【カナダ発】抗うつ剤が魚の繁殖に及ぼす影響

 オタワ大学生物学部のVance Trudeau、Tom Moon両教授が率いる研究グループは、抗うつ剤プロザックの水中への浸透が魚の繁殖を妨げる可能性があることを発見した。

カナダではプロザックが廃水から検出されており、その環境への影響を研究するために、学士を取得したJan Mennigen、Wudu Ladoの2人の学生は、研究室でこの薬を水へ直接投与し、オスの金魚へどう影響をおよぼすのか実験を行った。

 自然界では、メスの魚からフェロモンが生成され、オスがその化学物質を判別して交尾に至る。正常なオスの魚は、人間が臭いを感じるのと全く同様にフェロモンを感知して、交尾、卵の受精へと駆り立てられる。しかしながら、プロザックにさらされたオスの金魚はフェロモンによる刺激には反応せず、精子も放出されないことが明らかとなった。

「我々はこの結果に非常に驚いている。メスの強力な性的フェロモンを前にしても、プロザックにさらされたオスの金魚は精子を放出せず、交尾をすることができなかった」と、Trudeau教授は述べている。

 研究者たちは、過去の研究においても、大量のフルオキセチン(プロザックの活性成分)により、メスの金魚のホルモンレベルが不安定になるだけではなく、血中エストロゲンのレベルが徹底的に減少することも明らかにした。

「今回の研究は、我々の環境の健康性について重要な結果をもたらした。オスの魚に対してもメスの魚に対しても、プロザックが影響をおよぼすことは明らかであり、プロザックに類似した製薬も魚の性的機能障害を引き起こす汚染物質として見なさざるを得ない」と、Trudeau教授は結論づけている。

 

文:温野 まき 翻訳サポート:荒川 亜衣

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