【カンボジア発】チタン鉱山が貴重な森を脅かす

 東南アジアで、最も手付かずの自然のひとつである、カンボジアのカルダモン山系で、住民に知らされないまま、チタン鉱山の開発が始まった。野生動物や河川、そして軌道に乗り始めたエコ・ツーリズムへの影響が懸念されている。環境への懸念から、政府はアクセス道路の建設を一時中断したが、鉱山開発自体に明かされない情報が多くあり、今後も目が離せない状況にある。

 鉱業(採掘)合併企業のユナイテッド・クメール・グループはこの3年間、巨大なチタン鉱山をカンボジアの森林保護区内に建設する計画をしていたが、アクセス道路建設のためのトラックやブルドーザーが村人の前に現れるまで、その計画は一般には知られていなかった。

 

 200万ヘクタール以上に及ぶカルダモン山系は、250種の鳥類やインドシナ・タイガー、マレー熊、ボウシテナガザル、シャムワニなど貴重な動植物が生息し、また、アジアゾウのカンボジア最大の群れが生息するなど、驚くべき生物多様性を誇る地域だ。

 

 カンボジアの原生林面積は、過去20年間で半分以下になったが、15,000〜20,000ヘクタールに及ぶ今回の鉱山開発が現実になると、坑道建設のためにさらに森林は伐採されることになる。また膨大な量の廃石を埋める土地が必要になるが、その結果として、下流の河川を汚染し破壊する危険性もある。

 

 採掘計画のある森林を裏山に持つChi Phat村にとって、このニュースは最悪なタイミングで伝わった。同村は、多くの住民が密漁や森林伐採から足を洗い、長年かけて持続可能なエコ・ツーリズムを確立してきたが、その成果がようやく出てきた矢先だった。世界的に有名な旅行ガイドブック"Lonely Planet"は同地域を「2010年のトップ10」に選んだばかりだ。

 

 しかし、政府の対応は、決定内容とそのプロセスについてあいまいなままだ。計画の後ろには、中国とベトナムの投資が絡んでいるというが、ユナイテッド・クメール・グループは詳細の発表を拒否している。

 

 この鉱山開発に許可が降りると、今後、他の計画にも許可が降りるのではないかと地域を保護する立場の人々は心配している。新聞『プノンペン・ポスト』によると、今回の計画に許可が降りたら、中国は他に3〜4ヵ所で鉱山開発に着手する計画だという。計画地域はカルダモン山系の10万ヘクタールに及ぶ面積になるという。

 

文:温野 まき 翻訳サポート:中野 よしえ

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