中国の環境問題が世界に与える影響

「中国で起こることは、世界中に影響を与える」----。だからこそ先進諸国は世界の安定のために、中国が包括的な解決法を取り入れるやすくなるよう援助する必要がある、と米国の環境科学者2人が『Environmental Science and Technology』誌の9月号で議論した。

 「中国の環境的チャレンジと世界への影響」と題する論文では、中国の社会経済と環境についての、これまでの長期間にわたる傾向と、近年の傾向とを分析し、さらに、中国の環境問題を解決する方法を提案している。提案には、太陽光発電やバイオエネルギーなどの低排出産業への投資を促す経済支援や、すべての組織レベルにおいて、環境と経済活動のバランスが取れるようにすることなどが含まれている。また、米国などの先進国と、インドなどの開発途上国と共に、気候と二酸化炭素排出量削減に関する世界レベルの合意を形成することも大切だとする。

 

 著者の1人、魚類野生動物学部のJianguo Liu教授は環境持続可能性と、人と自然が共存するシステムについての世界的権威だ。「中国は非常に早いペースで成長しており、経済発展も目覚しい。同時に、環境に対する懸念も増えている。まず、第一に考えなくてはならにことは、人と環境との関係を認識することだ。なぜなら、環境問題は人類活動の指標だからだ。環境を守ることは、私たちの健康と生活を守ることだ」と述べている。

 

 もう1人の著者で、ミズーリ州立植物園所長のPeter Raven氏によると、2002年に中国政府は国内総生産GDPの成長率と環境破壊との比較を行っているという。「結果はどちらも約10%だったが、その後この比較はされなくなった。経済統計の見栄えが良くないからだ。世界でも有数の生物多様性を誇る中国は、今後10年間で深刻な環境破壊とそれに続いて、種の絶滅に直面するだろう。しかし、もし環境が保護されれば人類全体に多大な恩恵を与えることが可能だ」という。

 

 今後ますます存在感を強めていくことが予想される中国だが、経済発展を遂げつつも、環境保護や低炭素社会を実現する道筋を描くことが望まれている。

 

取材・文:温野 まき 翻訳サポート:中野 よしえ

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