低炭素社会は環境だけでなく健康にも良い

ダイエット効果が高く、CO2も排出しない自転車通勤は世界中で広がっている
ダイエット効果が高く、CO2も排出しない自転車通勤は世界中で広がっている

  現在、メキシコのカンクンで開催中の気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)。ここでInterAcademy Medical Panel(IAMP)は、「低炭素な社会は環境だけでなく人の健康にも良い」といった内容の報告書の発表を行う。同レポートは、気候変動に対応するため の処置は必然的に要求が厳しいというこれまでの観念を覆す効果が期待される。

  IAMPは世界のリーダー達に、気候変動対策に健康上の利益を考慮するよう呼びかける。環境対策としての温室効果ガス削減はとかく施行されるのに時 間がかかるうえ、各国で対策に差があるケースが多い。しかし健康管理上の対策となれば、迅速に効率よく実行される可能性が高いと指摘する。

 

  例えば、インドで1.5億台の低公害の料理用レンジを導入した場合、家庭で発生する汚染物質による早死から200万人を救うことができる。都市での 自家用車の使用を減らし、自転車利用や徒歩を増やすことは、炭素排出量を減らすだけでなく慢性疾患を減らすことにつながるという。

 

  IAMPの共同議長を務めるLooi Lai Meng教授は「多くの人は気候変動というと環境の持続性の問題として受け止め、健康問題には関心を寄せません。炭素排出に最も責任のない貧困国の人々が 気候変動の影響、そして健康に大きな影響を受けています。健康のためとして炭素排出量の制限をすることは大きな誘因となるでしょう」と話す。

世界保健機関(WHO)も健康を向上させる低炭素戦略を長年推奨しており、IAMPの今回の報告を歓迎するとコメントしている。

文:加藤 聡 翻訳サポート:中野 よしえ

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