オーストリアの協力会社Solar Fuel Technology社は現在、実用化に向けて準備中だ。この技術の強みは既存のインフラを使用できる点だという。2012年から、10メガワット規模の操業を予定している。

 

 今回の技術は、水素の電気分解の技術と、メタン生成の技術を組み合わせたもの。余剰再生可能エネルギーから電気分解で水を取り出すと、残るのは水素と酸素。さらに水素と二酸化炭素を化学反応させるとメタンが生成される。つまり合成された天然ガスができあがる。

 

 開発は2つの課題に後押しされた。1つは、どの方法が、十分な容量を確保できる貯蔵方法としてふさわしいかということ。これについては、ドイツの天然ガスネットワークは巨大で、毎時200テラワットもあり、数か月分の消費に耐えられる数字。一方、電力網はたった毎時0.04テラワットしかない。2つ目は、既存のインフラを使用するのに一番良い方法は何かということ。これについても、合成天然ガスは、従来の天然ガスと同じように貯蔵することが可能という。

 

 発電が、天候の変動に左右されることが課題のひとつとなっている再生可能エネルギーだが、貯蔵方法として、水素への変換のほかに、合成天然ガスへの変換も既存のインフラを使えるという点ではうれしいニュースといえそうだ。

文:温野 まき 翻訳サポート:中野 よしえ

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