リニア中央新幹線構想に対して、環境省が意見書を提出

Photo by ryoki
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 環境省は1月14日、国土交通省の交通政策審議会中央新幹線小委員会が策定した中間とりまとめに対して、「戦略的環境アセスメント導入ガイドライン」に基づき意見を提出した。

 

 意見書では、国土交通省策定の「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」に準じて中央新幹線小委員会で検討されてきた中央新幹線の予定ルートである南アルプスルートと伊那谷ルートの2案に関して、環境への影響の事前的な予測・評価の実施、あるいは整備計画決定後における環境配慮を実施すべきとの提言を行っている。

 

 超伝導リニアの採用を想定した中央新幹線構想は、日本経済の大動脈ともいえる東海道新幹線に関わる諸リスク、例えば鉄道構造の経年劣化や大規模災害発生時の交通システムの崩壊などに備える国家規模の事業計画である。しかしその事業規模の大きさゆえに、周辺環境に与える影響は少なくない。このため、例えば南アルプスルートには、大井川源流部の原生自然環境保全地域や赤石山脈・巨摩山地における多数の固有種植物や希少な猛禽類などが生息する貴重な生態系が存在するとして、環境省はこれら生態系や自然環境への十分な配慮を求めている。

 

「戦略的環境アセスメント」は、従来の「環境アセスメント」よりも早い計画段階で事業計画における環境への影響を測定・評価し、事業計画に対してより影響力のある環境対策や評価結果を反映することを目的としている。環境省による「戦略的環境アセスメント導入ガイドライン」に基づくこのような動きは、事業規模などの諸条件に関して同ガイドラインで想定する事業計画のうち、位置や規模等に関して検討段階にある計画を対象として効果的な環境配慮に関する提言を目指すものである。このような大規模事業とそれに伴う周辺環境への配慮に関する枠組みは、今後の地域開発、あるいは公共事業と環境政策の両立を考えるうえで重要な役割を担っていくことだろう。

 

文:田中一整

中央新幹線小委員会中間とりまとめに対する環境省意見の提出について(お知らせ)

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13376

 

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