ドイツ初の本格的なオフショア・ウインドファーム「alpha ventus」が完全操業開始

出典:http://www.alpha-ventus.de/
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 ドイツ北部、北海に浮かぶボルクム島から沖合いに45km、水深30mという難所に、ドイツで初めてのオフショア・ウィンドファーム(大規模洋上風力発電所)「alpha ventus」が落成し、完全に操業を開始した。ここには5MW出力の大型風車合計12基が設置され、総出力は60MWで、年間220GWhの発電が行なわれる。この発電量はおよそ5万世帯の電力供給量にあたる。ここで発電される風車からの電力は、60kmの長さの11万ボルト海底高圧線で北ドイツ沿岸部を走る電力系統に接続される。

 この「alpha ventus」の建設には、総工費2.5億ユーロ(≒350億円)が費やされた。このウインドファーム建設のために、ドイツ電力大手3社は、「Deutsche Offshore-Testfeld und Infrastruktur社(略称:DOTI)」を設立し、国や州、その他の風力発電関連産業の支援を受けながら、プロジェクトは実現された。建設工事は2007年から始まっており、2008年からは一部の発電、電力供給はすでに行なわれている。このウインドファーム構想は2001年より建設許可を取得していたが、投資資金が莫大になること、かつ建設の際に技術的に解決すべき問題点が山積みだったことから実現は先延ばしにされてきた。しかし、2006年末に政府が「洋上風力発電の推進ためのインフラ整備の加速法案」を採択し、国を挙げて推進されてきた成果が今ようやく実った。

 

 「alpha ventus」では商業運転と同時に、水深30mという深い場所における風車の建設技術に関する研究が行なわれ、今後も5MW出力という大型風力発電の気象条件による影響の調査と研究、このウインドファームの生態系に対する影響調査などが実施される。このように「alpha ventus」は、国を挙げて幅広くデータを集めるパイロット・プロジェクトと位置づけられており、4月27日の落成式典でも語られた「我々の目標は、オフショア・ウインド設置量25000MW出力を2030年までに達成することだ」(レットゲン環境大臣)というドイツ政府の目標が実現できるかどうかは、今後のパイオニア的な調査・研究作業によって左右される。

環境ジャーナリスト 村上 敦 http://murakamiatsushi.net/

 

サイト

alpha ventus

URL: http://www.alpha-ventus.de/

 

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